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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第五章(ライトノア学院試験編、ソフィアとアゼリア、レイドとメル、リリアとサイモンとの出会い)

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258 剣王ソフィア

(リーフ)

◇◇

悪役のお披露目イベントを経て、とうとう始まった<剣体術>の試験!

リングの上でそれぞれ戦っているのは、五人の教員達と受験生達で、剣か拳かのいずれかで戦いを始めていた。

ちなみに、使って良いのは身体強化のみ。

身体能力をテストするこの試験は、剣もしくは拳で戦うルールであるため、リングの横に置いてある木刀と布製のナックルのどちらかを借りて戦う様だ。


「ほほ〜う?これはこれは……。」


現在戦っている受験生達は、全員受験を決意するだけあって、なかなかの動き!

だが────……。


「────くっ!!」


「────っ!?こ、このぉ〜!」


そんな受験生達の鋭い攻撃を、試験官である教員達は、まるで遊んでいる様な華麗なステップであっさりと避けている。

それを見て、これがナンバーワン中学院の教員の実力かと納得した。


「試験終了!────次っ!!」


試験時間の五分が経過し、フラン学院長の声が上がると、教員達は一斉に動きを止めた。


「────っハァ!ハァ!ハァ!」


「ハァッ!ハァ!い、一発も……当てられなかった……っ。」


五分間一方的な戦いを続けた受験生達は、息は乱れ汗はダラダラで殆ど戦闘不能状態になっているにも関わらず、教員達の息は全く乱れていない。

その事からも、体力も相当な実力差がある様だ。


「圧倒的な強さ……流石は選ばれしエリート教員達か……。」


ブツブツ呟きながら大きな拍手をしていると、フラン学院長率いる審査員達によって、点数が書かれたプレートが掲げられた。


『15点!』

『10点!』

『20点!』

『15点!』

『10点!』


提示された点数は全て低く、いかにこの試験の採点が厳しいかが分かる結果であった。


「う〜ん……中々審査が厳しいね。」


「<剣体術>の平均点は、毎年20点くらいらしいですからね……。

これは全国にある中学院の中でも、断トツの一位の厳しさだそうですよ。」


モルトが、む〜ん……と険しい顔をしながらそう答えると、次の5人の受験生の名前が呼ばれる。


「あっ!ソフィア様が出場するっすよ!」


呼ばれた名前の中に、知っている名前を発見したニール。

興奮してリングの方を指差すと、そこにはキリッとした表情に威厳ある王族オーラを漂わせたソフィアちゃんがいた。


「剣か〜……。」


剣を握って気合満々なソフィアちゃんを見て、俺の脳裏にはアルバート英雄記に出て来たソフィア姫が過る。


物語の中のソフィア姫は、か弱そうな外見をしているにも関わらず、レオンハルトとの旅の道中では剣を武器にし、モンスターをバッサバッサと倒していた。


いつもはおどおどしているソフィア姫。

しかし戦闘になると、途端に感情を失くした様に淡々と敵を倒す姿はかっこよかったし、そのギャップが更に良い!と思ったものだ。


グオォ〜!と込み上げる熱い想いに、思わず悶える。


その実力はかなり高く、剣の達人である旅の仲間の<剣王ジェノス>さんも大絶賛!

『ソフィア様はまるで初代剣王様のようだ!』とまで言われる程だった。


「ソフィアちゃんはね…………やるよ?」


ニタリと笑いながらモルトとニールに静かに告げると、二人は『えっ!?』と非常に驚いた表情を見せる。


「ま、まさかソフィア様……。」


「あんな可愛い外見なのに、実は剣士であった……ってことっすか?」


ゴクリと喉を鳴らした二人に対し、俺は大きく頷いた。


「よく見ておくんだ。彼女の勇姿を。今後のためにもね。」


更に念を押して言うと、二人は顔を見合わせ真剣な顔でコクリと頷くと、そのままソフィアちゃんに注目する。


俺も勿論、視線をソフィアちゃんにロックオン!

ここは【アルバード英雄記】の大ファンとして、絶対に見逃せないシーンだ!


チラチラと視線に映り込もうとしてくるレオンをさり気なく退かし、しっかり視界をクリアーにした後、とうとう試合開始の合図が上がる。


剣を肩に掛けたソフィアちゃんよ姿は、まるで野球のバットを構える様。

そんな、あまり見ないスタイルの剣の構えをしたソフィアちゃんは、一直線に審査員の方へと向かい────……そのまま派手にズテーンッ!!!と盛大にコケた。


「………………あ、あれ……???」


受け身も取れていないその見事な転びっぷりに俺は固まり、モルトとニールも固まり、周囲の人達も固まり……結果、痛いくらいの沈黙が訪れた中、耳に聞こえたのはレオンの、『──フッ。』という鼻で笑う音のみだった。  

レオンを抜いた俺達三人と周囲が固まっている間に、ソフィアちゃんはヨロヨロと立ち上がり、直ぐに落としてしまった剣を拾うと、『えいやぁ〜っ!』と、おおよそ若いお嬢さんらしからぬ声を上げ、剣を大きく振り回し始める。

その掛け声とへっぴり腰……そしてまるで野球のバットを振るようなその動きは、前世で近所に住む90歳のおばあちゃんが、畑を荒らしにくるカラスを杖で追い払う姿に物凄く似ていた。


そして試合が終わり、ソフィアちゃんに告げられた点数は、1点。

なんでもその1点は参加賞みたいなもので、とりあえず出たらあげるよ!的なやつらしい。


「い、1点…………???」


モルトとニールの無言の抗議の視線は何のその、俺は盛大に頭をひねって考えていた。


────おかしい……。

だってソフィアちゃんは、相当の剣の使い手だったはずだ。

なのに、なぜ今、それが開花していないんだろう…………?


記憶を必死にほじくり出して原作本の知識を引っ張り出したが、やはりおかしいという答えしか出てこない。


これから剣の達人になる──っていうのが難しそうなのは、さっきの腕前をみれば予想はできる。

なら、もしかして物語の未来が変わったとか……?  


そんな事がフッと頭をよぎったが、この世界で変わっているのは俺、リーフのみ。

直接関わっているレオンならまだしも、まだ出会ってない人の未来を変えるほどの変化は起こらないはずだ。


ましてや俺は、現在ほとんど物語通りの未来を歩んでいるし……。


もちろん、この中学院は全くの予定外の事ではあるが、ソフィアちゃんと出会ったのはついさっき。

なのに彼女の未来を変えるのは、無理ってものだろう。


どんどん増えていくハテナマークで頭の中が埋め尽くされている中、、その後あの大司教の娘さん……真っ赤なドレス姿の<ジェニファーちゃん>の名前が呼ばれたため、スコンっと意識はそちらへ移る。


ジェニファーちゃんは、余裕の表情を浮かべながらフラン学院長へ視線を向けた。

果たして彼女はどんな戦いを見せてくれるのか……楽しみ〜!────と思ったのも束の間。

名前を呼ばれたにも関わらず彼女はリングには上がらず、一言「辞退しますわ。」とキッパリ告げたのだ。


え、ええええぇぇぇ〜…………??


楽しみにしていた分ショックも大きく、がっくり肩を落としていると、フラン学院長は落ち着いた様子で「では0点だが良いか?」と尋ねる。

するとジェニファーちゃんは、バッ!とセンスを広げ口元を隠し、大きなため息をついた。


「えぇ。構いませんわ。わたくし、野蛮な事が嫌いですの。

点数は合計点で決まるのですからそれで十分……。

────でも、わたくしはとても感動しましたわ。

流石は『聖女』の称号を持つ王女様はちがいますわね。その勇ましさ、是非見習いたいです。」


グルングルンと渦を巻くトルネードスピンの様な遠回しな言い方に、俺の鳥あたまは早々に理解することを放棄。


『戦うの怖〜い……だから戦ったソフィア様って凄いな〜!わたくし憧れちゃうな!』────で落ち着いた。


その通り!出来たら凄い!やったら楽しい!


ポケ〜と何事にも消極的なレオンの手を握り、鳥の様にパタパタさせて肯定を表現してみたらレオンは上機嫌になった。


そもそも人生ってやつは、何事も出来る出来ないの視点は重要ではないんだ。

楽しいか、楽しくないか、その一点のみ!


嫌ならやらないOKOK〜、出来たら凄〜い、そして楽しい。

それがおじさんの人生観の終着点。


ジェニファーちゃんが一瞬ソフィアちゃんに視線を送った後、フフッと笑って胸を張る姿を見て、相当次の試験に自信がある事が分かった。


なるほどなるほど〜?

とりあえず一連の出来事から察するにジェニファーちゃんは魔法特化型ということか。


魔法で高得点を取れば、体術の点数が悪くても合格できる。

ジェニファーちゃんはそれを狙っていくつもりだ。


それってチャンスは無限大〜。

如何に自身の個性を如何にアピールするかが大事!


ついホワワ〜ンと広い範囲でお勉強が必要とされる高校受験を思い出し、盆踊りの科目があればっ……!と思って悔しい思いをした過去を振り返っていると、なんとジェニファーちゃんと一緒にいる男の子も辞退したようだ。


────ということは、彼も魔法特化型か。


どっこいしょ〜と、その知識も頭の片隅に置いておくと、次の受験生の5名の中にアゼリアちゃんの名前を発見した。


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