723 救いようもない事実
(リーフ)
「ルノマンドとレイナが上手く動いてくれたので、今や国内の主要ギルドは、エドワード派閥に変わりつつある。
まぁ、エルビスがまだ面倒な抵抗を見せていますが……ここまでくれば止める事はできないでしょう。」
「アーサー派閥に以前の様な勢いはない。
『英雄』の出現によってどうなる事かと思ったが、これなら問題なく俺は王になれる。
やっと……やっとだ!やっとあるべき形に、世界を戻す事ができるっ……っ!
そうは思わないか?カール。」
エドワードがカールに問いかけると、カールはまるで作り物の様に整った顔をぐちゃりと歪め、突然自身の髪の毛を鷲掴みにする。
そしてその手に力を入れて引っ張り、掴まれている髪の毛はブチブチィィッ!!と嫌な音を立てて抜けていった。
「せっかく計画が上手くいっていたのにぃぃっ!!!
あの『英雄』などという化け物のせいで、私の可愛い可愛い可愛い可愛い可愛いリーフがっ!!!
────くそっ!!くそっぉぉぉぉ────っ!!!公衆の面前であんなっ……あんなっ────っ……!
あんな家族思いで優しく、天使のような美しさを持ったリーフが、なんでこんな目にあわなければならないんだっ!!
あの日以来、リーフは正気を失い返事もできない、反応もしない、そんな状態になってしまった!!
それどころか我が家は身分も取られ、マリナもっグリードもっシャルロッテもっ!!
平民以下の地獄の様な生活を強いられ何度も自殺未遂をしたんだぞっ……っ!!」
ぐぅぅっ!!とうめき声を上げながら、カールは体を丸め下を向いたが……パッ!と顔を上げれば、また作り物の様な美しい顔に戻っていた。
唖然としながらその激変した顔を見つめていると、更にカールはニヤァ〜と口の端だけを歪めて、そのままクスクスと笑いだす。
「あれは邪神だ。どう考えてもあんな醜い化け物が『英雄』なわけがないでしょう。
レオンハルト……。
あいつはこの世を滅ぼす滅びの神に違いありません。」
「その通りだ。あんな平民の娼婦が産んだ化け物など、選ばれし英雄であるものか。
しかし奴は既に『英雄』として旅に出ることが決まっている。
もう間もなくイシュルの神託に従い旅にでるだろうが……心配には及ばん。
既に俺の息が掛かった者達を、パーティーのメンバーにしたからな。
剣王<ジェノス>、守護王<ゴーン>、賢王<フローズ>。
この三人には、レオンハルトがイシュル神の聖大樹にて使命を果たした後、直ぐに消すよう命令してある。
国民たちには『呪われた偽物の英雄には神罰が直接下った』とでも言えば、あの外見ならば納得するだろう。
ソフィア共々、俺がこれから作る理想郷の礎となれて幸せだな。」
エドワードが歌でも歌い出しそうなほどご機嫌な様子で言うと、カールはまるで少年の様な無邪気な笑顔をみせた。
「ふふふっ。嬉しいな〜!グリモアの出来事から始まった我々の計画がやっと実を結ぶ時がきた!
これでやっと世界を正しい姿に────……せ……────……。」
────。
ガ────ガ────……。
突然機械のエラー音の様なものが聞こえ、プツッ!とPCの画面が落ちる様にあたり一面が真っ暗になると、また景色は変わりまたしても衝撃的な光景が目の前に広がった。
俺が立っているのは街の真ん中────……いや、元街だった場所と言った方が正しいかもしれない。
何故か夜の様に真っ黒に染まった空の下、建物はほぼ壊滅状態で、そこら中にウヨウヨいるモンスター達が逃げ惑う人達を次々と食べていた。
「────っ!!や、やめろ────!!」
大声で叫び、悲鳴を上げて食べられている人達を助けようとしたが、やはり全く俺の体は動かない。
その間にも、至るところで爆発や炎の柱が上がり、それと同時に悲鳴や破壊音がそこら中に鳴り響いていて、状況はもはや絶望的の様だ。
こんなに大きい街なのに守備隊は?!王都からの第二騎士団の応援は?!
パニックになっている頭で考えていると、またパッ!と景色は変わり、今度は巨大な扉の前に俺は立っていた。
左右に開くタイプのごつくて分厚い鉄の扉。
そのセンターには、首が取れてしまっている上半身だけのボロボロのイシュル神様の彫刻、そしてその周りをところどころ欠けている剣の彫刻が取り囲んでいて……それに見覚えがあったため血の気が引いた。
「この扉は……まさか────。」
見知ったその扉を凝視し、嘘だ!と否定したかったが……確実に残る面影に、それを否定し続ける事はできない。
ここは────グリモアだ。
呆然としながらその扉を見上げ『何故?!』『どうしてグリモアがこんな壊滅状態に?!』と必死になって考えていると────……。
────ドンドンドンッ!!!
大きな戦闘音が背後で聞こえ、動かない体は勝手に動き後ろを向いた。
すると目に写るのはグリモアを目指しまっすぐ進んでくる数えきれない程のモンスターの大群と、森の上空いっぱいを覆っている何か巨大な影の様なモノ。
そしてそこら中に、明らかに生きていない状態で倒れている沢山の騎士団員や守備隊員達と、何とか立っているボロボロの状態の2人の人物達の背中が目に飛び込んできた。
一人は紫のモジャモジャした髪に炎で包まれた巨大な大剣を持っている大男、そしてもう一人はスカイブルー色の髪の爽やかな青年────ドノバンとユーリスだ。




