(レオン)224 理解する
(レオン)
その後、リーフ様はただ普通に湯船に入るだけで、触ったり、舐めたり、口を付けたり……などの行為は、欠片ほども見せることはなかった。
しかも、結局せっかく身体に巻き付けたタオルも少ししたら全て取っ払い、頭の上にちょこんと乗せると「 ベベンべべベン〜♬ 」と聞いたことのない歌を歌い出す。
「?」
??なぜ触ったり舐めたりしないしないんだろう……?
何も始まらない事について考えていると、ハッ!と思いついたのはリーフ様にくっつく細い方と太い方の存在だ。
もしや、あの二人がいる時は、触ったり舐めたりはしないのでは……??
その考えに辿り着くと、俺は納得し大きく頷いた。
なるほど……つまり、2人きりの時が鉄則であると、そういうことか。
俺はこの瞬間、完全にお風呂のルールを理解し、肩の力をふっと抜くと、幸せそうに湯船に浸かるリーフ様を見た。
するとホワッと優しくて心地よい『嬉しい』を感じ、安堵の息を吐き出す。
こんな姿を見ながら湯船に一緒に浸かるだけで、俺は十分幸せだ。
そう思い直しながら笑みが零れそうになったその時、リーフ様がその場でザバ────っ!!と勢いよく立ち上がった。
「あっ!あっちにニンニク風呂っていうのがあるよ!行ってみよ〜。」
目の前には何一つ隠れていないリーフの裸体が……。
「…………。」
優しい『嬉しい』は、あっという間に吹き飛んでしまい、更に下半身にムズムズするような妙な感覚が走ったせいで気分がとても落ち着かない。
俺は目を閉じ自身の状態に探りを入れると、どうやらコレは状態異常の類と似たモノらしいことが判明した。
直ぐに本来は勝手に発動しているはずの状態異常無効に働きかけ、その感覚をシャットダウンすると────。
「レオーン!早くおいで〜。このお風呂凄く臭いよ!!」
そうはしゃぐリーフ様を追いかけていった。
そして本日一番楽しみだと言っていた『お酒の匂い風呂』とやらに辿り着いたのだが、そこには細い方と太い方がデーンと大の字に眠っていて、リーフ様の進行を阻む。
「横にどかしますか?」
非常に邪魔であったため退かそうとしたが、リーフ様が心配するので、仕方なく俺は二人の足首を持って脱衣所までズルズルと引きずっていってやった。
むにゃむにゃ。
もにょもにょ……。
何かをご機嫌に呟く二人を、天井で待機していたメイドの女達が着替えさせ部屋に連れて帰ったが、リーフ様はお風呂に戻ろうとはせず静かに体を拭き出す。
「……俺たちも出ようか。」
そう言ってお風呂は断念し、そのまま部屋に帰ることにしたようだ。
せっかくリーフ様が楽しみにしていた『お酒の匂い風呂』だったのに……。
細い方と太い方に対し、ムッとした気分を抱きながら部屋に戻ると、今度はなんとベッドで寝ながらグスグスと泣いている!
一体何に泣いているんだ……?
呆れながらジッと見下ろしていると、リーフ様はそんな二人にソッと布団を被せた後「俺たちも寝よう。おやすみ〜。」そう言って、自身のベッドにボフッと飛び乗った。
「……おやすみなさい。」
とりあえずリーフ様がお休みになったのを確認すると、リーフ様の隣に位置する空のベッドに、昼間貰った砂ネズミのおもちゃをそっと置く。
茶色い毛並みに緑の目────こうして近くに並べると本当に似ている。
満足気に頷き、俺に背中を向けて横たわるリーフ様をジッと見つめ朝を待つことにしたのだが……突然リーフ様がこちらに寝返りをうち、砂ネズミ、俺の順番で視線を合わせてきたので俺の心は僅かに弾んだ。
「……レオン、ベッドで寝ないの?」
その質問に、俺はしっかりと砂ネズミにそれを譲ったことをお伝えする。
俺は睡眠を必要としないし、365日ずっと立ちっぱなしでも全く疲れるなどの感覚がない。
そのため、それが当然であると伝えたつもりだったが、リーフ様は何かを考え込む動作をした後、つぃ……と自分の布団を持ち上げた。
「ほら、レオンおいで〜。」
突然そんな事を言われて、思わずポカンとしてしまう。
固まってしまった俺を急がす様に、リーフ様は布団を持ち上げてない方の手でテシテシと敷布団を叩き俺に言った。
「心配しなくても大丈夫だよ。このベッド、広いからさ。」
そして更に持ち上げた布団をフリフリ〜と振ってきたので、まるで光に吸い寄せられる虫の様に俺はゆっくりそこに近づく。
……そろ……そろり……。
そのまま静かにリーフ様の隣に静かに横たわった。
距離はだいたい人一人分くらいのスペースのみ。
手を伸ばせば届いてしまう距離にリーフ様がいる……。
「…………っ!」
それに気づいた瞬間、心臓はドッドッドッと力強く太鼓の様に鳴り響く。
リーフ様に聞こえてしまったらどうしよう……。
どうしたらいいのか分からず狼狽えていると、リーフ様が俺の上にフワッと布団を掛けてくれた。
「おやすみ、レオン……。」
それだけ言って、リーフ様は直ぐにウトウトし始めて、瞼が次第に閉じていく。
そしてそれが完全に閉じてしまうと、そのまま眠りの世界に旅立っていった。




