(レオン)220 復活、後……
(レオン)
その後、どれくらいの時間が過ぎたのか……?
停止してしまった思考の中、結構な時間放心していた気がする。
とりあえず気がつけばうるさい連中はいなくなっており、目の前にはさっきのステージの上にいたうるさい男と、俺の手には大きめの木箱があった。
「?????」
それをぼんやりと見下ろしていると、次に耳に入ってきた言葉により、突如俺の思考はクリアーになる。
「ほら、黒ずくめの兄ちゃん!コレ、優勝賞品だ。
トロフィーは悪いけど壊れちまったから、コレだけ持ってってくれよ。
じゃあ、また機会があったらウォッカの祭りに参加してくれよな!!」
そこで頭に浮かび上がったのは、白いドレスを纏ったリーフ様の姿!
俺はそこで反省した。
やはりあんな紐のような格好をリーフ様にさせるべきではない。
リーフ様が着るべきはこういう体をキチンと覆うような服なのだと。
気分は再び向上し、期待に胸を膨らませながら箱をパカッと開け────……再び固まった。
中に入っていたのは黒い大きなベルトのみ。
あの砂ネズミのぬいぐるみはどこに??
「…………?」
俺はそのベルトを持ち上げ下を覗き、更に何らかの仕掛けの存在を疑い側面を念入りにチェックしたが、砂ネズミの痕跡すら見つからなかった。
「…………。」
俺の気分はスンッと『無』に戻り、手に持つベルトはいつもどおりにリーフ様へと献上する。
そしてムスッとしながら、リーフ様があのヒヨコもどきにそのベルトを巻くのをただ見ていた。
くれると言ったのに……。。
嘘をつかれた……。
さっきのうるさい男に。
────ムッ!!
嫌な気持ちになり、さっきのぬいぐるみが置いてあった場所に行こうかとしたその時、リーフ様が突然神妙な顔でブツブツつぶやきだしたので足を止める。
ボンヤリと虚ろな目。
ユラユラと蝋燭の火の様に小さく揺れる体。
その様子に『あぁ……。』と納得してその場で待機する。
リーフ様はたまにこういう睡眠中の様な状態になってしまい、その際は基本意識を取り戻すまで待つより方法がない。
それを知っている俺は傍らに立ち、ボンヤリと目覚めの時を待っていたのだが、細い方と太い方はお互い顔を見合わせ頷き合った。
「夢タイムだな?」
「夢タイムっすね〜。」
そうしてボソボソと言い合った後、『わぁぁぁ〜!』と何かに驚いたような大袈裟なリアクションを見せる。
「あ〜、今日は疲れたな〜!きっとリーフ様もさぞお疲れになった事だろう!」
「そうっすね〜!こりゃ〜、宿まで運んでくれる人がいたら、すっごく嬉しいと思うんすよね〜!!
気がついた時すぐ宿────なんて絶対『嬉しい!』って言うと思うっす〜!!」
────なるほど?
俺は独り言を言い続けるリーフ様を見て小さく頷き、ソッと優しく抱き上げると、さっさと前を歩いていった細い方と太い方の後についていった。
力なく全身を預けてくれるリーフ様は可愛い。
そのおかげで、あの紐の服の件や砂ネズミの件で沈んでいた気持ちもどんどんと上向きになっていく。
更には宿についた後も、俺の側を離れたがらずしがみついてきたため益々気分が良くなり、これで良かったのだとすら思う様になった。
ぬいぐるみが手に入っていたら、抱っこはできなかったかもしれない。
だから、これで良かった。
ホクホクと暖かくなった気持ちで、そのまま部屋まで運ぶと、いつの間にか女のメイドに抱っこされた細い方と太い方がベッドにソッと寝かされたので、俺も真似してリーフ様を開いているベッドに寝かす。
そしてそのまま眠る────……かと思いきや、下の絨毯の上に急に移動したりしてはしゃぐ姿を見せてきたり、青ざめながら夕食を食べる姿を見せてくれた。
そうしてその後、お腹が一杯になったせいかすっかり元気になったリーフ様を見ながらふっと思う。
なんだか色々あったが、やっぱり幸せ……なんだろうな、俺は────と。
沢山振り回されて、落ち着かない。
それに恐怖と類似した思いを感じるのと同時に幸せなんて……本当に不思議な事だと思う。
思わず笑みを漏らすと、突如リーフ様が何やらゴソゴソと準備を始めたのが目に入った。
「さぁ、いこいこ〜。」
ご機嫌でそう言うリーフ様の手には、タオルが何枚かと自分と俺のパンツや服などが抱えられていて……どうやらそれを持って、どこかへ出かけようとしている様だ。
「…………???」
何処に行くのだろう??
細い方と太い方は、部屋を出ていき二人きり。
なんとなくシーンとなった部屋に、気持ちは落ち着かず身体を細かく動かしていると、突然リーフ様がとんでもない事を言い放った。
「レオン君レオン君。ちょっとプライベート侵害になっちゃうけど、俺に全てを見せてくれないかい?
中を見るだけだから!痛いことは何もないから!」
「!!!?」
全てを見せる?
中を見るだけ??
痛いことは何もない???
前半の意味はなんとなく分かる。
以前紫のもじゃもじゃとの授業の際、同様の事を言われた事があったからだ。
中身……全て……つまりリーフ様は、俺の裸が見たいと言っている。
『先に進むため必要な事。』
『もう少し先に進んでから下着は脱ぐもの。』
あの時はこういった趣旨のことを言われて止められたが、今、その時がきたと────そういうことか……!
────ドッドッ……!!
喜びと緊張で、心臓は再び大きく鳴り出した。
リーフ様は一生俺の側にいてくれる……その約束をした今こそ、共に前に進もうとしている様だ。
勿論俺はそこが何処であろうとついていく。どこまでもどこまでも……!
「…………っ!」
覚悟が出来た俺は、何のためらいもなくバサッと上着を脱ぎ、ズボンを脱ぎ……そして下着も一気に脱いだ。
そしてリーフ様に視線を向けると、リーフ様は顔を隠してブツブツと呟いているのが確認できたので、俺はとりあえず脱いだ服を畳み、正座をして静かに待つ。
それから時間にして5分ほどだろうか?リーフ様は目元を覆っていた手を外し、俺をその視界に入れた。
俺は、その視線にドキドキしながら『その時』を待つ。
痛いことは無い……。
別に痛くても何でも構わないが、一体何をするのだろう?
そもそも裸になってする事とは?
ドキドキ……。
ドキドキ……。
とにかく落ち着かなくて、普段ピクリともしない心臓の心拍数は跳ね上がり、正常とはとても言えない状況下でチラチラとリーフ様の動向を伺っていると────リーフ様は、ふぅ……と悩ましげに息を吐いて俺に言った。
「レオン、お風呂に入る時は脱衣所っていう服を脱ぐ専用のスペースがあるんだよ。
そこで服を脱ぐんだ。分かったかな〜?」
「??えっ……???は、はい……??」
お風呂?なぜ今お風呂の話が……??
疑問が次々と浮かび上がったが、とりあえず戸惑いながらも返事を返すと、リーフ様は俺に服を着せてくれた。
『今』を測りかねたのか!
ガガ────ン!!!
大きなショックを受けたが、次に耳に入った言葉によりそのショックは、木っ端微塵に吹き飛んだ。
「よし、これでよろしい!じゃぁ、一緒にお風呂に行こうね。」




