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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第五章

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288 妥協も必要

( リーフ )


さぁさぁ、最後はうちの秘蔵っ子レオンを残すのみ!



俺はそれをワクワクしながら待っていたが、やはり試験は中々開始されない。


うう〜ん??と不思議に思っていると、チラッチラッと感じる視線と、んんっ!!!というわざとらしい咳払いの音が耳に入った。



「 ??? 」



その発生源に目を向けると、ソワソワと体を動かしこちらを凝視してくるフラン学院長と教員達全員の姿があって、俺は首を傾げる。


俺に何か用でもあるのかな??


ますます不思議に思いながらそのまま目線をそこで固定していると、フラン学院長が手をチョイチョイと動かし俺を手招きしてきた。



俺???



なんだろう?と思いながら大人しくそれに招かれると、次の瞬間、フラン学院長と教員達全員に囲まれる。


全員が鬼気迫る目をしていて、それにヒェッ!と悲鳴をあげそうになったが……とりあえず平静を装って黙っていると、フラン学院長が直ぐに口を開いた。



「 突然すまない。少し教えて欲しいのだが……


あの……レ、レ、レオン殿は……剣術特化……なのだろう? 」



あれ?さっきも誰か同じ様なセリフを言っていたような……?


そう思いながら俺はフルフルと首を横に振る。



その瞬間、何人かの教員達はフラッとよろめき、倒れそうになった。



そんな中でなんとか立っているフラン学院長は青ざめながら恐る恐る質問を続ける。



「 魔法は苦手……だったりしないか……? 」



俺はその質問にもフルフルと首を横に振ってNOと答える。



そもそも苦手な事ないんじゃないかな?


何でも命がけで頑張る社畜だし……。



未だ見つからないその改善方法に頭を悩ませていると、まるでお葬式の様な雰囲気になってしまったフラン学院長と教員達……。



「 ……情報提供感謝する。」



そんな重苦しい雰囲気の中で、フラン学院長は頭を押さえながら俺を開放してくれた。



何だったんだろう??と狐につままれた気持ちでいたが、その後の展開で俺は大体の事情を把握する事となる。



「 次……レ……レオン殿……。 」



フラン学院長は、ボソリと小さな声でレオンの名前を呼んだ。


そのため俺は、帰りたいオーラが全身から滲み出ているレオンの両腕を、しなびた布団を叩く様に、パンッパンっと思い切り叩き気合を注入する。



ここも大事なアピールポイント!


うちのレオンの凄いところを皆に見せつける絶好のチャンスだ!



文武両道!剣魔法両道!!


どちらか一方より両方出来たほうが絶対モテる!



剣はちょっとやりすぎてしまったが、『 ないない君 』で凄さをアピール、そして花爆弾で器用さをアピール、そしてここで魔法もできるよアピールだ。



完璧完璧〜♬と鼻歌を歌いながら、レオンの頭に付いていた雑草の欠片をフンッ!と勢いよくはたき落とし、準備は満タン。



さぁさぁ、いってらっしゃ〜いと見送ろうとしたその時────


フラン学院長はその後続けて言った。



「 ただしレオン殿に対しては特別ルールを設けたい。


これよりレオン殿の打つ魔法は初級魔法ではなく【 生活魔法 】の< 着火 >にしてほしい。


そのかわり、今の時点で80点を贈呈しよう。



……いっ……いかがだろうか……? 」



【 生活魔法 】は、< 無属性 >の魔法に分類される魔法と呼べないほどのちょっと便利な魔法の事で、レオンがよく使う洗浄魔法なんかもコレに分類される。



その中の一つ< 着火 >は、指にビー玉ほどの大きさの火が灯るという、例えるならマッチの魔法バージョンである。



勿論マッチの火は飛ばないし、ポワッと火が灯るだけの魔法のため攻撃性も皆無。


俺がやった方法でも飛ばすことも出来ず、完全に安心してよい仕様となっている。



レオンの現在の点数は200点満点。



これに80点を足せば実技の試験はトップ合格となるため、ようは試験受けなくてもレオンがトップで終わりですよ〜────ということ。



思わず、ガックリ〜と肩を落としたが、確かに魔法は剣と違い被害が広範囲に広がる恐れがある。


いくら初級とて、攻撃魔法は危険だと判断した上の提案か……と、ここで俺は先ほどの妙な確認と合わせてそれを理解した。



これは仕方ない。



とりあえずはトップはレオン────ということでばっちりアピールも出来たしここは諦めよう!と、怖いくらい静まり返っているその場で俺はレオンに言った。



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