227 黒……いや白か……
( リーフ )
「 …………。 」
────終わった.......全てが。
青ざめた顔色のまま、気分はズズーンと奈落の底まで落ちていった。
もうダメだ……。
レオンはこのまま< 強制力 >によってEDになる!
悲しみと後悔に嘆き、キュッと唇を噛み締めた。
砂ネズミ激似男に擦り付け、粗相をしてしまったなど、繊細な心を持つレオンに耐えられるわけがない。
ましてや現在など狂った神────もうダメだ……終わりだ……。
憧れのヒーローに、黒歴史ならぬ白歴史をべったりと塗ってしまった事に絶望し、ガタガタと震えながら様子を伺う。
「 …………。 」
「 …………? 」
すると、レオンは発射した余韻のせいか、まだうっとりとした表情をしていて、なんとそのままゆっくりと俺に顔を近づけてきた。
「 ────お? 」
おおお???
近づいてくる大層美しい顔を見つめながら、このままだと近い未来に大変な事が……。
────あれ、コレちょっとやばいぞ?
チューしちゃうぞ??
それに気づいて、ドバッと大量の汗が噴き出た。
レ、レオンの初めて貰っちゃう!!
初めてのチューは、お大事にっ!!
頭の中で叫びながら、無駄だと分かっていても必死に身体をひねり、顔を背けようとしたが────努力の甲斐無く、レオンの目、鼻、口が迫ってくる。
そして、そのお高い鼻が俺の控えめな鼻につく頃には──── ” も、もうダメだ──!! ” と観念して、目をギュッと閉じた。
その瞬間────……。
「 うわあぁぁぁ────!!!! 」
今まで聞いた中で、間違いなく一番と断言できるようなモルトの叫び声が聞こえて意識はそちらへ向く。
な、何だ!?
急いで目線だけモルトのいるであろうベッドの方へと向けた────が、角度的に全く見えない。
「 ふわぁぁぁ〜……。
なんすか〜もう……うるさいっすよ、スケコマシ……ん??
────ふっ!!へあぁぁぁぁぁぁ────!!!! 」
モルトに続いてニールの切羽詰まった声まで聞こえ、そのまま二人揃って半泣き状態で叫び始めた。
んん〜?虫??虫かい???
前世で夏、ちょくちょくお目にかかる嫌われ者の黒い虫……より更に大きい、この世界のアレを思い出し、俺は剣を置いた場所を思い出しながらスッと一旦目線を正面に戻す。
すると、バサバサまつ毛の可愛いお目々と目が合った。
その目は限界まで開かれ、初めて見たな〜と断言できる様な驚愕の表情をしていたので、こちらまでギョッ!としてしまう。
そして俺の頭の中は一瞬で宇宙空間へ " いってきま〜す " 状態に。
何とこんな状況にも関わらず、モルトとニールの悲鳴、そしてこの世界の黒い虫のせいでレオンの事が頭の中からすっぽぬけてしまっていたのだ!
「 ……えー……あー……レオンおはよう。
…………えっと、その……。
────あ、そういえば兎ってよく人間の足に粗相をするんだけど、レオンは知っているかな? 」
とりあえず衝撃を少しでも減らそうと、前世の孤児院で飼育していた兎たちの発情事情を話してみると、レオンは物凄い勢いとスピードでバッ!!と起き上がり、その勢いのままベッドの下へと落ちていった。
「 レオンッ!!? 」
────ドシーン!!
伸ばした手は虚しく届かず。
直ぐにレオンの受け身も取れずに倒れた音が聞こえて、慌ててベッドの下を覗けば────プルプル震えながら土下座するように縮こまっているレオンの姿があった。
とりあえず怪我はしてないようだ。
ホッと息を吐き出し、モルトとニールの方にも視線を向けると、二人は布団を被ってガタガタと震えている。
「 ば……ばかな……っ!
この俺が……こんなっ……!! 」
更にモルトに至っては、布団の中でひたすらブツブツ呟いていて凄く怖い。




