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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第十九章

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731 あるべき世界へ……

(リーフ)


視線の先にいる<リーフ>は、信じられない事にその惨状を見て大笑い!

それとは反対に近くにいたモルトとニールは、その場でヘタリ込み盛大に吐いてしまい嗚咽音が響き、マリオンは吐いてはいないものの口元を押さえガタガタと震えていた。


しかしそんな姿は全く目に入っていない様子で<リーフ>は笑いながら、るんるん♬と鼻歌を歌い、その場でダンスのターンをするかの様に回る。


そして壊れたおもちゃの様にアハハハハ〜!!!と笑った後、必死に倒れない様にしているマリオンの髪の毛を正面からガッ!!と掴み、視線を無理やり自分に合わせた。



「楽しい!    楽しい!    楽しい!!!



────あぁ!!     楽しいなぁ!!



こんなに楽しいのは久しぶりだ!アハハハハ!

なぁ、マリオン、お前も楽しいんだろう?

だってお前がやったんだもんな?

この最高のショーをこのリーフのために、用意してくれたんだもんな?

なぁ?そうだろう?」



リーフは嬉しそうに笑いながらマリオンに顔を近づけ頬に軽くキスをしたが、マリオンは震えたまま動かない。


するとリーフは顔をゆっくり離し笑顔を浮かべたまま、マリオンの髪を掴んでいない方の手で────その顔を殴りつけた!



────ピッ!


そのせいでマリオンの鼻と口から血が吹き出しリーフの顔を汚すが、リーフは笑顔を浮かべたままマリオンから目線を外さない。



「笑えよ。」



マリオンは痛みに顔を歪めながら、急に言われた事が分からず眉をピクリと動かしたが、リーフは更にもう一発マリオンの顔を殴りつけた。



「笑え。」



もう一度ゆっくり伝えられる言葉に、マリオンは血まみれの顔でヒクヒクと口の端を上げて笑顔を無理やり作る。


するとリーフはニコッと天使の様な笑顔を浮かべ、マリオンの髪の毛から手を外した。



「あ〜良かった!マリオンも楽しそうで俺は嬉しいよ。

俺はとても友達思いだからさ、仲良しの友達が楽しんでくれてないと思うと悲しかったんだ。

俺はマリオンの笑顔が好きだな。

だからずっと、ず〜っと楽しく俺の側で俺が楽しめる魔導具を作って一緒に楽しく過ごそう。────分かったな?」



リーフは労る様にマリオンの肩をポンポンと叩くと、また鼻歌を歌いながらくるくると回りながら踊り続けた。


その惨劇の中、いつまでもいつまでも────……………。



────ガガッ……。




ガガガガッ────……。



ザー……。    ザザ──……。



ザザ────……。



そして景色は砂嵐の様に乱れ始め、今度は波の音が遠くの方で聞こえ始める。


そしてザブ〜ンっ!!ザブ〜ンッ!!と絶えず聞こえる波が激しく打ち付ける音と共に見えてきたのは、大きな海と崖。


そして海側にひときわ大きく突き出た場所の端には巨大なイシュル像とその周りには沢山の剣や槍など沢山の武器が刺さっている見たこともない場所であった。



「ここは一体……?」



キョロキョロと辺りを見回したが、やはり見たこともない場所で首を傾げる。



もしかしてアルバード王国じゃないのかも……?



もう一度イシュル像へ視線を戻し、そう思った瞬間────そのイシュル像の前にチマっとした小さい女の子?が跪き、熱心に祈りを捧げている姿を発見した。



その子は長い茶色い髪をポニーテールにしていて、格好はやや汚れた平民がよく着る緑のワンピースにエプロンの様なものを着けている。


その体の大きさから小さい女の子かと思ったが、漂う陰鬱な雰囲気と仕草から多分見た目通りの年齢ではない?と違和感を感じた。



もしかして人族じゃない……?



そんな事をボンヤリと考えていると、その女の子?はゆっくりと顔を上げ力なく立ち上がった。


その顔は酷くやつれており、顔色は悪く目は窪み隈もある。


そんな今にも倒れそうなその女の子は、イシュル像を見上げてボソボソと小さく呟いた。



「ヒナギクは平和と希望の象徴……。私の希望は貴方だった……。

アゼリア、私の愛する娘……。」



そう言い終わった後、女の子の目からはポロッと涙が一粒溢れ、それからは大雨が降る勢いで次から次へと涙が溢れていった。



「……いつも貴方の幸せを祈っていた。

朝日が昇ると同時に、ここで毎日お祈りを捧げていたのに……。

でも……貴方はもういないのね。私の希望は消えてしまった……。」



その女の子はおぼつかない足取りで一歩、また一歩と崖の方へと歩いていく。



「お金があれば幸せになれると思った。

爵位があれば、私の様に酷い扱いをされないだろうと思った。

だから……私は……っ。」



そしてその女の子は崖の端に立ち、下に広がる海と打ちつけては引いていく波をぼんやりと見下ろした後、スッ……と空を見上げた。



「希望を失ったこの世界に私は存在していない。だから、私は存在できるあるべき所に帰ります。

希望がある世界……アゼリアのいる場所へ。」



そしてその女性は幸せそうな笑顔を浮かべたまま、崖の上から身を投げ────視界から消えてしまった。



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