表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

269/831

266 見守る人々

( リーフ )



「 レオン、あいつに勝てるかい? 」



後ろにちょこんと立っているレオンにそう問えば「 はい。 」と何のためらいもなくそう答えた。


それに周りの人々はざわつき、ジュワンのこめかみがピクリと動く。



「 ……ほほぅ?この私に勝つと?


流石は公爵家のご子息様を誑かすだけあって冗談がお上手なようだ。


奴隷の化け物が本気で勝てると思っているのかね? 」



「 ?当たり前だろう??お前は何をやっても俺には勝てない。


なんならこの場にいる全員でかかってくるといい。


リーフ様をお待たせするな、早くしろ。 」



煽るように嫌な言い方で攻撃したはずのジュワンだったが、全く動じていない上、心底どうでもいいと言わんばかりのレオンの態度にジュワンのこめかみにはビクビクッと血管が走っていった。


そして次の瞬間ーーーージュワンは一瞬でレオンの目の前に移動していて、凄まじい殺気を放ちながらレオンを睨みつける。



「 奴隷ごときが、何だ?その口の聞き方は。ーーあぁ?!


公爵家のご子息のおもちゃだからといって許されるとでも思っているのか?


現実を見せてやるよ。さっさとリングに上がれ。 」



その殺気のせいで受験生達だけではなく教員達すらも汗をドバッと掻きながら固まり立っていられない者もいる中、俺も汗を一筋垂らした。



ジュワンという男が相当な実力者であると言うことはこれだけでよく分かる。


性格は悪いが強そうだ。



少々心配になってレオンを見上げればーーーーまさかのいつも通りの全感覚お休みモード。



一切見ていない、聞いていない。



ただどうすれば良いかもよく分からないから、とりあえず黙っておこ〜的な雰囲気がビンビン出ている。



多分平和なレガーノで過ごしてきたもんだから、いまいち危機的状況に馴染みがないのかもしれない。



殺気の意味から説明しなければ駄目か……



万年思考停止のレオンに対して効率の良い教え方を頭の中で考えている間に、ジュワンはトンッと先にリングへと上がり、耳に魔道具< 仮想幻石 >を取り付けた。



「 < 仮想幻石 >は本当にいい道具ですよね〜。


手が吹き飛ぼうが?足が無くなろうが?ーーーそれこそ頭がグチャグチャになろうが元通りになるのですから。



でも痛覚はそのまま。



その軽〜い脳みそで理解できますか〜??


ジワジワ嬲り殺しても死〜な〜な〜い〜ん〜で〜すぅ〜。



良かったですね? 」




はははーーっ!!と大笑いするジュワン。


そしてその様を想像しゾォォォ〜と背筋を凍らせる受験生達と教員達、ボケ〜としているレオンに、いやいや殺気より先に人の悪意的な感情を教えるのが先か……と考え込む俺。


そんな一貫してない雰囲気の中で、俺達にススっと近づいてきたのは獣人のレイド。


そのままレオンの様子を気にしつつ、コソッと話しかけて来た。



「 おい、その怖いのを本当に戦わせるのか?


ジュワンって奴、すげぇ〜嫌な奴だがめちゃくちゃ強いぜ。


悔しいが俺がやられたときも全然本気じゃなかったしよ。



人族は身体が弱いから痛すぎると廃人になっちまう奴もいるって聞くし……


あの野郎今度は手加減なんてするつもりないと思うぞ。 」



なんとレオンを心配しに来てくれたようだ。


おじさんは感動した!



「 心配してくれてありがとう。


レオンが大丈夫だって言うから俺はとりあえず見守るよ。


もし酷いことしようとしてきたらその時は俺が相手だ!


俺は強いよ〜? 」



なんたって俺は最強の悪役!


あんな小僧など眼中どころか遥か下にいすぎてまだ見えないレベル!



だから問題ないときっぱり告げるとジッとレオンが俺を見下ろしている事に気づく。



もしかして今のジュワンの発言に不安になっちゃった……?



「 レオン、どうしたんだい?


もしかして不安になっちゃったのかな〜?


悪い事しようとしたら俺がちゃんと止めるから安心して戦っておいで〜。 」



  ・・

「 あれ、完全に消しますか? 」




そう言ってレオンはスッとジュワンの方向を指す。



消す??何を???



不思議に思ってレオンを睨んでいるジュワンを見ると、それを越えた先にいるざわついている受験生の姿が目に入る。



はは〜ん?


" 試験中なのに周りがうるさいから防音魔法でもかけて音聞こえなくしますか? " ってことか。



昨日ゴブリンを倒した時に次から防音魔法がうんちゃらって言ってたし、うるさいと俺が嫌に感じないかとそういった気を使ってくれたらしい。



「 いやいや、あれは大事なBGMだから!


レオンにとっても大事な物だから消さなくて良いよ〜。



さぁ!レオン行っておいで!


思いっきりやっちゃっていいからね〜! 」



「 ???大事……??そうでしょうか……?


思いっきりやる……。



でもリーフ様、まだ遊びますよね?


俺は別に構いませんが、この世界……要らなくなりました? 」




??????



何だ何だ???なんかレオンがよく分からない事を言い始めちゃったぞ。


ーーーあ、これ、まさか恐怖で混乱状態になってる??



隣にいるレイドの頭にもはてなマークがポンポンっと出ているし、モルトとニールに至っては意味不明〜と言わんばかりに完全無視だ。



そんな皆から視線を逸らした後、俺は今までのレオンとの思い出を頭から捻り出し答えを導き出す。


多分レオンの頭の中には俺達常人より遥かに大きな世界が存在している様で、だいたい分からない事を言う時は、そういった大きな世界のお話をしている。



しかし、残念ながら、頭脳系最高峰のスキル< 叡智 >を持たぬトリ頭の俺には、それが全く理解できない。



そして俺は遊ぶこと大好き。


それは全ての世界共通だ。




「 世界、いるいる〜!遊ぶの大好きだからこれからも沢山遊ぶよ、俺は。 


だからレオンもこれから一緒にあ〜そ〜ぼ! 」



そう答えると、レオンは残念そうな、でも嬉しそうな複雑な表情を見せる。



「 なるほど……分かりました。 」



どうやら一応は納得したらしく、そのままレオンは、スッとリングの上に移動した。



よく分からないけど、試験が終わったら遊びに連れて行ってあげよ〜!



そう思いながら、レオンに応援を贈ろうとしたその瞬間____


もはやデジャブを感じ始めた出現方法で、サイモンの声がレイドとは反対方向の足元から聞こえた。



「 う〜ん……大丈夫かな〜?あのレオンっていう怖い人。


ジュワンってすっごいサディストらしいからぁ、ジワジワ嬲り殺されちゃうよ〜。


さっちゃん怖いな。 」



さっちゃんっ???


ーーあぁ、サイモンだからさっちゃんか……



どうやらレイドに引き続きサイモンまで心配して忠告しにきてくれたらしい。



「 サイモンも心配してくれてありがとう。でもレオンは大丈夫! 」



なんだかんだと呪いをものともせずレオンに絡んでくる存在がいる事が俺は嬉しくてムフッと笑う。


そしてジュワンと対峙しているのも関わらず一切彼を見ずに俺を見つめてくるレオンに目を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ