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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第五章

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243 陰謀渦巻く……?

( リーフ )


ちなみにお礼を言われたモルトとニールは、デレデレとし始めたが、アゼリアちゃんに睨まれ慌てて視線を反らしている。



「 こちらこそ。聖兵士さん達の一糸乱れぬ動きはとても勉強になりました〜。


ありがとうございました。 」



ソフィアちゃんに向かって、深々と頭を下げてお礼を返すと、ソフィアちゃんもアゼリアちゃんも嬉しそうな顔を見せた。



あの統率された動きは本当にすごくて、まるで1つの生き物の様であった。


戦いの基本、チームワークの大事さをまざまざと見せつけられた貴重な体験であった事は間違いない。



それを間近で見れたのは本当に運が良かったな〜。



そう思いながら、俺は手元にある瘴核の詰まった袋達を見下ろす。



────でも、本当に相当な数のモンスターに襲われたな……。


これも< グリモア >で起こっている異変が原因なのだろうか?



「 それにしても本当に凄い数のモンスターだったね。


今はいつもこんな感じなのかな? 」



疑問に思った事をそのまま口にすると、ソフィアちゃんは少し戸惑っている様な表情を見せる。



「 ……いいえ、流石にこんなに襲ってくるようでは< グリモア >の人達が生活出来ないはずなので、おかしいと思います。


本日はたまたまだとは思いますが……。 」



「 ……そっか〜。 」



確かにそうだなと納得しながら、瘴核をぼんやり眺めていたその時、レオンがソフィアちゃんを隠す様に俺の前に立った。



「 ……何か気になることでも? 」



大層機嫌が悪そうにそう聞いてくるレオンに、視線を瘴核から外さず思ったままを口に出す。



「 いやさ、随分沢山のモンスターに襲われたからおかしいなって……。


これだと、帰りも大丈夫か心配になっちゃうよね。 」



そう言ってソフィアちゃん達にチラリと視線を送ると、レオンの機嫌は更に急降下した。



「 ────なるほど……。


では、それがなくなれば、リーフ様は心配じゃなくなるんですね? 」



へっ?と返事をする間もなく、レオンはスタスタとソフィアちゃん達の馬車へと近づいていく。


突然のレオンの動きに、馬車の近くにいるアゼリアちゃんは戦闘体制になり、ソフィアちゃんも多少の不安を感じてる表情を見せた。



まっ……まさか、直接 ” むっちんむちんですか? ” とか聞く気じゃあるまいな?



遠慮なくズンズン近づいていくレオンに肝が冷え、レオンを止めようと動いたその瞬間────……。



────バキッ!!!



レオンは、ソフィアちゃん達が乗ってきた馬車についている、円形で野球ボールくらいの大きさのモンスターよけの魔道具< 回避珠 >を掴むと、そのまま握りつぶした。



< 回避珠 >


モンスター避けの魔道具で、白い水晶のような色をした円形の形をしている。


制作者のレベルによってその品質に違いがあり、現在はレベル1〜5まで。


レベルが高いほど高品質でより高い効果を得ることができる。




「「「 ────っ!!!?? 」」」



レオンの保護者兼所有者の俺、真っ青。


『 連帯責任 』という言葉が頭に浮かんだ、モルトとニールも真っ青。


突然の暴挙にソフィアちゃんも青ざめ、怒りを通り越したアゼリアちゃんの顔色は真っ白に……。



「 バ、バ、バ、バカー!!なんてことするんだい!! 」



俺はすかさずピョ〜ン!!とレオンの背中に飛びつき、叫んだ。


まずい事をしたことを必死に訴えたが、レオンは「 ?? 」とクエスチョンマークを頭に浮かべ不思議そうな顔をするのみ。



なんてこった!!あの壊しちゃった魔道具って……おいくら??


絶対お高いでしょ!?



青ざめながら俺がモルトとニールの方へ視線を向ければ、二人はブルブル震えながら自身のお小遣いが全額入った袋を覗き見ている。



レオンが器物破損しちゃったー!


そう焦っている俺の耳に、チャキッ……という、何かがゆっくりと引き抜かれた音がしたため、今度は急いでそちらに視線を移した。


するとそこには刀を静かに構えるアゼリアちゃんが……。



「 奴隷如きが王族の私物に手を触れ、あまつさえ破壊するなど……この場での極刑が妥当でしょう。


よろしいですね?ソフィア様、リーフ様。 」



────本気だ。



本気でレオンに対して怒っている事が分かり、ソフィアちゃんがアゼリアちゃんを宥めている間に、俺は急いでレオンに言った。



「 レ、レ、レ、レオ──ン!!直ぐにゴメンナサイして!!


そもそも、なんで壊したりしたんだい!ストレス?? 」



レオンのストレスが何らかの形でこうして外に出てしまったのなら、十中八九チクチクネチネチといじめている俺が原因だ。


つまり俺はその事に対し、責任を取らねばならない。


あまりの罪の重さにブルブルと震えていると、レオンはやはり不思議そうにそれに答える。



「 ?リーフ様は、こいつらの馬車がまた襲われるのが嫌なんですよね?


これ以上、リーフ様のお心に影を落とす原因をなくしただけですが……。 」



「 ??? 」



その言葉に今度はこちらの頭上にクエスチョンマークが浮かび、そしてそれは俺だけじゃなく他の人たちも同じだった。


そんな俺達の前で、レオンは< 回避珠 >を握りつぶした方の手をゆっくりと開いていき、そこから見えた無惨にも砕け散った残骸達を見て……全員が息を飲む。



そこにあったのは、予想された回避珠の白い残骸ではなく────光が一切通らなそうな真っ黒な残骸だったからだ。


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