276 確執色々
(リーフ)
なるほど、似ているはずだ。
この二人兄弟だったんだ。
俺はさきほどアゼリアちゃんから聞いた話を脳内で思い出す。
『私の本名は<アゼリア・ロティア・レイモンド>』
『私はいわゆるレイモンド家の不義の子でして……。』
『【レイモンド家】は代々魔法に長けている血筋』
『しかし、私の資質は<闘武士>という物理系特化の戦闘資質で、魔法があまり……いえ、全く得意ではないのです。』
今、目の前で目撃した光景と、アゼリアちゃんからの話からして、どうやらこの二人には結構な確執なるものがある様だ。
常人なら震えそうなほど殺気めいたクラーク君の視線にも、アゼリアちゃんは全く動じず、正面から睨み返している事からその根深さを感じる。
「なるほど。兄弟の確執ってやつかな。」
近い存在だからこそ難しい。
ただし子供同士だけの問題に留まっているなら、意外にコロッと仲良くなったり、駄目でも関係の落とし所を見つけていくが……両親問題が絡むともっと難しくなりそうだ。
ツンッ!と顔を背けて退場していくクラーク君と、その背中を睨みつけているアゼリアちゃんを見ながら、なんとも言えない気持ちで見守った。
ちなみにクラーク君の出した花は【ボンボン華 】という、魔力を流すことで爆発する特性を持つ花だそうで、攻撃様魔道具の貴重な素材だったらしく点数は70点。
周りの受験生達は、突然のハプニングに加えての高得点にどよめく。
流石は魔法特化で有名なレイモンド家。
体内魔力量はかなり多いと聞くが、それをしっかりと操作する魔力操作も相当なものの様だ。
これはレオンのライバル枠に採用かな〜?
キラっ!と目を輝かせていると、次に呼ばれたのはマリオンだ。
おっ、レオンのライバル……になりたい子猫枠、我らが同級生マリオン!
一体どんなお花を?
猫じゃらし一色になった頭でマリオンに視線を向けると、マリオンはチラチラッとコチラを見ながら不敵に笑った。
マリオンの家は魔道具作りの頂点と言われる【スタンティン家】。
その流石と言える出来の魔道具の数々は、現在全て王族と貴族専用で販売されていて、絶大な信頼と権力を持つ家である。
そして魔力操作に関していえば、先ほどの魔法特化の【レイモンド家】を凌ぐ。
その証拠に、マリオンの練りだす魔力は非常に繊細で複雑な動きをしていて、小学院時代に戦った際はその動きが読みづらく、戦いにくさを感じたものだ。
そして、今まさに目の前でそれが実践され────……
ポポポンッ!!
可愛らしい音と共に咲いたのは、赤、青、黄色……と色とりどりの別種の花達、しかも10本!
「な、なんと……っ!全ての色がバラバラ、しかも種類もバラバラとは……余程の能力がなければ出来ぬ芸当だ。マリオン殿、85点!」
またもや高得点!しかもソフィアちゃんと同着の第1位に周りは再度騒ぎ出す。
俺はレオンから離れ、そのカラフルな花を眺めながら「綺麗だ〜。」と感動を口に出す。
するとレオンがそれに僅かにピクリと動き、ジッとマリオンの花を見つめた。
「…………。」
「────!」
その視線に気づいたマリオン。
普段はレオンに完全無視されまくっているため、大きく胸を張ってそのまま堂々と去っていった。
その姿を追って女子受験生達のキャッキャッする声が聞こえ、モルトとニール、そしてアゼリアちゃんは、チィィッ!!!と地鳴りがしそうな舌打ちを、反対にサイモンは「いい……♡優良物件第二位マリオン様♡」と言ってうっとりしている。。
そろそろ人間関係が飽和してきたため、プスプスと煙が立ちそうな頭をスリスリとさすっていると……。
「次!リーフ殿、前へ!」────という声が前から上がった。
なんか複雑なニャンニャン、ワンワン関係で頭が一杯で、結局なにも思い浮かんでいない……。
困ったな〜と、俺は頭を抱えたまま前の台座へと向かった。




