288 妥協も必要
(リーフ)
さぁさぁ、最後はうちの秘蔵っ子レオンを残すのみだ!
先ほど同様、最後になったレオン。
その出番を今か今かと待っていたが、やはり試験は中々開始されない。
なんでなんで〜?
首を傾げながら、先生たちの方へ視線を向けると、突然チラッチラッと視線を投げつけられ、更に「んんっ!!!」というわざとらしい咳払いの音が聞こえた。
「???」
首を傾げながらその視線を受け止めていると、今度はプラン学院長がソワソワと体を動かし始める。
何か俺に用でもあるのかな??
身に覚えがまったくないため、ボンヤリとその様を見つめていると、突然フラン学院長が手招きしてきた。
「???」
とりあえず大人しくそれに招かれると、次の瞬間フラン学院長と教員達全員に囲まれる。
その全員が鬼気迫る目をしていて、ヒェッ!と悲鳴をあげそうになったがなんとか耐えると、フラン学院長が直ぐに質問してきた。
「突然すまない。少し教えて欲しいのだが……
あの……レ、レ、レオン殿は……剣術特化……なのだろう?」
あれ?さっきも誰か同じ様なセリフを言っていたような……?
そう思いながら、正直にフルフルと首を横に振る。
その瞬間、何人かの教員達はフラッとよろめき、倒れそうになった。
そんな中でなんとか立ち続けているフラン学院長は、青ざめながら恐る恐る質問を続ける。
「魔法は苦手……だったりしないか……?」
俺はその質問にもフルフルと首を横に振ってNOと答える。
そもそも苦手な事ないんじゃないかな?
何でも命がけで頑張る社畜だし……。
未だ見つからないその改善方法に頭を悩ませていると、フラン学院長と他の教員達は、まるでお葬式の様な雰囲気になってしまった。
「……情報提供感謝する。」
そんな重苦しい雰囲気の中で、フラン学院長は頭を押さえながら俺を開放してくれた。
狐につままれた気持ちになったが、その後の展開で俺は大体の事情を把握する事となる。
「次……レ……レオン殿……。」
フラン学院長は、ボソリと小さな声でレオンの名前を呼んだ。
そのため俺は、帰りたいオーラが全身から滲み出ているレオンの両腕を、しなびた布団を叩く様に、パンッパンっと思い切り叩き気合を注入する。
ここも大事なアピールポイント!
うちのレオンの凄いところを皆に見せつける絶好のチャンスだ!
文武両道!剣魔法両道!!
どちらか一方より両方出来たほうが絶対モテる!
剣はちょっとやりすぎてしまったが、『ないない君』で凄さをアピール、そして花爆弾で器用さをアピール、そしてここで魔法もできるよアピールだ。
完璧完璧〜♬と鼻歌を歌いながら、レオンの頭に付いていた雑草の欠片をフンッ!と勢いよくはたき落とし、準備は満タン。
さぁさぁ、いってらっしゃ〜い!と見送ろうとしたその時────フラン学院長はその後続けて言った。
「ただしレオン殿に対しては特別ルールを設けたい。
これよりレオン殿の打つ魔法は初級魔法ではなく【生活魔法】の<着火>にしてほしい。
そのかわり、今の時点で80点を贈呈しよう。……いっ……いかがだろうか……?」
【生活魔法】は、<無属性>の魔法に分類される魔法と呼べないほどのちょっと便利な魔法の事で、レオンがよく使う洗浄魔法なんかもコレに分類される。
その中の一つ<着火>は、指にビー玉ほどの大きさの火が灯るという、例えるならマッチの魔法バージョンである。
勿論マッチの火は飛ばないし、ポワッと火が灯るだけの魔法のため攻撃性も皆無。
俺がやった方法でも飛ばすことも出来ず、完全に安心してよい仕様となっている。
レオンの現在の点数は200点満点。
これに80点を足せば実技の試験はトップ合格となるため、ようは試験受けなくてもレオンがトップで終わりですよ〜────ということ。
思わず、ガックリ〜と肩を落としたが、確かに魔法は剣と違い被害が広範囲に広がる恐れがある。
いくら初級とて、攻撃魔法は危険だと判断した上の提案か……と、ここで俺は先ほどの妙な確認と合わせてそれを理解した。
これは仕方ない。
とりあえずはトップはレオン────ということでばっちりアピールも出来たしここは諦めよう!
怖いくらい静まり返っているその場で、俺はレオンに言った。




