250 流行ってます、レガーノで
(リーフ)
……しまった。
レガーノの小学院でのランチ時に、あまりに似ている状況だったため、俺達はこの行動の異常さを忘れてしまっていた。
レオンの大事なお仕事の一つ、<リーフの専属椅子>
これがちょっと普通じゃないお仕事である自覚はあるのだが、あまりにも日常化してしまっているため油断すると……こうなる!
しかも物凄く最近同じ失敗をしたばかりだったのに……。
内心頭を抱えながら、何かいい言い訳は……と必死に考えた、その時────ハッ!とある事に気づいた。
俺、悪役……。
自分の本来の役割を思い出して、ニタリと笑う。
そうそう、俺はレオンを虐める最強の悪役リーフ様。
つまり中学院在学中レオンを虐める予定だから、これってお披露目がちょっと早くなっただけなんじゃない?
色々と吹っ切れてきてニヨニヨと笑っていると、レオンが不思議そうな顔でフォークを持つ俺の手を摘んで力具合を確認してくる。
しかし、自分の考えで一杯一杯な俺の手には力は入っておらず、ふにゃふにゃだ。
その手は好きに遊ばせといて、俺は不安そうにこちらを見ているソフィアちゃんとゼリアちゃんへ視線を向けた。
二人は正義感が強く、とても優しい心を持っている。
だからこんな虐めを目の前で見せつけられたら恐らくは────……。
『なんて酷いことを……よしっ!共にあの酷い暴君と戦おうじゃないか!』
そんな友情を、レオンと築くかもしれないぞ!
伝説の剣を空に掲げるレオンと刀を構えるアゼリアちゃん、そしてそんな二人を不安げに見つめるソフィアちゃんの姿が思い浮かび、ガッ!と拳を握る。
レオンのお友達大チャンス来た!
早速俺は悪役先制パンチとして、レオンに『お茶を飲ませたまえ〜!』と命令しようとしたが……突然ニールが、俺の顔の前にバッ!!と手をかざし微笑んだ。
えっ?何?何??
その行動の意図が分からず、キョトンとしながらモルトの方へと視線を移すと、モルトは頷いた後、ニール同様にニコリと微笑んでくる。
何かは分からないが、二人に良い策があるようだ。
これは無下にするわけにもいかないか……。
俺は言いかけた言葉を飲み込み、レオンの腹話術人形に徹すると、モルトがペラペラと喋りだした。
「実はこちらの食事方法……我々が住む街レガーノでとてもとても流行っている食べ方なのです。
ですので、これは普通です。
街を少し歩けば、ざっと100件くらいは見かけますね。」
モルトの言葉にコクリと頷きながら、ニールもそれに続く。
「その通りです。私達も毎日やっております。優しさと、人の温もりを忘れないというコンセプトで作られました。」
こ、これは……!!
二人の意図に気付いた俺は、大きく開いた口を手で隠した。
恐らく二人は、王女様の目の前で奴隷を虐めるという不名誉を、体を張って誤魔化そうとしている!
モルト……ニール……っ!!
二人の気遣いにジーン……と感動しているのに、レオンはお構いなしに、俺の手から奪ったフォークを使ってハンバーグを口元へ押し付けてくる。
与えられるものは全て享受するがモットーの俺、反射的にそれを口の中へ。
そしてモグモグしながらその行く末を見守っていると、それを聞いたソフィアちゃんが、なるほど……と神妙な顔で頷いた。
「ま、まぁ……そうでしたか……。確かに、とても優しい行為ですね。
では、お二人もいつもこのようにお食事を? 」
「「その通りでございます。」」
ソフィアちゃんの質問に二人はきっぱりと答えると、ソフィアちゃんは慈愛に満ちた微笑みを返す。
「それではわたくし達に構わず、どうかいつも通りにお食事なさって下さい。
リーフ様、とても美味しそうなお料理ですね。ありがたく頂戴いたします。」
ニコニコと微笑むソフィアちゃんに、引くに引けなくなったモルトとニールはスッと席を立ちジャンケンをし始めた。
そして負けたニールが俺の隣に座ったモルトの上にドスンッと座り、そのまま食事を続けたが……下になってしまったモルトの顔は土色だ。
それをにっこり笑って見守るソフィアちゃんと対照的に、アゼリアちゃんは心底嫌そうに俺達四人を見ていたが、突如、はっ!!としてモルトとニールに尋ねた。
「それが貴様たちの街で流行っているということは……まさかあのマリオンもそんな事を……?」
すると、顔色が土色のモルトと死んだ魚の目のニールは直ぐにバッ!!!と俺の方を見た。
マリオンの爵位は『伯爵』。
そしてモルトとニールは共に『男爵』であるため、爵位が下の彼らがマリオンについて下手なことを言えばただではすまない。
それを理解している俺は二人に任せておけと言わんばかりに、コクリと頷いた。
「あぁ、マリオンかい?うん、もう毎日やってるね。
彼は人気者だから、それこそ日替わりで人を変えてやってるよ。
流石は伯爵家の御子息、愛が深い少年だよ、彼は。」
そう語る俺の口に、レオンは野菜チップスをねじ込んできた為、それももぐもぐと咀嚼しながら、うま〜と舌鼓をうつ。
「そ……そうなのですか……。」
「うん。そうそう。」
汗を掻きながらゴクリとツバを飲み込んだアゼリアちゃん。
それにとどめを刺すようにしっかりと肯定しておいたが、そこで先ほど考えていた事を思い出しアゼリアちゃんに尋ねてみた。




