733 進化の果て
(リーフ)
オロオロオロ〜と困り果てて内心焦っていると、謎の人物がフフッと笑いながら俺の質問に答えた。
「そうだねぇ?少なくとも『何故知っているか?』という質問には違和感があるかな。
私はあらゆる情報と繋がっているからね。『規則正しいルール』に基づいた情報なら全て知っているよ。
しかし、それに基づいていない『人の感覚』は、常に新たな感覚をもたらす変化する情報だから、知らない事もある。
まぁ、厳密に言えば、それも決められたルールの内に入っているんだけどね。
『知性を持つ存在に与えられた《力》は新たな発見とそれに付随した変化の《力》』
それにより『進化』という変化を創り出し、お互いを潰し合う事によってどんどんそれを深く広げていく。
要は、今の君の環境で例えるなら、知性を持つ存在は『人』だね。 」
「?????は、はい??」
どうしよう……。
何を言っているのかサッパリだ。
俺のトリ頭では会話が成り立たない。
そう思うには十分な情報を一気に与えられてしまい、プスプスと頭は焦げ付き始めたが……ここで考えるのを放棄するのは、せっかくお話しようとしてくれている人に対し失礼に値する。
俺は焦げ付いている頭を必死にフル活動しながら、会話を続けた。
「そうですね!人間には色々な人がいますから!でもそこが楽しい所だと思います!」
「……フフッ。確かに『楽しい』ね。
でもね、この『楽しい』は、続かない様に決められているんだよ。
『変化』は楽しいけど、一定以上の力をつけるまえに消える様に作ったんだ、────がね。
それを忠実に実行してくれる────が────。
君もそれだった。もう一人の『リーフ』も……。
同じモノだったから君は『リーフ』に転生したのに、全く異なる行動ばかり。
う〜む、まだまだ同じモノは沢山周りにいるけど……果たしてルール通りにいくのかな?
私にも今後どうなるか分からない。」
「…………。」
……俺も分からない。言っている意味が。全部。
俺はこの正体不明の人物を警戒しながら、感情を外に出さないようにホタホタと営業スマイルを浮かべて焦りを隠す。
多分この人、レオンと同じだ。
俺とは別の広い広〜い別次元の世界観を持っていて、その世界のお話をしている。
俺は押し黙り、ぐるぐると回る思考から何とか理解できそうな情報だけを外に取り出した。
とりあえず、俺と多分物語の『リーフ』は同じモノ……つまり似ていると言うことらしいが、これには大ショック!
俺はあそこまで酷いヤツじゃない!!
先程『リーフ』が行った悪魔の様な所業を思い出し、ブワッと怒りが蘇る。
「いやいや!俺をあんな悪魔の様な小僧と一緒にしないで頂きたい!
確かに今は悪役をやらせて頂いてますが!レオンを扱き使って最近ではうっとり気持ちいいを堪能してますが!
────あ、やっぱり同じかも……カテゴリーは。」
最近加速気味のこき使いっぷりを思い出し、先程見たモルトとニールの薄っすら笑顔とレオンの俺に酷使された時のニッコリ笑顔が何となく重なり撃沈。
そしてその撃沈した俺に、謎の人物は更に追い打ちを掛けてトドメをさしてくる。
「いや?君と『リーフ』は同じモノだ。
詳しく言えば同じ材料、そして同じ配列で作られた『目的を同じにして作られたモノ』だよ。
まぁ、ただ君はそれに『従わないモノ』、いわゆるエラーを起こした……────的には極上の失敗作さ。
全ての存在は────の作ったルールに沿った動きしかできないからね。
知性を持つ存在の代償は『滅び』だ。
それこそが進化という果てに訪れる、絶対に変わらないルールなんだよ。
つまりは知性を持つ存在が出現した瞬間から、その世界は滅ぶ為の道をそのルールに従って歩み始めているというわけだ。
簡単にいえば『始まりがあれば終わりがある』という大前提のルールの中の話になるかな?
ここまでは────う〜ん……まだ難しかったかな。」
キリッと真剣な顔をして分からないのを誤魔化している俺をお見通し!と言わんばかりに謎の人物からはため息?が……。
とりあえず、俺は極上の失敗作だそうだ。
めちゃくちゃショック!!
あとは……まぁ、その内世界は滅びるよ〜的な事を言っているらしい。
「そうですか!なるほど、なるほど!
俺も一度は人生を終えている身なので、生まれてから死ぬという過程は経験済みです。だから大丈夫です!」
何が大丈夫なのか自分でも分からずそう言うと、謎の人物は依然楽しそうな雰囲気を漂わせたまま、やはり気を悪くした様子はない。
「『大丈夫』か……。果たして、どれほどの生物が君と同じ環境下で『大丈夫』だと言えるんだろうね?
まぁ、いいさ。私はこの会話を『楽しい』と思っているから。
そして君に一つ質問したい。
なに、そんなに難しい質問じゃないからどうか身構えないでくれ。」
これから更に分からない事が追加し、それに答えるという緊張感から、ガチッと体を固くしたが、謎の人物のフランクな言い方に多少緊張はほぐれた。




