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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第五章

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259 大人ですから

( リーフ )


アゼリアちゃんは、リングの前でペコリッと頭を下げた後、一瞬俺の方に目線を向ける。


それに気づいた俺は、頑張れ〜とお口をパクパク動かしながら手を振ったが……彼女は慌てた様子で顔を背けリングの上に登ってしまった。



その反応、痴漢に出会ったが如し…………。



「やっぱりさっきの発言が、セクハラに分類されちゃったか……。」


────ズズーン!


若いお嬢さんにそんな誤解をされて、地味に凹んでいると、横でレオンが、フー!と大きなため息をついた。


「むっちんむちんを持たぬ女……。」


更に続けて卑猥な事を呟いたので、レオンの口を慌てて押さえて周囲を見渡したが、どうか御安心を……。



俺達を中心として、半径5mくらいは誰もいないから!



皆さり気なく距離を取っているので、レオンのロウソクを吹く程度の声など、聞こえないようだ。


「危ない危ない………。」


とりあえずホッとしてレオンの口から手を外すと、ちょうど次の試験開始の合図が上がる。


すると、その瞬間────アゼリアちゃんが、目にも留まらぬスピードで試験官の方へと飛び出した。



「 ────!ほぅ?素晴らしいスピードだ!」



試験官は、驚きに目を見開きながらその攻撃を避け、直ぐに反撃に出る。


すると、今度はアゼリアちゃんがそれを避けながら反撃に……と、今までの受験生とは明らかにレベルが違う戦いが始まった。



まるで二人で踊っているかの様にも見える剣の打ち合いに、周りで見ている受験生達からは『おぉっ────!!』と、どよめきがおこる。


俺も驚き、瞬きを忘れてジッ……と戦っている姿を見つめると、試験官は勿論のこと、アゼリアちゃんの身体強化も一切の無駄が無いほど全身に綺麗に張り巡らされていることに気づいた。



これだけ均等にできるなんて、相当の鍛錬を積んだに違いない。



身体強化は、全身に満遍なく!が基本。


しかし、それを均等にかけるのはすごく難しい。



自分が最初にこれでズッコケた時の事を思い出し、ハハッと乾いた笑いが漏れた。



アゼリアちゃんはそれを見事に習得し、更には美しい柔軟性のある剣の型、隙は逃さない力強い打ち込み────などなど。


自分にあった戦闘スタイルまで確立している様だ。



これは強力なライバルになりそうな予感がするぞ〜!



ウキウキしながらチラッとレオンを見ると、一切興味ない様子でポケ〜としている姿が目に入り思わずため息が……。



これから試験だって分かっているのかな〜?



疑いの眼差しでジッとレオンを見つめていると、あっという間に試験は終了してしまった。


その点数は、なんと本日最高得点の70点!



これは凄い!



周りで上がった拍手に便乗し、俺も拍手を送っていると、レオンの機嫌は急降下していく。


レオンの負けず嫌いスイッチが入りそうだと察知し、俺はリズミカルに拍手をし始めた。



「〜はいっ!レオンがいちば〜ん!♬」


「レオンの方がとってもつよ〜い!♬」



そう歌ってあげると気分は多少上昇した様子でホッと一安心する。


その後も気分良くレオンの音頭を小声で歌っていると、リングを降りようとするアゼリアちゃんとまた目があったが、ププイッと顔を背けられてしまった。



────うむ!根深い。



セクハラの罪深さを嘆いていると、次はモルトとニールの両名の名前が呼ばれたため、気持ちを切り替える。



「二人共頑張れー!」



拳を握って声を掛ければ、二人はふっと余裕ある笑みを浮かべた後、ヤレヤレと言わんばかりに息を吐いたり首をコキコキ鳴らしたり……随分と余裕そうな態度を見せてきた。



「これでも< 剣体術 >にはそれなりに自信があります。


俺は皆のように、もう子供ではありませんので…………大人の男の実力というものを見せてやりますよ。」



「俺も< 剣体術 >には自信があります。


剣術は大人の男の嗜みのようなものっすからね!


大人の俺がチョイチョイと試験官達を弄んできてやりますよ。」



『 白 』とともに、つい先程大人になった二人は、非常に頼もしい表情を浮かべながらザッザッとリングに上がり、そして────……。



5分後、揃って20点という平均点をもぎ取って戻ってきた。



「…………。」



とりあえず、何も言わずに息も絶え絶えでぐったりと地面に倒れ込んでいる2人に、ヒュオ〜と風魔法を当てて冷やしてあげる。


そしてそのままグスグスと声を殺して泣く二人を慰めていると、次に呼ばれたグループの中に、あの【 獣人族 】の< レイド >と、一緒にいた青いフードのお嬢さんがいた。


二人は会った時と格好は変わっておらず、レイドは俺と同じような白シャツに赤みの深い茶色のベストに黒ズボン、もうひとりの少女は青いフードを被ったままであった。


レイドは楽しそうに鼻歌を歌っていてご機嫌な様子だが、青いフードのお嬢さんのほうはどちらかと言えば表情に乏しいタイプのようで、その表情から感情らしきものは一切読み取れない。



あの女の子も獣人族なのだろうか?



レイドの様に、一目みて分かる特徴がないからイマイチ分からない。



【 獣人族 】は、人族より身体能力に優れているのは共通しているが、自身の祖となる獣によってその特化している能力に差が結構あると聞いたことがある。



果たしてあの二人、どれほどの実力があるのか……



またワクワクしながらリングの方を見つめていると、二人が剣を構えたタイミングで試験開始の合図が上がる。



真っ先に飛び出したのはレイド。


相手の見方を見るとかそういった事は全く考えていないらしい。



しかし、かなりのスピードに加え、その勢いのまま振り下ろされた剣の威力は凄まじく、試験官は剣で受け止めはしたが、その重い攻撃を受け止めきれない。


「────くっ……重いな!」


そのため試験官は、直ぐにレイドの剣を横に流す様に弾くと、真正面から攻撃を受けないようテクニックを駆使し攻撃をいなしながら戦い始めた。



流石は獣人、12歳にしてこのパワー!


ドノバンと同じ、パワータイプとみた!



感心しながらレイドの戦いっぷりに見入っていたが、あのお嬢さんの方はどうだろうか?とそちらに目線を向けると、こちらも中々の動き。


ただし、戦い方はレイドと違い距離をとって戦う戦法なので、恐らく完全な前衛型ではないようだ。



普段は何の武器で戦うんだろう?



ワクワクしながら見ていると、距離をとってくる戦い方が戦いにくいのか、相手をしている試験官があからさまに嫌そうな態度でチッ!と舌打ちをした。


感じが悪いなと感じるこの試験官、実はこの戦いだけではなく、これまで相手にした受験生達に対しても、あまり褒められたものではない態度をとっている様に見える。


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