252 暴かれた俺の……
(リーフ)
おやおや〜??
ご様子がおかしくなったアゼリアを心配し、どうしたのかと尋ねようとしたが、その前に顔が土色のモルトが俺の耳元にコソコソと耳打ちする。
「リーフ様、女性に対し『かっこいい』は、失礼にあたります。
それは基本、男性に対してのみの褒め言葉です。」
────そうだった……。
モルトによって、この世界での常識を思い出し、頭の中であちゃちゃ〜!と頭を抱えた。
前世と違い、こちらではあまり女性に対し『かっこいい』という言葉は使わない。
特に貴族の中では『女性はこうあるべき』というイメージが強い風潮もあり、その言葉は失礼であるという考えが普通だ。
そっぽを向いたまま、プルプル震えているアゼリアちゃんを見て、怒らせてしまったか〜と内心困っていると、モルトの上に乗っているニールが、コソコソ話しかけてくる。
「リーフ様〜『大和撫子』ってなんなんっすか?」
そこで俺は、はっ!と気づいた。
そうか!こちらの世界には『大和撫子』という言葉がないのか!
重ね重ね失礼したと、俺はそれについてそっぽを向くアゼリアちゃんに、言い訳をする様に説明し始める。
「『大和撫子』っていうのは、俺のイメージでは外面的な美しさじゃなくて、内面的な強さや美しさを持った、芯のある女性の事を言うんだ。
君の話を聞いて、きっと辛いことも沢山あっただろうに、その地位につけたのは単純に凄いなって思ったんだよ。
だからつい口から出ちゃったんだ。気に障ったならゴメンね。」
そんな俺の説明が終わると、アゼリアちゃんの震えは身体全体に広がっていった。
めちゃくちゃ怒ってらっしゃる?
何がまずかったのかと必死に頭をひねっていたところに、またしてもモルトが耳元に顔を寄せてきて、コソコソと耳打ちしてくる。
「リーフ様、今の言い方だと、外見はイマイチであると捉えられてしまった可能性が……。」
あぁ〜────……た、確かに〜。
そっぽを向きながらガツガツとお弁当を食べ始めたアゼリアちゃんに対し、俺は頭を抱えた。
もう黙ろう……。
余計な一言ならぬ百言くらい多い、空気真空おじさんは口を閉じるべし。
サッサッと服のホコリを丁寧に払ってくれるレオンに「ありがとう。」と言った後、俺はしっかりとお口チェックする。
そしてそんな俺とアゼリアちゃんを交互に見ていたソフィアちゃんは、ニコッと笑って俺にお弁当箱を返してきた。
「とても美味しゅうございました。リーフ様の専属シェフの方は、とても素晴らしい腕をお持ちですね。
どうかお礼を代わりにお伝え下さい。今度は是非、わたくしの専属シェフの料理も召し上がって頂きたいです。」
「是非よろしくお願いします。なら頑張って俺達試験に受からないとだね。お互い午後も頑張ろう!」
重度のコミュニケーション欠陥を抱えているレオンが、イヤイヤするようにムワッとしたゴネゴネオーラを出してきたが、何事も経験、せっかくのお誘いは受けて人に慣れるべし!
そろそろミルクしか飲めない赤ちゃんから、捕まり立ちができるようになってきたレオンを、今いる安全なベビーベッドから無理やり出す!
ベッドにしがみつく赤ちゃんレオンを鷲掴みする妄想をしている間に、アゼリアちゃんもお弁当を食べ終わり、少し早いが実技の会場に行こうと言う話になった。
その為「ごちそうさまでした……。」とボソボソというアゼリアちゃんから、お弁当を受け取ろうと手を伸ばそうとした、その時────……。
────パパンっ!!!
レオンが後ろからそのお弁当箱をはたき落とす。
そのせいで、地面に叩きつけられたお弁当はおせんべいのような姿になってしまった。
シ〜ン……。
その瞬間、その場の空気は凍りついたが、直ぐにアゼリアちゃんがギンッ!!とレオンを睨みつけてあったまる。
対するレオンも、いつもなら完全無視を貫くのに珍しく不機嫌オーラ全開で睨み返し、更には俺を強く締め上げてきたのだ。
────お?
おおおおお???
???俺、別に下ネタ言ってな〜い!
「レ、レオ────……。」
それを伝えようと口を開いたが、レオンは後ろから俺のおでこ辺りを鷲掴みにし、硬いかた〜いお胸に後頭部を叩きつけてきた。
────ゴインっ!!
物凄い大きな音と共に、鈍い痛みが頭全体にまわるのを感じて、俺はフッと考える。
多分『大和撫子』が引っかかった。
下ネタに分類されちゃったか〜。レオンのセクハラセンサーは、査定が厳しい!
顔がプレスされてとんでもない小顔効果が出ているのを見て、モルトとニールは青ざめてゾッとしているのが見えた。
────が、それも一瞬。
二人は『まぁ、いつものこといつものこと〜。』と落ち着いた様子で、おせんべいのようになったお弁当箱をぺりぺり剥がして回収し始めてくれる。
『ありがとう……。』
口には出せなかったが、心の中でお礼を言っていると、メラメラと怒りのオーラ全開のアゼリアちゃんが、レオンに噛みついた。
「……おい、奴隷。いくらなんでも不敬にもほどがあるぞ、離せ。」
「リーフ様は喜んでいる。……お前達は邪魔だ。消え失せろ。」
アゼリアちゃんの言葉に、レオンが初めて反撃!
この時点で、俺のテンションは大きく上がっていった。
レオンがお話している!!仲良し?仲良し??
貴重なレオンからの一次的接触に感動するとともに、俺は冷静に『えっ?痛いよ?全然嬉しくな〜い』と言った。
────心の中で。
「……くっ!リーフ様のご命令とはいえ見てられん。
リーフ様!本当によろしいのですか!?こんな暴力行為……。」
「……リーフ様は、むっちんむっちんが大好きだ。
残念だったな?お前達はむっちんむっちんを持っていない。
俺が一番。……だから諦めろ。」
……やめて?
ねぇ、レオン、どうしてここで俺の性癖を暴露するの??
サァ〜……と血の気が引いていくのを感じながら、再び静まってしまったその場をおさめるため、俺は覚悟を決めた。
「……はい……俺はむっちんむっちんが大好きです……。」




