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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第五章

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246 ハロー子猫ちゃん

( リーフ )   


10時から始まる筆記の試験会場は全部で3つ。


身分によって分けられている。



今までの経験上、恐らく貴族側から要望があったのだろうと思われるが、中学院はあくまで実力重視主義。


その要望が通るのは、多分この試験会場についてのみになると思われる。



王族や高位貴族は【 Aクラス 】


それ以下の貴族が【 Bクラス 】


そして平民とそれ以外の身分が【 Cクラス 】



そのため俺達幼馴染〜ズは、筆記テストをバラバラに受けることになった。



俺は一応は公爵家なので【 Aクラス 】で、モルトとニールは男爵家なので【 Bクラス 】。


そして、奴隷のレオンは、それ以外に分類されるので【 Cクラス 】だ。



その為俺達は、教室への道の分岐点にて ” お互い頑張ろう! ” と言い合ってお別れしたのだが、当然のごとくレオンは俺の後を黒いカルガモの様についてこようとした。



ここで俺は ” ご主人様命令 ” を発動!


レオンには、強制的に独り立ちしてもらう事にする。



「 さぁ、レオンはCクラスで頑張って満点をとってくるんだよ〜。 」



念を百回くらい押して、恨みがましそうにこちらを見てくるレオンの背を押し無理やり送り出せば、渋々ではあるがなんとか自分の試験教室へと向かってくれた。


◇◇


「 おぉ〜……。 」



その後、Aクラスの教室についた俺は、ココに来た目的を見失いそうになるほどの広さとキラッキラした椅子とテーブル達を前に、圧倒されながら空いている席を探す。


適当に座ろうかと思ったが、どの席にも名前入りのプレートがドドーンと置かれているため、指定席制である事に気づいた。



はは〜ん?


さては電車で言うグリーン車的な感じだな〜?



思わぬビック待遇にニッコリしながら、自分の名前を探して大人しく席に着いた。



俺の席は後ろのど真ん中。



そこからは前の方の席に座っているソフィアちゃんとアゼリアちゃん、そして斜め前の離れた席に座る我らが同級生、子猫のマリオンの姿がよく見える。



やっぱり、マリオンもここを受験するのか。



予想通りの展開に、俺はここ半年くらいのマリオンの言動を思い出した。



小学院の卒院式まで、頻繁に俺達の所にやってきては、ちまちまちまちま〜!!!────と中学院に対する自論を語っていたマリオン。


「 やはり高位貴族なら、ナンバーワンを目指すべきでしょうね! 」


「 男爵程度は身の程を知って、別の中学院を目指すべきでしょう。 」


「 奴隷の分際で、小学院まで行けたことに感謝しろ! 」



────等など、耳を覆いたくなる様な暴言の数々に、すかさずペンッしていたが、マリオンは懲りない懲りない。


直ぐに復活してはこのような暴言の嵐を浴びせてくるので、ナンバーワン中学院のこのライトノア学院に相当な思い入れがあるんだろうな〜とは思っていたが、その予想は大当たり。



再び同級生としての関係は、続きそうだ。



そんなマリオンは俺が教室に入ってきた事をいち早く察知した様で、目が合うと直ぐに立ち上がり深くお辞儀をしてくれた。



流石はマリオン、公共での礼儀は絶対欠かさない!



" お互い頑張ろうね〜! "



手を振って口パクでそう伝えると、マリオンは言われずとも!と言わんばかりに頷き、そのまま前を向いて着席する。


そしてその直後、試験管らしき人が10人ほどゾロゾロと入ってきて、とうとう筆記試験が開始された。



◆◆◆


〜試験終了後〜


「 〜っハァ……終わった終わった〜。 」



12時を告げる ” リンゴ〜ン ” という鐘の音が鳴り響き、それと同時に筆記の試験は終了。


俺は長い長い筆記テストの終了と同時に、大きく伸びをして大あくびを漏らした。



貴族の歴史とか、名前の羅列表のような問題はちょっと自信なし。


しかし確かな手応えはあったので、俺は午後の実技テストに備えて早々にランチを食べに行こうと筆記用具を片付け始めた。



「 ……元日本人としては、カタカナちっくな名前が覚えにくいんだよね。


花子とか太郎とか……割と有名な名前じゃないと、まず名前自体が出てこないなぁ。」



まるで言い訳する様にブツブツと文句を呟いていると、何故かマリオンが意気揚々と俺の方へと早歩きでやってくる。



「 お久しぶりです、リーフ様。


本日はゾロゾロとくっついてまわる不快な黒虫と、ひっつき虫達はいないようで安心いたしました!


テストの出来はいかがでしたか? 」



いつも通りのマリオンの物騒な言い方に「 こ〜らっ! 」と叱りつけ、鼻をキュムっと摘んでやったがマリオンはやはり全くめげる事なく話を続ける。



「 私は算術学が多少自信がありませんが、後は概ね大丈夫だと自負しております。


特にリーフ様が不得意な貴族の歴史については、恐らく満点でしょうね!


別に大したことはないですが! 」



そう言ってドヤッとするマリオンは、今日も子猫ちゃんアクセル全開だ。



「 そっか〜。そりゃ凄いや。 」



素直に凄いと思って褒めると、もっと褒めて!もっと褒めて!と言わんばかりにニャンニャン話しだす。


こうして見ると、年相応の子どもにしか見えないマリオン。


こんな子が例え< リーフ >という悪のカリスマに影響を受けたとはいえ将来マッド・サイエンティストの大量殺人者になるとはとても思えない。



一体何がマリオンにとっての分岐点だったのだろう??



話をウンウンと聞きながらも、頭の中ではマリオンについての考察をし始めた。



物語の中に、マリオンの転機についての詳しいストーリーはなし。


しかし、既に高学院入学時には完全なる悪役サイドで固まっていたので、恐らくは中学院時代に何かあったのではないかと思われる。



ニャンニャン!おにゃにゃん!!


そのまま喋り続けるマリオンの話をひたすら聞きながら、少々意地悪な言い方だとは思うが……ダークサイドに染まっている様には見えず頭の中で首を傾げた。



とりあえず、分かっているのは、物語のマリオンはリーフと共に王都近くにある中学院に三年間通っていた事くらい。


そしてそれは、リーフによって進路変更を命じられたからだと思われるが────……やはりなぜナンバーワン中学院であるライトノア学院をリーフは受けなかったのか?という疑問は残る。



「 …………。 」



じわっとした嫌な予感に、マリオンにバレない様にコッソリ身を震わせた。



物語を振り返って ” リーフ ” という人間を思い出せば出すほど、違和感しか残らないのだ。



一番!に異常にこだわる性格のリーフ。


これは英雄という立場に拘っていた理由の一つでもあり、同じ様な理由で優秀な同級達を没落させたりも平気でやっていたくらいなので、相当こだわりはあったと思われる。



白熱してきたマリオンの話にうんうんと頷きながら、モワモワ〜と自分が学生であった頃を思い出す。



明らかにもっと上の高校を目指せる子が、やたら遠くて下の方のランクの高校を受ける。


何でだろうと思って聞いた理由は──── ” 制服が可愛いから〜 ” とか ” やっぱり都心!帰りに遊んで帰りた〜い! ” だった。



もしかして、リーフは学力で一番ではなく、王都の立地というモノに魅力を感じたのかも?


そう考えると、一気に不安は吹っ飛んでいった。



” 王都でおしゃれな学生生活した〜い☆ ”



キャハッ!☆と陽気に笑う、女子高生の様な格好をして都会にめちゃくちゃ馴染む物語のリーフちゃん。


そしてその足元には、わっさわっさと揺れる猫じゃらしにじゃれついている子猫のマリオンがいる。



そんな二人で、頭の中がわちゃわちゃと賑やかになってきたその時────突然教室の中がザワッとしたので、何だ何だ?とその騒ぎの中心へ視線を動かす。



するとそこにはソフィアちゃんと、その前には真っ赤でゴージャスなドレスを着た美少女が立っているのが見えた。


ゴージャスドレスの美少女は、黄色味が強い金色の髪をしていて、髪は長く腰辺りまであるが先端の方を巻いているためやや短く見える。


そしてそんな髪をドレスの色とお揃いの真っ赤なバラがついたお高そうなバレッタで止めていて、顔全体の全てのパーツがくっきりパッチリ!


その全てがミックスして、周りを威圧する程の見事な存在感を作り出している。



「 ……ほほ〜う? 」



キラキラ光り輝くその少女が眩しくて、思わず目をゴシゴシ擦った。



何だか正反対のイメージをもつ二人だな……。



そんな事を思いながら、その少女について知らない俺はマリオンに質問した。



「 ねぇねぇ、あのソフィアちゃんの前に立っている可愛らしいお嬢さんは誰かな?


マリオン、知ってる? 」



するとマリオンは一瞬ものすごく呆れたような顔をしたが、直ぐにそれを引っ込め俺の質問に答えてくれた。



「 あのお方は、< ジェニファー・ドン・レイシェス >様です。


イシュル教会、大司教グレスター卿のご令嬢ですよ。 」



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