表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第一章(転生後、レオンハルトと出会うまで)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/831

(レオン)55 新たなる世界へ

(レオン)


怒り、悲しみ、悔しさ、焦り、恐怖……その全てが押し寄せ、今度は『絶望』という感情を知る。


『馬』になれない者は、下僕失格……。


その事がぐるぐると頭の中を回って目の前が真っ暗になったが────次に続く言葉に俺の心は持ち直す。


「やれやれ。『馬』も満足に出来ないなんて、俺の下僕はそれでは務まらないぞ!

いいかい?明日から朝七時に毎日俺の屋敷に来るんだ。このリーフ様が直々に下僕の何たるかを教えてあげよう。

さぁ、今日はこのまま帰ってぐっすり眠るんだ。わかったね?」


リーフ様は、俺にそう言ってくれたのだ。


つまり、俺はまだリーフ様に見限られていない。

まだリーフ様は俺の近くにいる。


────手を伸ばせば届く距離に……!


「はい……。」


俺は絞り出すように返事をし、そのままおぼつかない足でヨロヨロと歩きだした。


手を伸ばせば、まだ手が届く距離にいるリーフ様……でも、いつまでそこにいてくれる?


そう考えると、俺の足は焦りから段々と速くなっていく。

どんどんその距離が遠のいて、いつかその背が見えなくなってしまえば……もう二度と俺は、あの幸せを手にすることは出来なくなる。


「……っい、いや……だ。いやだ……いやだ……っ。」


どんどん強くなっていく恐怖感を吹き飛ばす様に、俺は駆け出した。

そうして薄暗い道を走って走って────やっと家に辿り着くと、俺は扉に身を預けズルズルと崩れ落ちる。


沢山の感情で、もう心の中はぐちゃぐちゃだ!


それをなんとかしようと膝に顔を埋め、目をきつく閉じたが……真っ暗な瞼に映るのは、リーフ様の姿だった。

慌てて目を開いたが、今度耳に聞こえてきたのはリーフ様の声で……全然落ち着くことなんてできない。

沢山の感情を一気に与えられてしまった俺の心は、とっくにキャパオーバーだ。


「レオン……レオン…………。」


気がつけばリーフ様から貰った大事な大事な贈り物を祈るように呟いていて、そのままゆっくり目を閉じると────そこはいつもの真っ白な世界だった。



「────あぁ……。またココか。」


今いたはずの家は勿論、空も大地も何一つ存在しないその世界には、恐らく<重力>という概念すら存在しない。


だからだろうか。


俺の消えかかっている手や足、胴体からはサラサラした黒い砂がまるで血を流すように出ているというのに、それらは下には落ちずに、宙にふわふわと舞い上がっている。


「消える……消える……『俺』が……。」


俺は、自分の消えかかっている両手を見下ろした。


手首には細い細い蜘蛛の糸の様なものが緩く絡まっており、それだけが俺という存在を、ここに繋ぎ止めている。

それは、この世界が誕生してからずっと変わらない。


『この世界から消え失せる事』


それが俺は怖かった。

だからこの繋ぎ止めている糸がとても大事なものだと、そう思っていたのだが……。



「────本当に……?」


        

俺は本当にそれが()()()()のか?


本物の恐怖を知った今となっては、それが恐怖であったのかと問われれば、否と断言出来る。


()()に強制されたかのような感覚。

そして感じる既視感……。

まるで()()にいなければならないという『恐怖に類似した感情』を、誰かに無理やり植え付けられたような感覚……。

それに気づいた今、ここから消え去る事は、俺にとってむしろ歓喜するべき事であった。   


「そうか…………そうだったな。」


俺は、消えていく自分の体を眺める。

そして、自身の両手に絡まる邪魔な糸をあっさり引きちぎると、空間を裂くように入っている大きな『亀裂』に目を向けた。

それは俺の体が消えていくごとに大きくなっていき、ビシビシとその裂け目は辺り一面に蜘蛛の巣の様に広がっていく。


俺という存在が消えて、この世界も共に消滅するだろう。


手が消え、足が消え、胴体が消え……。

 

とうとう残すは自身の口元だけとなった時────俺の口元は自然と上へと持ち上がる。

それが俺の……生まれてはじめての『笑顔』だった。



「────……ククッ。」


小さな笑い声を残しとうとう完全に『俺』が消え去ると、それに伴い白い世界も跡形もなく消え、後に残るは『黒』の世界だ。


何もない。


そこは『白』の世界同様、何一つ存在する概念がない世界だったが、突然そこに小さな『何か』が生まれ落ちた。

()()は徐々に大きくなっていき、形が構成されていく。



────ドクン……ドクン……。


大きくなっていったその塊が、拍動する心臓へと形を変えると、そこから血管がゆっくりと伸びていき脳を、内蔵を、骨を、筋肉を形成し、やがて一人の人間が出来上がった。



それが俺。


『リーフ様の下僕のレオン』



リーフ様が生み落としてくれた新たな『俺』 。

俺は今、この瞬間、()()に産み落とされて産声をあげたのだ。


望まれて『生』を与えられる事、それはなんと幸せな事なのだろう!


喜びに震える体を抱きしめ、溢れんばかりの『幸せ』に笑みを浮かべた。


リーフ様に教えてもらった『幸せ』……俺はもっともっと『幸せ』になりたい!


だから手を伸ばす。

そして足を動かし、リーフ様の元へ……。

リーフ様と交われない世界など、無価値だから。



「さあ、俺の唯一無二の……神様がいる世界へ行こう。」



何一つ概念が存在しないはずの『黒』の世界は、段々と小さくなっていきビー玉くらいの大きさまで縮まると……俺はなんのためらいもなくソレを握りつぶした。



<英雄の資質>(シークレットEXスキル)


< 森羅万象 >


この世のありとあらゆる<理>を全て理解する知力系EXスキル。

これを持つことで、物事の真理まで全て理解することが可能、その限界値は存在しない。(未来視も可)

また魔法の発動に関しても、『生』の定義を持たない場合、同様にその限界値は存在しなくなる。


(発現条件) 

スキル <叡智>を持つこと

絶対的な孤独を知りながら絶対的な愛を知ること

ある一定以上の精神状態で感情ゲージの限界値を超え、その状態で真実を導き出すこと

       



<英雄の資質>(シークレットEXスキル)


< リ・バース >


全てのステータスが限界突破し自身から『生』の全定義を消し去る特殊系EXスキル。

この時点で現在の<理>からその存在は消え、独立した存在となる。

その為現在存在する一切の概念は適用されず、またありとあらゆる『存在の干渉』は受けなくなる。(飢え、睡眠、その他全ての概念)


(発現条件) 

スキル:森羅万象 を持つこと

■■■■の干渉から自力で抜け出す事

自身の存在が一度<理>の世界から完全に消え去り、新たな『生』を得る事



 

<英雄の資質>(シークレットEXスキル)


< 狂神者 >


全てのステータスが『人』の限界値を大きく上回る値までアップし、全ての状態異常を無効にする(魂に刻みこまれた■■■■の呪いは不可)

また神のためならばステータスは更にUPし、神の為という大義名分がある場合、精神汚染の影響は受けず英雄の資質の変異はしない


(発現条件) 

スキル:リ・バース を持つこと

神を絶対的に崇拝すること

神の為に力を強く望むこと



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こりゃいいですねぇ。こういう奴、私大好きなんですよね。激重感情とか大好物です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ