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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第十八章

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708 楽しみな事

(アゼリア)


「思う事かい?う〜ん……そうだねぇ〜?

まぁ、一番は感謝だね!彼らは本当によくしてくれてるよ。お陰でレオンもこんなに大きくなったし……。

────あ、そういえば俺、その人達に会った事ないんだけど、アゼリアちゃんは会った事ある?」


「えっ??……は、はい。何度かお会いした事はあります。」


「そっかそっか〜。────で、大丈夫そうな様子だった?

こう……ちょっと精神的に不味そうな感じとかありそうだったかな?

とりあえず家族仲は良いってジェニファーちゃんが言ってたから、安心していたんだけど……。

ほらっ、あらぬ誤解で周りに酷い事言われているんじゃないかって、ちょっと心配はしているんだ。」



心配、しんぱ〜い!と言わんばかりに困った顔で首を振るリーフ様に、目が点に。


逆に心配している……。


会話の主旨を見失いそうになったが、頭をフル回転して再度質問を投げかけた。



「あ、あの!リーフ様は何故そんなに強く心を持っていられるのでしょうか?

私は……ずっと不義の子である自分を責めてきました。

母は私を身ごもったせいで身一つで追い出されて……そして生活に困り、私をレイモンド家に預けました。

その時交わされた契約により、私がレイモンド家に籍を置いている限り、二度と母には会えません。

私は家族が欲しかった。

だから今でもどうすれば良かったのかと思ってます。

リーフ様は……私はどうすれば良かったと思いますか?」



一度堰を切ったように話しだしたら止まらなくなってしまい、怒涛の如く喋ってしまった。


そして、自分の胸につかえていた事を全て吐き出すと我に返り、恥ずかしくて下を向く。


シン……。


静まり帰ってしまった教会に、自分の鼓動の音だけが響いたが、やがてストンっ……とリーフ様が床に着地した音が聞こえた。


直ぐに視線を上げると、リーフ様は笑顔で大きく頷いた。



「よしっ!分かった!!そいつら全員ぶっ飛ばそう!!」


「は……はい???」



ポカンとする私、ソフィア様、ヨセフ司教の眼の前でリーフ様は腰に差した剣の状態を念入りにチェック。


そして「行くぞ!レオン!!」と行って走り出そうとするので、慌てて三人掛かりで羽交い締めにして止める。



「リ、リーフ様!!落ち着いて下さい!!」



ズルズルと引きづられながら私が叫ぶと、同じく引きずられているソフィア様とヨセフ司教も叫ぶ。



「如何に公爵家と言えども大問題になります!どうか落ち着いて下さい!もっと分かりにくいやり方で復讐してやりましょう!」


「そ、そうですよ!!やるならもっとバレない様に!そしてチクチクと追い詰めましょうよ〜。

っていうかリーフ君、結構血の気が多いんですね!そういうの好き!!」



リーフ様にくっつき騒ぐ私達を、ムッ!!と見下ろすレオンが非常に怖かったが、それどころではない私達は頑張った。


そしてその甲斐あってか、リーフ様はやっと止まってくれて、それにホッしたのも束の間────突然クルッと私の方を振り向いたリーフ様は、私の両手を強く握る。



「どんなに欲しくても手に入らないものって、結構沢山あるんだ。

悲しいけど、それを手に入れたくて努力する姿って俺はカッコいいと思う!

頑張って頑張ってどうしても駄目だったら……それまでに手に入れたものを全部持って、新しいものを探しにいけばいいさ。

きっと楽しいよ。」


「!」



『今までの自分も持ったまま、新しいものを探しにいく。』


誰もが今までの自分をいらないものとして未来の話をするというのに、過去の私も連れて行けばいいと言われ、胸に熱いものが宿る。


頑張り続けた自分が報われた気がして……それが多分嬉しかった。



「は……い。」



キラキラと輝き出す瞳をリーフ様に向けると、リーフ様はニヤリと笑いながら続けて言った。



「それが見つかったら、あとやるべきことは見つけたモノを大事にする事と、いかにお父さん達をぶっ飛ばしてやるかだけだね。

やられた分はきっちり返そう!

それからそいつらと、どう関わっていくのか決めたらいい。」



リーフ様がそう言い終わるか否かのタイミングでレオンにリーフ様を奪われしてしまったが、私は握られていた手をジッ……と見下ろした。



愛情を置いていってくれた母、私を一番に見つけてくれて救ってくれたソフィア様、安否を心配して駆けつけてくれる仲間達。



私はもう手に入れてしまったから、これから考えるべきは皆を大事にすること、そして如何にあのクズ共をぶっ飛ばしてやるか、それだけか……。



「……くくっ。」



離されて寒くなったはずの両手がポカポカと暖かくなってきて、私はその手をグッと握り笑った。



とりあえず今までやられた分を返す。

どう付き合っていくかは、それから決めればいい。



許すか、許さないのかを────。



酷く明快で単純な解決方法に、ワクワクした気持ちになった。



「その通りでした。いつかあのクズ共を血祭りに上げてやります。……その日が楽しみです。」



ニヤッと好戦的な笑みを浮かべて言うと、ソフィア様が困った様な、でも少し嬉しそうな顔になる。


リーフ様は、レオンにまた羽交い締めにされながら、「そうそう!その意気だ!えいえい、お────!!!」と言って、必死にはみ出た手をくぃくぃ動かしてエールを送ってくれた。




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