201 コレじゃない……
( リーフ )
「 ジンさん、その衣装でこのポッポ鳥引き取らせて貰っていいかい? 」
「 えぇっ!!? 」
ジンさんは驚いた顔をして叫ぶ。
「 こ、こんな凶暴なポッポ鳥、やめておいた方がいいですよ!
ポッポ鳥が欲しいならポッポ鳥レンタルショップにご案内しま────……。 」
────ビュンッ!!
ジンさんがそう言いかけた瞬間、そのポッポ鳥が凄いスピードでジンさんの顔スレスレを蹴った。
風の音と共にジンさんのサイドの髪の毛がパラパラと地面に落ちると、ジンさんは一度目を瞑った後、ゆっくりと開く。
「 是非とも貰って下さい。リーフ様。 」
睨みつけてくるポッポ鳥のお尻をグイグイと押し、俺の方へと差し出した。
本日よりこのポッポ鳥は我がリーフファミリーの一員!
それが決定した為、俺とモルトとニールは一斉に「「「 いらっしゃーい! 」」」と言いながらバンザイをしたが、レオンは先程から凹んだまま今もぼんやりとしている。
大丈夫かな……?
一応気にはしながらも「 残りの料金はお渡しします! 」と叫ぶジンさん達に、丁重にお断りをして、後始末は冒険者の彼らに任せて別れを告げた。
そして宿へ向かおうとフラフラしてるレオンの手を握り歩き出そうとしたその時、今度は「 おーい!坊ちゃん達ぃ〜! 」という俺達を呼ぶ声がしたのでそちらを振り返る。
すると、あの司会者のソフトクリームおじさんが、包帯をぐるぐる巻いた姿でこちらへ走ってくるのが見えた。
その手には大きな箱を持っている。
「 へいへい!今日は坊ちゃん達のお陰で盛り上がったぜ!ありがとな!
大会がこんなになっちまって残念だったが、それ以上に久しぶりにおもいっきり暴れられて楽しかったからよ!
コレから街中で大宴会する事になったんだぜ! 」
「 そ、そうなんだ……。 」
逞しい!ウォッカの街の人達逞しすぎる〜!
とりあえず、笑顔で頷きながらそれを聞いてると、ソフトクリームおじさんが手に持つ木箱をレオンにグィッと押し付けた。
「 ほら、黒ずくめの兄ちゃん!コレ、優勝賞品だ。
トロフィーは悪いけど壊れちまったから、コレだけ持ってってくれよ。
じゃあ、また機会があったらウォッカの祭りに参加してくれよな!! 」
そして「 またな〜! 」と最後までテンション高く去っていったおじさんに俺達は手を振ってお別れした後、視線は木箱を貰ったレオンへ。
すると、凹んでたのはいつですか?というくらい物凄く上機嫌になっていた。
「 レオン、良かったね〜。欲しかったヤツちゃんと貰えて。
開けてつけてみたらどうだい? 」
レオンが装着してムズムズしたところで、変身の仕方を教えてあげよう。
そして俺は横でポケ〜と平和を謳歌しているモルトとニールにすぐさま襲いかかり、スマートに人質にして悪いボスになる!
めちゃくちゃ楽しそう!
ワクワクしながらレオンが木箱を開ける様子を眺めていたのだが、パカっと開けた瞬間レオンは固まった。
そして箱に入っているチャンピオンベルトをグイッと持ち上げ、その下を覗いたり、箱に仕掛けが……?と言わんばかりに、箱を下から横からジロジロ見る。
「 あの……これだけ……ですか?? 」
「 ??んん??他に何があるんだい?? 」
ちょっと言ってる意味が本当に分からなくて真剣に聞くと、レオンはまたしてもズズンと激しく凹んでしまった。
「 レオン、どうしたんだい?
ほら、レオンが欲しかったやつだよ〜。
カッコいいやつだよ〜。 」
「 ……これは別に欲しくなかったです。 」
そしてまたスンッと、いつもの無表情に戻るレオン。
もしかして隣の景品ブースと間違えてしまったのかもしれない。
レオンに新たな人格属性 " ドジっ子 " が追加された。
「 じゃあ、また今度また頑張ろうね。 」
残念だが仕方がないのでそれだけ伝えると、レオンは「 はい。 」と返事を返し、手に持つ木箱を俺に献上してくる。
「 全てはリーフ様に……。 」
そしてといつも通りの奴隷の常套句を言い始めてしまったので、とりあえずお礼を告げて素直に受け取った。
でも、俺も正直いらない。
なんてったって俺は還暦超えのおじさん……変身!をするにはトウが立ち過ぎている。
とうしたものか……と手に持つ木箱を見つめていると、ふっと新たなリーフファミリーになったポッポ鳥の首あたりが目に入る。
その首の直径とベルトの装着可動域を交互に見て測り、いけそうだと確信した俺は、そろ〜とポッポ鳥くんにそれを装着してみた。
すると────……。




