200 い〜れ〜て!
( リーフ )
「 珍しい品が賞品になってたのは、そういった理由からだったんだね。 」
納得して頷いていると、レイラさんは俺の前に置かれているトロフィーに視線を向けた。
「 リーフ様は、何の大会で優勝したんですか? 」
質問された俺は、待ってました!とばかりに、自身のバックから先ほど貰ったスケスケエッチな踊り子の衣装を取り出し、レイラさん達に広げて見せた。
目が点になる面々を前に、俺はドヤッとした顔を見せる。
「 俺、< ダンス大会 >で優勝しちゃったんだー!
これ、優勝賞品! 」
誇らしげにその衣装を高々と上げ見せびらかすと、何故かレイラさん達は、微妙に視線を逸らした。
「 へ……へぇ〜、す、すごいですね……。
その……人は見かけによらないというか……。
────あっ!!嫌味とかじゃないですからね!?
本当に良い意味で!ですからね!? 」
手をブンブン振って、焦ったようにそういうレイラさんに続き、ジンさんも同様の様子で口を開く。
「 まっ、まぁ……ほらっ!あれですよね?!
地味な女の子の方が、夜は凄い的なや────……。 」
────ドゴッっ!!!
物凄い音を立てて、シュリさんがジンさんの脇腹に肘打ちをし、悲鳴もなくジンさんが地面に崩れ落ちた。
「 ────えっ!?ジ、ジンさん大丈夫?! 」
言葉なく震えているジンさんに慌てて尋ねると、シュリさんはニコリと笑って「 大丈夫です。 」ときっぱり言い放つ。
そしてそれを見て、レイラさんは青ざめて口を両手で押さえたが、その中で唯一ヘリオさんだけが、じーっとスケスケエッチ衣装を見つめ、感心した様に唸った。
「 コレはエルフの国、レイティア産の最高級の布と糸が使われていますね。
それだけでも、かなりのお値打ち品ですよ。
コレを着て踊れば注目間違いなしです。 」
「 いやいや着ないよ〜。
だってこれ女性が着る服だしね。
こんなに布面積が少ないのに、そんな高い服だったんだ。 」
改めてマジマジと見ても、制作コストを極限まで減らした様にしか見えない衣装だ。
パンツの部分なんてほぼ紐なもんだから、俺の慎みやかなお象さんですら大人しくその場で待機できないぞ〜?
訝しげにそのスケスケ衣装を眺めていると、レオンも気にはなっているのか、チラッチラっと僅かに視線を感じた。
「 ??えっ?着ないんですか??でもダンス大会に────……。 」
何か言いかけたヘリオさんの口を、レイラさんが塞ぐ。
「 売ればかなり高額になるので、良かったらお薦めのお店案内しますよ〜? 」
レイラさんの提案を聞き、俺はどうすべきか考えだす。
「 売れば高額か〜……。 」
手元にあるスケスケ衣装をジッと見た後、良いことを思いついた俺は、お腹を抑えて座り込んでるジンさんにそれを差し出した。
ジンさんは、不思議そうに差し出されたスケスケ衣装を見ていたが、「 あげるよー。 」と言って無理やり衣装を握らせる。
「 なんかポッポ鳥を買い取ってお金無くなっちゃったって言ってたから、これを売るといいよ。
俺、どうせこの服着ないからちょうどいいや。 」
すると、ジンさん達は慌てて首を横に振った。
「 ダメですよ!これ一着でポッポ鳥10匹は買えますよ!
流石に貰えませんよ! 」
ブンブンと首を大きく振りながらソレを返そうとしてくるジンさんだったが、俺はそれを頑なに拒む。
俺も本当にいらない。
だって下着未満だし……。
押し問答している内にレオンがあり得ないほど凹んでいるのに気づき、不思議に思ったが────俺は、はっ!とある事に気づいた。
もしかしてレオン、着たかったんじゃない?コレ!
以前ドレスを着たがっていたレオン、可愛いものが大好きレオン……。
でも好きなのはキュートだけではなく、セクシーも……そういうこと??
探る様にレオンを見つめると、やはりショックを受けている様でジトッとした目でコチラを見てくる!
これはちょ〜っと配慮が足りなかったかな〜?
多少申し訳なさを感じたが、これをレオンが着たら……?と思い浮かべ、フルフルと首を横に振る。
多分下半身が、隠すものという概念を失くす。
よってこれは、今は手放すべきだと強く思った。
こういうのは成人後から!
ちょっとマニアックな性的趣向は、その時パートナーと楽しもう!
そうしてわいのわいの〜!と騒いでいる内に、突如あの凶暴なポッポ鳥が大きな音をたてて俺の背後に着地した。
「 ぎゃ────!!! 」
ジンさんはまたしても叫び声を上げ、スケスケ服をその場に落として後ろに後ずさる。
するとポッポ鳥はその落とした衣装をクチバシで拾い上げジンさんの顔にペーン!!とたたきつけた。
そして更に足元に付いていた飼い主の名前が書かれた足輪をふんっ!と引きちぎり、それもジンさんに投げつける。
「 クッピャピャピャッ! 」
キョトンとした顔でへたり込むジンさんに向かい、ポッポ鳥君は ” ざまあみろ! ” と言わんばかりに鳴き声を上げると、また俺とレオンの周りをグルグルと回り始めた。
「 クピョロロロロ〜♬ 」
更に今度はまるで歌う様に鳴き、お尻をフリフリと振っている。
「 ??何だ何だ?? 」
またしても謎行動をするポッポ鳥君に、俺達全員は一斉に首を傾げたが、その中でヘリオさんだけは驚いた顔をして話し始めた。
「 この動き……コレは群れをなくしてしまった個体が、他の群れに入れて欲しい時にする動きですね。
ポッポ鳥達は群れに対する思い入れが強く、自ら群れを抜ける事はしませんが……稀に天災に巻き込まれたり、天敵に襲われたりで群れが全滅してしまう事があります。
その場合は他の群に入れてもらうのですが、その時この動きで必死にアピールするんですよ。
" 仲間に入れてー " " 寂しいよー " って。
このことからコレは〈 ポッポ鳥の友達ダンス 〉とも呼ばれています。
でも、人間相手にコレをする事は無いはずなんですけど……? 」
ペラペラと説明を終えたヘリオさんは、訝しげな眼差しで踊るポッポ鳥君を睨みつけている。
ほぅほぅ、なるほど、なるほど。
つまり、アレだ。
このポッポ鳥くんは、俺とレオンを一つの群れだと思っていて、それに、「 い〜れ〜て! 」をしているということか。
やっとこの謎行動の意味が判明し、スッキリした。
いいよ、いいよー!
もしかしたら背中の乗せ心地的に何か通じるものがあったのかもしれないな、レオンと!




