183 頑張る若者
(リーフ)
「へぇ!そりゃ〜凄いね!ところで君たちは見たところとても若いようだけど、なぜそんな頑張るんだい?」
「あ────……実は私達4人、同郷の幼馴染なんですが、一度村が壊滅しかけたことがあって……。
私達がまだ準成人前だった頃、村にオーガの大群が押し寄せて来たんです。
物凄い大群でやってきたから、成すすべもなく殆どの村人が殺されていって────。
……直ぐに助けを呼んだんですけどね。本当に小さな村で、冒険者も傭兵もいない村だったからこんな絶望的な状況で、きっとだれも助けにこないだろうって諦めていました。
そしてとうとう私達4人もオーガに見つかり、食われる!と思った────その時!!!」
レイラさんはぐぐっと拳を強く握り締め、何かを堪えるように目を瞑る。
「颯爽と現れた一人のかっこいいお兄さんが、『早く逃げなさい!』って言って、オーガの大群をたった一人で倒してくれたんです!!
────もう、めちゃくちゃかっこよかった〜!!!それに憧れた私達は戦闘職につくことに決めて、助けてくれたその恩人の様になりたくて親認定試験も直ぐに取りました。
ジンなんて、その人の真似して髪をずっと同じ短髪にしてるんですよ〜。
〈オーガ落としのアントン〉っていう、今は伝説となっている元Sランク傭兵ですけど、皆さんは知っていますか?」
レイラさんの熱弁に、ジンさん達3人も力強く頷き同意する。
集団のオーガを一人で討伐するなんてそうとうの実力者、かつたった一人で駆けつけるなど性格も凄く良い人に違いない。
我がリーフ邸で働いてくれているアントンと同じ名前でそんな凄い人がいたとは……。
いつか会ってみたいものだと思いながら、『ん?』と素朴な疑問が浮かんだのでレイラさんに質問する。
「そのアントンさんが傭兵だったんなら、なぜ傭兵じゃなくて冒険者になったんだい?」
何気なく聞いただけの軽い質問のつもりだったのだが、レイラを始めとする他の3人は、まるでお葬式の様な雰囲気で死んだ魚の目になった。
まずいこと聞いちゃった?
レイラさん達を見回しながらオロオロとしていると、はっ!とそれに気づいたレイラさんが、頭に手を当て気まずそうに謝ってくる。
「あ〜……ホントたいしたことじゃないんですよ!ただちょっと……まぁ、色々合わなかったんですよ。傭兵は。
憧れの人が傭兵だったので最初は傭兵を目指したのですが、色々あって……。
途中親切な先輩冒険者に助けて貰って、今は冒険者として活動しています。」
傭兵はランクがFランクからしかない事から分かるように、最初から即戦力を前提としている。
つまり冒険者ギルドの様に教育プログラム的なものはなく、初めての戦闘職としてはかなり敷居は高く、そのせいか気の荒い人もいると思われるため、恐らくはそれが合わなかったのかもしれない。
まぁ、今は自分たちに合う職場に出会えて楽しく働けているなら良かった。
「そうなんだ。まぁ、仕事は相性もあるからね。」
「そうですね。収入としてはやっぱり傭兵の時の方が突き抜けていましたが、こればかりは合う合わないですから仕方ありません。
私達はこのまま冒険者として人々を助けつつ、目標の金額のお金を貯めることを目標に頑張るつもりです。」
「いい職場に出会えて何よりだよ。うんうん。
ちなみに目標の金額って、何か皆で買いたいものでもあるの?」
4人で買うとなればそれなりに高額なものなのでは?
純粋な興味で聞いてみたのだが、レイラはちょっと照れくさそうにポリポリと頭を掻きながらそれに答える。
「実はうちの村、近くの川まで1時間くらいかかるので、その途中モンスターに襲われる人が多いんです。
だから村に川の水を引っ張ってこれる魔道具を買いたいんですよ。村の皆にはお世話になったから恩返しがしたくて……。」
その話を聞いた瞬間、親世代────を通り越したジジ世代の俺は、ブワッと感動して泣いてしまった。
な、な、なんて良い若者達なんだ!おじさんはまたしても感激した!
歳をとると涙腺弱々になるんだから、不意打ちは辞めて欲しい。
滲む涙を慌てて手で隠し天を見上げていると、ジンさんが解体を終え麻袋に入った対象の<瘴核>を俺に渡してくれる。
「ゴブリン総勢30匹にゴブリン・キングが1体でした。
ギルドならどこでも正規の値段で買い取ってくれるので、お暇な時にどうぞ。」
俺はジンさん達にお礼を告げそれをありがたく受け取ると、それを見届けてヘリオさんがゴブリンの死骸を燃やし、シュリさんが他のメンバー達に洗浄魔法を掛ける。
<洗浄魔法>
生活魔法の一種で魔力と魔力操作がある一定以上あれば使える。
俺は受け取った麻袋をジッと見下ろし、また馬を睨みつけているレオンを呼ぶと、何々〜?と言わんばかりに直ぐにこちらにやってきたレオンの耳に顔を近づける。
固まってしまったレオンに気づかず、俺はボソボソと内緒話をするように質問した。
「これレオンが倒してくれたやつなんだけど、彼らにあげていい?
これから護衛として街まで案内してくれるみたいだから。」
俺がそう言い終わって顔を離すと、レオンはキュムっとくすぐったそうに目を閉じ、真っ赤な顔で『勿論そうするべきだ!』と主張するように首を縦に振った。
おや?おやおやおや〜??
これちょっとあれなんじゃないの〜?ちょっと彼らの話に感動して、俺もそうしようと思ってました的なやつじゃないの〜??
ニンマリしながら『エイエイっ!』と心の中でレオンの体をつつく。
これは良い傾向!レオンの心は成長している!
そうと決まれば……と、俺はレオンに麻袋を両手で持たせると、ささっとその背に回り込みそのままジンさん達に向かって声を掛けた。
「ジンさん!レオンがこれあげたいんだって〜!護衛よろしくって言ってるよ〜!」
そこで後ろからレオンの手を持ち麻袋を前に突き出すと、レオンは人形の様にそのまま動く。
それを見てジンさんは、えっ!!と驚いた顔で、レオンと麻袋を見た。
「いやいや、受け取れないですよ!どうせ帰るついでですし……それにこれだけあればざっと見積もっても護衛依頼50回分くらいありますよ?」
俺は恥ずかしくて固まるレオンの代わりに、それに答える。
「色々教えて貰ったし、瘴核の回収までしてくれたからね。正当な報酬さ。
もし気になるようだったら余った分を、君たちの村に寄付してくれないかな?
早く目的の魔道具が買えるといいね。────ってレオンが言ってるよ〜。」
ジンさん達は、ぱぁぁぁ〜と表情を明るくし、「「「「ありがとうございます!!」」」」と一斉にお礼を述べた。
俺はうんうんと満足そうに微笑みレオンの顔を覗き込むと、善行を行った達成感からか、機嫌がすこぶるよくなった様で雰囲気がほっこりとしている。
それにも良かったな〜思いながら、これからウォッカまでジンさん達が案内、兼護衛をしてくれる事になったので、とりあえず女性であるレイラさんとシュリさんに馬車に乗ってもらい、俺とレオンは訓練がてら走ると提案したところ、真っ青な顔でジンさん達は首を横に振った。
「どこの世界にお貴族様を走らせて馬車にのる護衛がいるんですか!?
俺達には専用の乗り物があるので大丈夫ですよ。」
ジンさんがそう言ってピュイィィ〜!と口笛を吹くと、脇道の茂みから、何か大きなものが4つ飛び出した。




