22 旅の始まり
彼がこの世界に産まれ落ちて18年。
イシュル神の日を迎えた瞬間、神託通りに各国の中心地に6つの光る柱が出現し世界中が大騒ぎになった。
そして直ぐにレオンハルトは王に命じられ、世界の命運を背負い6つの柱を回る旅へと出発することになったが、他にも英雄を支える仲間として四人の人物達が任命される。
一人目、そのチームリーダーとして選ばれたのは【剣王】の称号を持つ騎士の<ジェノス>。
そしてその他のメンバーは三人。
【賢王】の称号を持つ賢者の<フローズ>
【守護王】の称号をもつ盾士の<ゴーン>
そして、このアルバード王国の第一王女にして今世紀の【聖女】と言われている<ソフィア>であった。
このパーティのまとめ役となったリーダーのジェノスは、元々全体を見通すことに長けていて、できる限りこのパーティの不和を防ぎたいと考えていた。
フローズとゴーンとはよく知った仲であったジェノスは、彼らがレオンハルトの実力は認めていても、その身分と外見から決して受け入れない事が分かっていたため、レオンハルトに対して、やや距離を置いた態度を貫く。
そしてそんなジェノスの予想通り、フローズとゴーンは平民で、かつ醜い外見を持つレオンハルトに対し、常に刺々しい態度と言動を繰り返し、そのたびにジェノスに止められていた。
そんな三人に囲まれた最後のメンバーである、ソフィア王女。
彼女は価値観の相反する兄達に挟まれて育った経験から、自分の意見を主張することが、ひどく苦手であったため、そんな三人に対し何か言うことも行動に移すこともできない。
そんな不穏な空気が漂うパーティであったが、レオンハルトは気にも止めずに、ただひたすら答えを探し前へ進んでいった。
そして旅の道中、レオンハルトは沢山の人々を『見る』。
神託の前より徐々にモンスター被害は増えていて、レオンハルト一行は向かう先々で数々の手強いモンスター達に行く手を遮られては倒していったが、結果的に関わった者達の反応は様々であった。
助けを乞う人々、お礼を言う人々、愛する人を亡くし理不尽な怒りや憎しみをぶつけてくる人々……。
そんな出会いの数々に一喜一憂するメンバー達をよそに、レオンハルトの心はやはり波風一つ立たぬまま。
彼はただ目の前で攻撃してくるモンスターを殺すだけ。
もしそれがモンスターではなく人間だとしても、彼は同じ様に淡々と剣を振るだろう。
そしてそれに対して────やはり心は動かない。




