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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第一章(転生後、レオンハルトと出会うまで)

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47  英雄お助け作戦 そのに

(リーフ)


レオンハルトは状況を飲み込めてないのか、必死に顔を隠しガタガタと震えている。

そんなレオンハルトの様子に心がまた少し痛んだが、悪の親玉としてここで引けない所!


「さぁ、さぁ、さ〜ぁ!!ちゃんと分かったかな〜?

きっ・みっ・はっ!このリーフ様の下僕に、今この瞬間からなるんだよ。イエスと答えるんだ!今すぐに!」


かなり強引な言い方で話しかけながら、自分とレオンハルトの顔を交互に指差すと、レオンハルトは自分の方に俺の指が来るたびにビクビクと震えていた。


<レオンハルトお助け作戦:その2>


出来るだけお話してみよう。


レオンハルト=寡黙と言っていいほど、物語の中の彼はほとんど喋らない。

もちろん寡黙でも、それはそれで個性だから全然OK〜!

ただし、それは本当に本人がそうしたいと願ってそうなる場合の話。


レオンハルトの寡黙は、母親に言われた言葉によって話すことを諦めてしまった結果の産物だ。

だからもしかして、本当はおしゃべりが大好きな性格かもしれないので、とにかく喋るという事が悪い事ではない事を知って貰った方が良いと思った。


喋るのが気持ち悪いなんて、断じてないない。

今後そんな事を言う奴がいたら、俺が即座に絞め落とす。


レオンハルトに意地悪する悪い奴に、ピョピョン!と飛びつき絞め落とすシミュレーションをしっかりとしておいた。


言葉という便利なツールを、使うか使わないかはレオンハルト本人が決める事。

それを、周りの人間が抑制しては駄目だ。

そのためには、とりあえず多少強引でも『お話し〜よおっ!』と誘って、どうしたいか考えてほしいが……?


「……あ……う……ぅ。」


やはりそのハードルは思ってたより高い様で、レオンハルトは、口をパクパクと開けたり閉めたりして、決して話そうとしなかった。


『気持ち悪い。』


『喋るな、化け物。』


母親から投げつけられた言葉の意味を、8歳のレオンハルトはとっくに知っている。

だから言葉を発して良いのか分からないのか、それともそれはしてはいけない行為なのだと思っているのか……。

そんな傷ついた子供の姿を目の前にして、胸がジクジクと痛んだ。


レオンハルトの母親にも思うこともあったのかもしれないが……こんな姿を見せられては、どうしても恨んでしまう気持ちが前に出る。


俺、子供がすごい好きだからさ。  

酷い話だよ、全く。


複雑な思いを抱えながら、チラチラとこちらを見てくるレオンハルトに、さらなる攻撃を仕掛ける。


「ちなみに君に拒否権などない!

────はいっ!今この瞬間から、君は俺の下僕となった。

俺の下僕になった君は、俺の言う事になんでも答えなければいけない!これは命令なんだ。分かったかい?」


『命令』という物騒な言葉に反応した彼は、震えながらもおずおずと小さな声で話しはじめた。


「ほ……本当に……話してもいいのですか……?……気持ち悪くありませんか……?」


全然気持ちわるくな〜〜い!

むしろ、めちゃくちゃ感動してる!


キリッ!とした表情をキープしつつ、俺は心の中でムヒョヒョ〜イ!喜びのポーズを決めた。


だってずっと憧れ続けてきた俺の永遠のヒーローが目の前にいるからね。

その事実と実際のご対面で、俺の手が手汗ですごいことになっているよ!


ぐっしょり濡れている手を握りしめて隠すと、誤魔化す様に話しかける。


「なんで話すと気持ち悪いんだい? 君程度が何か話したところで、俺に何一つ影響などありはしないよ。(だから沢山お話しようね〜!)」


俺がわざと小馬鹿にするように笑えば、レオンハルトは一瞬を置いて……ポツリと呟いた。



「……俺の事……怖くないのですか……?」



多分『怖い』と言うのは、外見の事。

だけど……。


俺は隠されているレオンハルトの顔辺りをジロジロと見つめた。


俺的には呪いが解けた後の姿より、今の呪いが掛かっている姿の方が断然好きだったりするんだよね!


挿絵に描かれていた呪い付きのレオンハルトを思い出し、胸がズキュンとときめいた。


呪いが解けた後、レオンハルトは、それはそれはこの世の美が大集結したの?というほどの美しい青年になるそうだ。

だが、正直同性から見れば顔はどうでもいい。


何か言えと言われても『イケメンで羨ましいなぁ〜。』くらいだし……。


ハイ!ハイ!と、頭の中のイケメン像を頭の中から放り出し、続けて自分の『カッコいい』を詰め込んだ、呪いの英雄レオンハルト像を創り出した。


呪い付きの姿は一言で言えば、男のロマン。

そもそも、大きな傷口とか、やけどの跡とか……そういった傷を抱えながら懸命に戦うキャラクターは、とにかくカッコいいと思う。


か・か・か・かっこいいっ〜〜!


頭の中で『ワーワー!』と叫びながら転がり回り、目を輝かせる。


だからむしろ見せびらかしても問題ないと個人的には思うが、本人が気になるなら無理強いはしない方向にはするつもりだ。

しかし────突然フッと心配事が目の前に飛び出してきた。


でも、あんなに肌を隠すと、日光を十分に浴びられないんじゃ……?


ビタミン不足。

栄養失調!


情緒よりも大事な問題が発生し、汗を掻きながらオロオロしてしまう。


とりあえず体の発育的な問題が一番。

それに加えて、体の半分だけ日焼けしないかとかそういった外見的問題も少し気になるし……とりあえずは、日光浴する時だけ、あの布を取れるようになってもらえたらいいな〜と思った。


「君みたいにヒョロヒョロしている子供が怖いわけないだろう。

とりあえず、その頭の布をとってごらん。」


わざとらしく肩を竦めて命令した俺に、レオンハルトは戸惑いながらも観念した様子だ。

黙ったまま、頭に深く被っていた布をハラリととった。


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