(レオン)217 なるほど……理解した
(レオン)
◇◇◇
「さぁさぁ!!波乱万丈の今年の〈ファイナル福人祭り〉!!
これから毎年恒例!!一番の大目玉!〈腕相撲大会〉が、はっじまっるぜ────!!!!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ────!!!」」」
そんな掛け声と共に始まった<腕相撲大会>。
ずらりと並ぶ参加者に、ザッと視線を走らせ不敵に笑う。
この全員を倒せば俺の勝ちだ。
気合を入れて試合開始の合図を待っていると、ふっとステージの上に石造りのシンプルな台座が置かれているのに気づき、はて??と首を傾げる。
そして次に、もう一度チラッと参加する男たちに目線を走らせると、武器を持っていないことが確認できた。
……剣は使わない??
増々疑問が深まる。
相手を倒して終わりではないということか……。
『ルールを守って楽しく!』
そんなリーフ様の言葉がぐるぐると頭の中を周りながら、ジッと変な髪型の男の説明に集中していると、ステージ上のあの台座を使って『腕相撲』をすると言った。
あの台座を使って???
頭の中をハテナで一杯にしながら……更に俺は今更ながらハッ!と気づく。
そもそも<腕相撲>とは??
てっきり相手を倒せば俺の勝ちと思っていたため、すっかり失念していた。
勿論後悔するも時既に遅し。
それが判明する前に名前を呼ばれてしまったため、仕方なくその謎の台座の前に立つと、やたら大きな男が台座を挟んだ前にスズーン!と立って俺を見下ろしてくる。
「オゥ!坊主、悪く思うなよ?俺は例えスライム相手でも全力で戦う男だ!」
……スライム?
……戦う???
大男の謎の言葉を聞き、直ぐに探知魔法の精度を極限まで上げてスライムの気配を探ったが、そんなものは欠片たりとも見つからない。
さらに謎が深まってしまった<腕相撲>大会に内心の焦りは増す。
凄まじい速度でそれについての知識を頭の中で探し、魔法の深淵とも言える理論へと到達したその時────男が台座に腕を乗せ、クイッと顎をしゃくった。
??????
サッパリ分からない行動にどうしたものかと考えていると、頭の中に突如白いドレスを着たリーフ様が現れる。
『レオンは一番強いな、かっこいいな!』
『頑張って勝って俺の事ゲットしてね〜!』
そう言いながら先程の可愛い踊りを披露してくれて、俺の中の闘志は、またしてもゴッ!と燃え上がった。
そしてその直後、俺は一度目を閉じスッと開け、静かに闘志を宿した目で前にいる男を見つめる。
これは戦闘と同じ。
相手の動きが分からない時は、まず『見る』事だ。
俺は目の前の男と全く同じ姿勢で腕を置き、そいつと手を合わせると、どうやらそれは正解であったようで、うるさい司会の男がすかさず叫んだ。
「レディ〜……────マッスル!!!」
そんな理解不能な言葉と共に試合が開始したが、やはり何をやるかは分からない。
さぁ、この後は……どうする?
ジッ!目の前の男を観察するも、男は先程から顔をグチャグチャと変えるだけで何もしてこない。
……顔を変えればいいのか??
────いや、しかし、それではこの台の意味とは……???
内心の焦りは頂点に達し、表情には出ずとも心の中で大量の汗を掻く。
分からない……これは本当に困った……。
本格的にどうすればよいかと悩んでいると「レオーン!!」と呼ぶ可愛いリーフ様の声が聞こえたので、そちらに顔を向けた。
「レオ────ン!!腕相撲はね、こうっ!こうやって、こう!!腕をそのまま倒すんだよ────!!」
ヒュンヒュン!と曲げた腕を倒す動作をしながら、リーフ様が言う。
その動きを見て、自分の腕を倒した先にある台座の存在を思い出し、俺は『なるほど……。』と頷いた。
これは肘をつけたまま台座を叩き合う勝負────つまり領地を奪い合う戦争の疑似戦だ。
相手側の台座が領地、自身の腕が領地を守る兵士。
つまり自分の兵士を使って相手側の領地を壊したほうが勝ち、それが<腕相撲>か!
俺は自身の腕を見下ろし、早速手を倒そうとしたその時────相手の男が慌てた様子で手を引っ込めてしまう。
敵前逃亡……領地を守る兵士は逃げた。
この勝負、俺の勝ちだ!
勝ちを確信した俺は、それを確実にするため、そのまま腕を倒し相手の領地を完膚なきまでに台を破壊してやった。
完全勝利────!
それを見届けた後、俺はチラチラっとリーフ様の方へ視線を向けると、リーフ様は『やっほ────い!!』と飛び上がって喜ぶ。
「相手が避けたぞ!レオンの勝ちだ────!!」
その嬉しそうな姿に、俺の気分は急上昇!
こんな事で、あんなに喜んでもらえるとは!
喜びを噛み締めながら、はっ!と気づいたが、どうやらこれから何度か同様に戦う様なので、その数だけ俺はリーフ様から頑張れと言って貰えるのでは?
それに気づくと、自然と笑みが溢れた。
今日の俺は、とても運が良い。
上機嫌で即されるままステージの後ろへと連れていかれ、そこで壊れた台座が撤去されていくのを見守った後、俺は次の出番を大人しく待つ。
しかし────そんな期待は見事に裏切られ、俺は決勝戦まで一度も戦えぬまま、決勝戦を迎えることとなった。




