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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第五章

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257 仕切り直し仕切り直し〜

( リーフ )


危ない危ない……。


これは初手から間違えてしまうところだったとモルトとニールに多大な感謝をしていると、案の定安心してきたらしい受験生達はガヤガヤと喋り始めた。



「 本当に平気なのかな? 」


「 でも4年間一緒って言ってたし…… 」


「 目の前で触ってるしな…… 」


「 じゃあ大丈夫……なのかな? 」



とりあえずまだ不安はあれど、完全に逃げ帰るつもりは失せたようだ。


まだざわざわする場内で、フラン学院長は恐る恐るといった様子で……しかし目はしっかりと俺に合わせて俺に言った。



「 ……本当にリーフ殿は何も異常がないのか? 」



「 はい、一切ないです!問題ありません! 」



毎日快眠、快調だよ、俺。


フラン学院長は、俺の答えを聞いて一度目を閉じ何かを考え込んだ後、スッと目を開けてもう一度俺に視線を合わせる。



「 ……確かに貴殿に異常はないようだ。


────それでは、我々にレオン殿の受験を拒む理由はないな。 」



「 そんなっ!学院長!!正気ですか?! 」



フラン学院長の言葉を聞き、後ろに控えている教員達は異を唱える言葉を数多くぶつけたが、フラン学院長は一切動じる事なく、有無を言わせない強さを持って言った。



「 我が【 ライトノア学院 】は、アーサー様の崇高なる理念の元に運営されている。


そのため我が院は、実力あるものは誰であろうと受け入れる。


それが例え奴隷であろうとも、呪い付きであろうとも────な。


話はこれで終わりだ。


これより< 剣体術 >の試験を開始する!


名前を呼ばれた者達は前へ!! 」



そうバシっ!と言い切ると、まだ戸惑いがある様だが、教員達は直ぐに試験を受ける5人の受験生達の名前を呼び始める。


それと同時に、リング上には試験官を任された教員たちがそれぞれ配置についた。


受験生達はというと、多少こちらが気になる素振りを見せてはいたが、直ぐにカチッとスイッチを切り替えて試験に臨み始めた様だ。



「 ……ハァ〜。 」



ここらへんで、やっと安心する事ができて、俺は安堵の息を漏らした。



無事に中学院悪役デビューを果たした俺。


中々完成度が高い悪役っぷりに、心の中で自分を褒める。



「 二人共、ありがとう〜。 」



満足気に微笑みながら両脇にいるモルトとニールにお礼を言うと、二人はビシッと親指を立てた。



俺達、仲良し幼馴染〜ズ!



俺もビシッと親指を立てて返し、その後直ぐに表情筋が死んでいるレオンの頬を引っ張ってにっこり笑顔を演出しておいた。



さぁさぁ、レオンの精神状態はいかがかな〜?



俺はレオンに降ろして貰った後、タタタッーと正面に回り込んでその顔を覗くと────なんと随分と上機嫌の様だ。



レオンの心臓はオリハルコン!


どうやらこの虐めはあまりレオンの心のツボに引っかからなかったようだ。



< オリハルコン >


神が作ったと言われるほど硬く丈夫な伝説の鉱物。



レオンの傷つきポイントは、未だによく分からないな〜……。



ふ〜む……と考え込んでいると、レオンは俺に「 どうしました? 」と聞いてきたので、ここいらで泣きっ面に蜂(泣いてないけど)の一発いくか!と俺はニタリといや〜な笑みを浮かべた。



「 これからの学院生活が、楽しみで仕方がないな〜と思ってね。


レオンは今までより、更に俺にこき使われる毎日となるだろう!


朝から晩まで、これから一分一秒たりとも、このリーフ様の側を離れられない日々を過ごすのだ! 」



恐怖を演出するため昆布よりも昆布らしい動きでサワサワ〜と指をレオンの目の前で動かすと、レオンは嬉しそうに笑って「 楽しみです。 」と言う。



こき使われるのが楽しみ…………


すくなくとも、12歳の子供の口からは絶対に出てこない言葉だぞ〜?



動かしていた指の動きを止めて、ズ〜ンと心が重だるくなったのを感じた。



これを変えるには、残念ながら俺では役不足!


とりあえずは呪いが伝染らないと分かって貰えたし……これから交友関係が広がれば、変わっていってくれるだろうと期待する。



目指せ、青春!


レオンはまず挨拶から!



むんっ!と拳を握ると、全く同じタイミングでモルトとニールも拳を握り、感極まった様子でフルフルと震えている。


以心伝心?と思ったがどうやら違うようで、彼らの視線の先を追えば、悔しそうに地団駄しているマリオンがいた。



あ、そっちか〜……。



毎日のマリオンストレスに晒されているモルトとニールにとって、今回の事は非常に胸がすく思いだったようだ。



こっちはしっかり青春してるのにな〜と、全くマリオンを気にしていないレオンを見上げてしんみりしてしまう……。



まぁまぁ、焦らずゆっくり……ゆっくり〜……。



そう自分に言い聞かせて、始まった試験を見学するためレオンの手を引っ張りながらモルト、ニールと共にリングの方へと向かった。


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