272 作ろう思い出
(リーフ)
俺はムクッと立ち上がりレオンの顔を鷲掴むと、そのままワッシャワッシャ〜〜!と揉み込んだ。
「レオン、そのとおりだ。その気持ちは世界一大事なもので、これからのレオンにとってそれは一番の宝物になるよ。沢山思い出作ろうね〜。」
レオンは一瞬固まった後、真っ赤な顔で『幸せ〜』と言わんばかりのうっとりした表情を浮かべる。
「そんな気持ちを持つのは当たり前です。思い出……沢山沢山作りたいです!」
「うんうん!思い出沢山作ろ────!!レオ〜ン!!!」
そう言いながらグススンッと鼻を啜ると、そのためには試験を通過することが必須だ!ということを思い出した。
よ〜し!じゃー頑張ろう頑張ろ〜。
再度気合いを入れ直した俺は、ぽけっ〜としてしまったレオンの手を引っ張り長机の方へと近づく。
すると……。
ザザザ────!!!
固まっていた受験生達が俺達が行く先々で遠ざかり、透明な壁ある?と言いたくなるくらい綺麗に離れていった。
やっぱり『ないない君』が良くなかったんだ……俺もびっくりしたし。
せめてアンパンのおへそくらいにしておけば……!と後悔しても既に遅い。
仕方がないので手頃な場所をピックアップしてそこに落ち着けば、俺達を中心とした半径5mくらいは誰一人としていなくなった。
しかも右を向けば右方向にいる人達が、左を向けば左の方向にいる人達が、ババッ!!!と物凄い勢いで目線を反らす。
レオンのお友達探しはこの距離からスタートか……。
地味に凹んでいると、ススっと俺達の両隣に近づいてくる人物達が……!
「やれやれ……レオンの行動など俺にはお見通しです。なにせ、俺は大人の男なので……。」
「この展開は予想範囲内っすね。周りに人がいなくてラッキーです。
今度こそ大人の俺の活躍を見せつけてやりますよ。」
「モルト……ニール……!!」
幼馴染〜ズの仲良し四人組。
そのメンバーが二人、モルトとニールがいつも通りのご様子で俺とレオンの隣に立ち、ピッと親指を立て余裕たっぷりの笑みを見せる。
持つべきものは幼馴染!俺達、仲良し幼馴染〜ズ!!
俺はレオンの肩に手を掛けて無理やりしゃがませると、それを囲む様に俺、モルト、ニールが円陣を組んで丸くなる。
「俺達一生仲良し!幼馴染〜ズ!次のテストも頑張ろう!
俺、リーフ!」
俺の掛け声の後に、モルトとニールも続けて叫ぶ。
「俺、モルト!」
「俺、ニール!」
そして最後に真ん中でちょこんと座っているレオンが、俺達をチラッと見上げて「……俺、レオン……。」と無表情で名前を口にすると、それから一斉に俺、モルト、ニールの三人が叫んだ。
「「「リーフ組〜ファイッ!!」」」
するとレオンが無言でチラチラと俺達を見上げながら、とりあえずパチパチと拍手をしてくれる。
<リーフ組=リーフ、レオン、モルト、ニール>
そしてレオンに合わせて拍手をし始めた俺達に、席1つ分ほどの間隔を開けて隣に立つ人物達が二人現れた。
獣人族のレイドとメルちゃんだ。
「俺達獣人だってあんなん余裕だったぜ!
あんなお腹が無くなっている奴なんざ、街を歩けば軽く100人くらいはいるからな!なっ!?メル!!」
「……多分1000人くらいはいる……。余裕……。」
ちょっと足が震えているようだが、気丈にも話しかけてくる彼らに感動し、「レイド……メルちゃん……!」と感極まった声を挙げると、それに待ったを掛けるように俺を挟んで反対隣から別の人物達の声がする。
「え〜?さっき地震が起きちゃった?ってくらい震えていたワンワンとペンペンがいたんですけどぉ〜気のせいだったかな?
僕は玉の輿に乗るためなら、ドラゴンの巣穴にも喜んで入りま〜す!」
「兄さん……。」
またしても気配を感じさせず現れたサイモンとリリアちゃんが間隔を開けつつ隣に立つと、レイドとメルちゃん、そしてサイモンとリリアちゃんの両チーム間にバチバチと稲妻のようなものが走った。
俺達を挟んで。
なんでココを中心にこの二種族はにらみ合うのか……。
走る稲妻に顔をバチンパチンされながら、大人しくそのにらみ合いを見守っていると、今度はスッと俺達の前の席に立った人物達が目に入った。
「……随分と破廉恥な女だな。先ほどから見ていれば玉の輿などなんだと……しかも、あ、あ、愛人などと言っていただろう!」
「……アゼリア、落ち着きなさい。」
ギロリとサイモンを睨みつけるアゼリアちゃんと、困った顔でそれを見ている正統派ヒロインのソフィアちゃん。
そしてせっかくソフィアちゃんがアゼリアちゃんを宥めようとしているのに、ニマニマ〜と嫌な笑みを浮かべたサイモンがからかうように言った。
「や〜ん♡なんか筋肉女さんが絡んできてさっちゃんこわ〜い!
リ〜フ様ぁ〜、なんか僕ストーカーされてるみたいですぅ〜!」
キュルルンッ!
目をうるうるさせたサイモンが俺の方へ顔を傾けてそう言うと、アゼリアちゃんはサイモンに向けバチバチと火花を散らし始めた。
────が……レオンがスッと立ち上がると全員が同時に険悪な雰囲気を引っ込め、無言で顔を正面に戻す。
フラン学院長は、それを呆れたような表情で見つめながらゴホンっと一度咳をし、並んで立っている受験生達に言った。
「先ほどは我が院の教員が、誠に申し訳なかった。
こちらの不手際のせいでだいぶ時間が遅れてしまったが、これより<魔力操作術>の試験を開始する。」




