230 今後の予定は
( リーフ )
さて、問題も無事解決したし今後の予定を考えよう。
仕切り直しとばかりに、両手をパンっ!と合わせた。
この度受験する【 ライトノア学院 】がある< グリモア >までは、この街から馬車で約一時間くらいの道のりとなる。
試験は午前と午後の2つに別れており、10時から午前中いっぱいは丸々座学のテスト。
そして午後からは、実技のテストが待っている。
結果は後日郵送で、受かれば晴れて【 ライトノア学院 】の生徒になることができるが、なんといっても中学院は誰でも入れる小学院とは違い、突出した実力がなければ入ることは出来ず……ましてや【 ライトノア学院 】は、全国にある中学院の中でナンバーワンの難関中学院なので、一筋縄ではいかないだろうと思われる。
もしかして、小学院ぶっちぎりトップのレオンに匹敵する実力者もいるかもしれないぞ!
俺は顎に手を当てて、上機嫌で俺にご飯を食べさせてくれているレオンをジロジロと睨みつける。
物語の中のレオンハルトはこの時期、奴隷として過酷な鉱山送りにされていたためこの中学院生活は全くのイレギュラー展開になる予定だ。
鉱石をただひたすら掘る────というただの繰り返し行為より、遥かに色々な事を体験ができるこの中学院生活は、確実にレオンを強くしてくれるはず。
身体的にも、そして精神的にも。
この期間、レオンハルトにとってキーとなる重要な事件は無いはずなので、ここいらで自由に学院生生活を謳歌させてあげたい。
あわゆくば狂った神の改善、および新たな交友関係、そしてむっちんむっちんの恋人────は、まだ早いから異性の友達を!!
────ゴッ!!
闘志を燃やす俺に、直前に食べさせた牛肉サラダが気に入ったと思ったらしいレオンは、ヒョイヒョイと俺の口にそれを連続で放り込んでくれる。
それをありがたくモグモグしながら、その先に待ち受ける未来についても考えてみた。
< イシュル神の神託 >は、この中学院最終学年時にある【 イシュル神の日 】にある。
そのため残念な事に、自由時間はそこで終了予定。
それまでの期間はスキル発現を目指しつつ、精神面の改善、情緒面の成長を重点的に促したい。
レオンを待ち受ける数々の試練を想い嘆き悲しみながら、俺の口を丁寧にフキフキしてくるレオンに大人しく身を預ける。
レオンを強くするには、俺には俺の ” 悪役 ” としての役目があるため、その役目以外をこなしてくれる人物との接触がレオンには必要だ。
そしてそれを獲得できるチャンスが、中学院にはゴロゴロと転がっている。
俺はキラッ!と目を輝かせ、レオンの新たな出会いに思いを馳せた。
厳しい授業を共にし、苦楽を分かち合う仲間やライバル。
困難にぶつかった時、優しく声を掛けてくれるヒロイン達。
自身を慕い側にいてくれる弟分もしくは妹分。
────とかとか?
前世の知識総動員で、レオンとその仲間達を妄想してみる。
悪役を倒すべく集いし仲間たち、そしてレオンはそんな仲間達に少しづつ心を開いていき────……。
” さぁ、悪役リーフを共に倒そう!俺たちの輝かしい未来のために! ”
な〜んて言っちゃって、アルバード王国に伝わる伝説の剣とかを空に掲げて、皆で誓いを立てちゃったりするんじゃないの〜?
その時俺は偉そうに足を組んで座りながら ” 俺を倒せると本気で思っているのか?雑魚雑魚レオンよ ” ────みたいな事言っちゃったりして〜!
この辺りでワックワクと胸は高鳴り、自分のカッコいい悪役っぷりに思わず心酔してしまった。
そんなニタリと悪い笑みを浮かべる俺の隣には、モルトとニールを置く。
二人には悪のボスの仲間役をやってもらう予定だ。
とりあえず横で、” くっくっく、リーフ様にあの様な雑魚が勝てるはずもございません。 ” とか言っても〜らおっと!
「 〜♬〜〜♬ 」
妄想に花が咲きニッコニッコしていたら、いつの間にか食事を終えたモルトとニールはとっくに準備を終えていて、同時にレオンは俺を麦袋スタイルで持ち上げながらササッと荷物をまとめておいてくれたらしい。
結局俺は、そんな悪のボスとは程遠い情けない格好のまま、レオンに荷物と共に持ち上げられて正面玄関の方へ出荷されてしまった。




