表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第五章(ウォッカ編、試験前日、冒険者との出会いとレオンの成長と勘違いと)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/881

178 初めての馬車

(リーフ)


カラカラ〜〜……。

パッパカパッパカ────……。


馬車の車輪の音と馬の蹄の音が、一定のリズムで耳の中へと入ってくる。


まるで子守唄みたいだな……。

そう思いながら、俺は生まれて初めて馬車というモノに乗り、外の景色を見つめていた。


本来馬車というものはガタガタと揺れ、初めて乗る際は酔ったりすることもあるそうだが、現在、俺、モルト、ニール、そしてレオンの4人が乗っている馬車は、そんな攻撃的な揺れは一切感じない。


「流石は超高級馬車。」


ボソッと呟いた後、俺は外の景色に向けていた視線を自分の前の座席へと移した。

するとそにには、モルトとニールが座っていて、本を読んだり外の景色を楽しんだりと……最初のお祭りムードはとっくに過ぎ去り、随分前からまったりタイムに突入している。


明日はとうとう中学院<ライトノア学院>の入学院試験。

そのため俺達は、その学院がある【グリモア】という巨大都市へ馬車に乗って向かっているのだが、なんと俺たちの住む【レガーノ】からは、普通の馬車なら2日以上、<強化馬車>を使っても半日は掛かるほどの距離があった。


< 強化馬車 >

馬車専用スキルを持った御者さんが運転する特別な馬車。

その実力により幅があるが、概ね半分以上の時間を短縮することが可能。


つまり、試験に間に合うには前日の早朝……今日の朝早くから、強化馬車に乗らなければならず、かれこれ二時間以上、こうして馬車に乗って時間を持て余してるというわけだ。


「強化馬車の乗り心地は最高なんだけどね〜。」


クワァ〜!と思わず大きな欠伸をしながら、これからの予定を考えた。


この後は【グリモア】の近くにある街【ウォッカ】に一泊してから、明日の試験を受ける予定で、今の所順調な旅路であるのだが────実はこの馬車、出発時間から既に一時間程遅れている。

それは何故かというと────……。


「…………。」


俺は後方で、本日もしっかりと『椅子』の役目を果たしているレオンの方をチラッと見た。


レオンは清々しい程いつもどおり。

違いといえば試験を受ける用に仕立てたいつもより短めの黒いNEWマントを羽織っている事と、左手に真っ黒な手袋をはめているくらいだ。


カルパス曰く実技の試験の際、あまり長いマントだと不正疑惑を掛けられる可能性もあるのだとか……。

そのためレオンのマントは上半身くらいまでの丈にし、動くことを重視したセンター分け。

それをお高そうなブローチで、それを留めている。

勿論顔をスッポリと覆ってくれるフード付きで、それを被ればお顔は見えない仕様となっております。


「フフッ……。」


大満足な仕上がりっぷりについ笑いを漏らし、その後はそれを用意してくれたカルパスに向かって南無南無と拝んでおいた。


これなら試験はばっちりだ。

カルパスいつもありがとう!


俺と目が合うとニコリと控えめに笑うレオンに笑顔を返すと、次に出発前に起こった出来事を思い出す。


俺とレオン、そして同じ中学院を受けるモルト、ニールの4名は、カルパスがレンタルしてくれた貴族用の────しかも高位貴族しか借りるとこに出来ない、超高級強化馬車を家の前で今か今かと待っていた。


馬車など乗ったことはおろか、見るのも初めてな俺のテンションはマックス。

モルトとニールは高位貴族しか乗れない高級馬車というものにテンションもりもり。

俺たち三人は朝日も昇らぬうちから、イエ〜イ!と興奮そのままに叫びあっていた。

そんな俺たちを、お見送りのカルパス達従業員一同微笑ましい笑みを浮かべ見ていたが、その中でレオンは清々しいほど普通だった。


どうやら、馬車というものにピンときていない様子。

確かに聞くだけでは、想像力がもやしのレオンにその凄さが伝わらないと思う。

しか〜し!


俺はぼんやり立っているレオンの周りをぐるぐる回って悪い顔で笑う。


実際目の前に現れれば、さすがのレオンも感動するんじゃな〜い?


いたずらを仕掛ける子供のような気持ちでニヤニヤしていたその時────車輪と蹄の規則正しい音を立て、とうとう待ちに待った馬車が来た。


「おおおお〜っ!」


興奮している俺の目にまず飛び込んできたのは、引き締まった立派な体格を持つ、それはそれは美しい白い馬が二頭。

そしてそんな二頭が引っ張ってくるのは、キラッキラの宝石がふんだんに使われたデザインの白を基調とした大きな馬車だ。

その時点で、俺、モルト、ニールは同時に歓声を上げた。


とにかく凄い!の一言しか出ない見事な馬車!

それを前に俺達三人は、カルパスに『ありがとう!』と何度も言って、馬車を拍手で迎える。

そして、降りてきて頭を下げる御者さんに挨拶をした後、馬車の周りをぐるぐると回転寿司の様に回りながらその外観を思う存分眺めていた。


「こんなに凄い馬車の中は、どうなってるんだろ〜?」


外観を好きなだけ眺めた後は、内装に興味が湧いたため、扉を開き中を覗く。

するとそこには、足が伸ばせる位の十分な広さと『何だこれ!!』と叫びたくなるほどフッカフカの座席があった。

更に対面している座席の中央には、細長い仕切りにも見えるテーブルが設置されていたので、これにも大興奮!


これは前世でいうと、リムジンってやつだ!

まさか孤児院の所有するワゴン車しか乗ったことのない俺が、お金持ちの象徴リムジンに乗れる日がくるとは……。


とにかく嬉しくて、うひょ〜い!と飛び上がって喜んでいると、その間にカルパスとイザベルはパパッと荷物を運び入れてくれて、アントンは道中食べられるようにと沢山のお弁当を、そしてクランはリラックス効果のある匂い袋を馬車に取り付けてくれた。


おっと!浮かれすぎたか……!


我に返って、慌てて俺も残された荷物を馬車へと運び入れる。


「これは道中飲んで下さいね〜!」


荷物の運び入れが終了すると、ジェーンがお茶を沢山渡してくれたので、それを喜んで受け取った。


「皆、ありがと〜!!」


こんな朝早くから集合して、お手伝いしてもらって嬉しい!

感謝の言葉を口にすると、視界の端でレオンが馬を舐め回す様に見ていることに気付く。。


「…………?」


モルトとニールも同じく皆にお礼をしているのを横目に、俺はそんな不思議な行動をしているレオンを見て……直ぐにピンときた。


レオンは、馬を見るのも初めてなのでは……?


少なくとも、俺もこの世界に転生してから初めてだったので、恐らくそれで当たりなはず。

だからその姿を初めて見て驚いているのかもしれない!


「初めて動物園に連れて行ってもらった子供の様な感じか〜。」


人間以外の動物を初めて見た時の感動と驚き……。

その衝撃を思い出し、思わず微笑ましい気持ちでレオンを見ていたのだが、なぜかその直後、酷く不機嫌な様子で俺の方へと戻ってきた。


突然不機嫌になってしまったレオンに気づいた俺をはじめとする、モルトやニール、カルパス達も何事かと注目する中、レオンはムスッとしながら馬を指差す。


「俺の方が早いです。」


俺以外の面々は押し黙ったが、俺はレオンが面白い冗談を言ったのかと思ったのでプ──ッと吹き出した。


「そうだね!レオンのほうが早いね〜!」


レオンも冗談を言えるほど感性が成長したんだな〜。

そう考えてほんわかしていると、レオンはパァ〜!と目を輝かせ、嬉しそうに頷いた。


「はい、お任せ下さい!あんなヤツよりも、俺がもっと早くリーフ様を目的地にお送りします。」


そう言い放つと、レオンはスタスタと馬の方へと近づき馬から馬車を切り離そうとしたので、俺は直ぐにそんなレオンの背にポポーン!と飛び乗る。

そして、子泣きじじいの様に引っ付いたまま羽交い締めにして、必死にその行動を止めた。


「なっ、なにやってるんだい!レオン、もう冗談はいいから!────ね?」


「冗談??何がですか??」


────あ、これ本気だ。


レオンの嘘偽りの一切ない曇りなき眼を見て、俺は悟る


レオンは、この馬車を馬の代りに引っ張っていくつもりだ!!


俺の脳内で馬の代わりに馬車を引くレオンがパッと思い浮かび、思わず吹き出しそうになったが、必死に我慢する。


なんたってレオンは真剣……。

そんな真面目で一途な思いを笑い転げるなど言語道断!そんな非道な事は断じて出来ない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ