21 真の英雄
リーフとの決闘後、もう誰一人としてレオンハルトが英雄であることに異を唱える者はいなくなった。
そしてそれに伴い、彼の周りの環境はガラリと変化する。
レオンハルトを虐げ続けていた首謀者のリーフとメルンブルク家は、様々な権利と土地を国に取り上げられて、今後王都に近づく事すら出来ぬ廃れた遠い土地へと追いやられた。
またその尻馬に乗っていた貴族達は、英雄に取り入りたい他の貴族達の手により即失脚させられ、更にはその中でも足の引っ張り合いが始まる。
『お前が最初に英雄ではないと言ったからだ!』
『お前が一番遊びを楽しんでいたじゃないか!』
『お前の────お前のせいで────いや、あいつの────……!!』
永遠と続く罪のなすりつけ合いによって、自身の領の管理すらままならず、没落してしまう家も多数出てしまった。
何も考えずリーフに加担していた学院の教師達は、悪質な職務放棄であるとみなされ、全員資格と身分の剥奪、全財産の没収。
そして生徒たちは生ぬるい居心地の良かった楽園から突如、身も凍るような極寒の地獄へと落とされてしまった。
レオンハルトにいつ復讐されるのかという恐怖に怯えながら、罪のなすりつけ合いに落とし合いに、ゴマすりに……。
レオンハルトを虐げることで一つになっていた絆は、あっという間に崩壊し、足の引っ張り合いの果て、そのまま勝手に奈落の底へと落ちていく。
レオンハルトは復讐など考えておらず、誰一人として憎んでなどいなかったのに……。
そしてそんな彼らを遥か彼方に置き去りに、真の英雄レオンハルトは、誰の手も届かぬ最強の座に座り続け、そのまま18歳の誕生日を迎えた。




