290 レオンの点数は〜?
( リーフ )
まさか物理的な意味合いで山を消すか否かを聞いているとは思わず、軽〜く答えてしまったが……結果的に消えなくて良かった。
ほっと胸を撫で下ろす。
しかし、直ぐに大きな恐怖を感じ、俺はその心のままレオンに言った。
「 レオン!!もっともっと真剣に……死ぬ気で手加減を覚えるんだ!!
俺の( 髪の毛 )のために!!!
そして俺の( 髪の毛ふさふさの )未来のために!
それが出来るようにならないと、俺達の未来はお先真っ暗だ! 」
主人の俺がこの歳で突然、班目ハゲになってしまえばレオンだって……
” あのレオンっていう奴隷のご主人様ってぇ〜水玉みたいな髪型してるんだってぇ〜 ”
” 何々〜?ホルスタイン意識してるかんじぃ〜?お乳絞りでもしてるんじゃな〜い? ”
などと言われて奴隷仲間に虐められる可能性だってあるぞ!
レオンは、そんな未来の事など眼中になかったようで、ガガガ〜ン!!と大きな衝撃をうけている。
「 俺達の未来が暗く……。
……俺、頑張ります!
何とかそれを学ぶための方法を考え、実行してみせますので、どうか待っていてくれませんか? 」
出来るだけ早く頼むよ〜。
失くしてしまった髪は二度と生えてこないからね!
俺は、レオンの決意に大きく頷いた。
「 よしっ!その意気だ、レオン少年よ!
ファイッオーファイッオー!レ・オ・ン!! 」
ピッ!ピッ!と、俺が手を上に上げたり下げたりして応援の動きを見せると、応援されたレオンはご機嫌に。
俺の頭皮を先ほどよりはだいぶ緩和された動きで揉み込んできた。
良し良〜し!
ちょっとだけ改善したぞ〜?
改善したシャリシャリと音を立てるマッサージを受けながら黙っていると、そのまま麦袋を出荷する様に俺を運んで行こうとするので、それに待ったをかける。
あの破壊してしまった " 的 " とか森とかは大丈夫かどうか。
そしてレオンの点数について聞かなければと、俺はレオンの上から、とぅっ!!と離脱し、座り込んでいるフラン学院長の元に向かった。
「 あの、壊れちゃった ” 的 ” と森の状態は大丈夫ですか?
何だったら俺とレオンでこれから道を埋めに行きますので! 」
ヒュンヒュンとシャベルで土を掘るジェスチャーを披露しながら、駄目なら焼畑農場を作ってレオンと一緒に何か植えるしか……と考える。
じゃがいも……ナス……トマト?
植える野菜の候補をぽわわ〜んと思い浮かべながら、フラン学院長の答えを待ったが、一向にそれが返ってこない。
「 ……???あの〜……。 」
「 ひゃっ……180点っ!!
こ、こ、これにて試験は終了する……それでは……か、かいしゃん……!! 」
フラン学院長は突然噛み噛みでレオンの点数を告げた後、フラフラ〜と立ち上がって帰ろうとしたので、俺は黒い道について聞こうと、もう一度声を掛ける。
「 フラン学院長、黒い道は────…… 」
────ビクビクンッ!!!
すると大きく体を跳ねさせたフラン学院長は、勢いよく振り返り俺を見ると、その後ろの直線上にいるレオンから隠れるように瞬時に体を動かし、俺を壁にする。
「 あ……あぁ!その……なんだ?
…………
────あぁ!あの黒い道の事か!?
それならばスキル持ちの者がいる故、問題ない。
……それより……」
フラン学院長は顔をソロ〜と動かし、俺の後方にいるレオンの方へ目線を向けると、直ぐにまた所定の位置に顔を戻す。
「 ……リ、リーフ殿は……その……色々と問題はないのか……?
あんな恐ろしい目で……見られて……。
私ならとてもじゃないが……5分も持たぬぞ……。 」
おどおどとしながら尋ねられた質問に激しいデジャブ。
なんとフラン学院長まで、俺が啖呵をきって受験生達に恨まれているのではないかと心配してくれた様だ。
なんと優しい!
おじさんはまたまた感動した。
「 大丈夫です!
俺、演技力には絶対的に自信がありますんで!
任せて任せて〜。 」
「 ???そ、そうか……??? 」
ギラッとやる気満々な目を向け答えを返すと、フラン学院長は不思議そうな顔を見せる。
そしてなんとも腑に落ちないような様子でこちらをチラチラと見ながら、その場を去っていった。
それに手を振りながら思ったが、本当にフラン学院長って何歳くらいなんだろう?
どうみても俺と同い年かそれ以下にしか見えない。
女性の歳は分かりにくいからねぇ?と目をつぶって考えていると……。




