281 一番の思い出
(リーフ)
「どうですか?俺の花。気に入って頂けましたか?」
「うん!本当に凄いよ。俺、こんなに綺麗な花初めて見た!レオンは器用だね。」
レオンは繊細な心の現れか手先が物凄く器用なので、恐らくこれもその器用さでチョチョイと作り上げたに違いない。
俺が興奮しながらそう褒めると、レオンは笑った。
少しだけ薄暗い笑みのままで。
さては、まだわたあめを根に持ってるな〜?
全く〜と肩をすくませていると、手のひらに魔力の発動する気配を感じ、その後直ぐにレオンは自身の手を外す。
するとそこには、以前貰ったのと同じ、琥珀のようになった虹色の花が乗っている。
「リーフ様が好きな色……全部入れて作りました。
また以前のように魔術ごと結晶化しましたので、これでずっと手元に置いておけますよ。ずっと、ずっ〜と……ね?」
レオンはボソボソと独り言の様に言ったが、結晶化した虹色花に夢中で俺の耳は、現在お休み中。
更に、脳内で前に貰ったやつと、過去レオンが拾ってはくれたピカピカ石達の存在を思い出し、お胸をほっこりさせていた。
レオンは光り物が好きで拾っては俺にくれるから、それを入れた宝箱がすぐにパンパンになるんだよね〜。
クローゼットをこれでもかと占拠する宝箱達を思い出しながら、俺は「ありがとう!」とレオンにお礼を言って太陽の光にその花を透かしてみた。
するとそこから見える空が虹色に見えて感動し、また「うわぁ〜!」と感動の声を上げ夢中になっていたから気づかなかった。
フラン学院長がその花の結晶を見てひどく青ざめていた事を……。
そのまま夢中になってその花を見つめていると、レオンは突然俺の二の腕を握りしめグイッと引っ張ると、覆いかぶさるように顔を覗き込んできた。
「?」
それが結構な力だったので、なんだい?なんだ〜い?と視線を花からレオンに移すと────そこには、腕の力とは正反対に穏やかな笑みを浮かべたレオンのお顔があった。
「俺の花が一番ですよね?だから俺が一番。これが一番いい思い出。
俺はリーフ様の『楽しい』を邪魔したくないので……その中の一番をずっと取り続ければいい。…………そういう事ですよね?」
有無を言わさぬ勢い、そして独り言に近しい訳の分からぬ物言いに、周りで見ている人達の顔は真っ青で、更にドン引きした表情を見せている。
レオンのたまに入るこの負けず嫌いスイッチ。
日を追う毎にどんどん酷くなっていっているが、今日はまた一段と酷い。
どうしたんだろう??
流石に心配していたが、ギチギチとミニアナコンダ的な腕への締め付け攻撃と不安そうにも見える顔を見て、何となくだが俺はレオンの心情を察した。
レガーノはいいところなのだが、やはり都会と比べると子供の数は少なく、レオンを脅かすような存在はいない。
しかし……残念ながら広〜い世界に出ると、自分なりの武器を持った強敵達がわんさかいて、ここグリモアも流石は準都会、個性的な子ばかりだ。
色々な方法で自分の魅力をアピールしてくる中、レオンはちょっと迷いが出ちゃった。
『今までみたいにお勉強だけできても駄目なのかな?』
『人とのコミュニケーション能力とか、別のものも大事なのかも……。』────ってね!
不安そうに俺を見下ろしてくるレオンに、怖くない、怖くないよ〜と、安心させるようにチッチッチ〜♫と口笛を吹く。
凹んでしまったレオンは可哀想だが、それがとてもいい刺激になったのは間違いなし。
なんてったってさっきレオンは────。
《これからは、『友達』を大事にしていきたいと思います!》……って言い切ってたし、確実にその心は成長している!
だからとりあえず今は、不安で不安で、俺に『今まで通り、俺が一番ですよね?!』と、確認をとって安心したい。
そういうこと、そういうこと。
なら怯えているレオンを安心させつつ、怠惰になってしまわぬようしっかりと釘を打つ。
「そのとおり!!お花はレオンが一番!
しか〜し!!レオン、君は忘れているね〜?ここに不動のナンバーワンがいることを。
一番はこの俺!リーフ・フォン・メルンブルク〜!!全てにおいて俺が一番、レオンは二番。」
腕を掴まれながらもピッピッと指だけで俺、レオンと順々に指さしそう言い放てば、レオンはショックを受けたのかフラッとぐらつく。
おおっと、危ない、危ない。
俺は自由になった手を伸ばし、レオンの脇にズボッと差し入れると、そのまま崩れそうなその体を支える。
ちょっと言葉がキツすぎたか。
オロオロと心配していると、レオンは僅かに眉を下げて「……これでは永遠に俺は一番をとれない……。」と、情けない事を言い始めた。
いやいや、あと三年後には俺に勝ってもらわないと困る。
そうしなければ未来が変わっちゃうからさ。
レオンは繊細だから、すぐにこうやって心がヘタれてる。
だから本当に叩き加減が難し〜!
「絶対いつかは好きな何かで一番になれるから頑張ろう!それまで俺がずっと傍で見張っててあげるからさ。」
レオンはいっそお勉強の一番を極め、周りから『あの人ってコミュニケーション能力低いけど別格だよね〜。』的な立ち位置を目指すといいかもしれない。
そう励ますとレオンは一瞬黙り、その後突然嬉しそうに笑って「はい。」と返事を返してきた。
どうやら落ち着いてくれたのかグニャグニャだった体も元に戻ったので、レオンの脇から手を外す。
さぁ、レオンの点数は〜?
そのままクルッとフラン学院長の方へ向くと、フラン学院長はまるで尻尾と踏まれた猫のようにビクビクンッ!!!と体を大きく震わせた。
「……あっ……うぅ……て、点数か!?て、て、点数は、ひゃ……100点……にゃんっ……! 」
噛み噛みでそう言うと、その場はシ〜ンと静まり返る。
その結果、そんな中で響くのは、断トツトップのレオンの100点満点に、『よっしゃ────!』と歓喜する俺の雄叫びだけであった。




