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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第四章(メルンブルク家の様子、大樹の過去と結婚式について、リーフ邸襲撃事件)

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176/881

(ランド)166 VSランド

(ランド)


◇◇◇◇

「おやおや、お硬い執事様かと思っていましたが……ワンナイトがご希望とは意外でしたよ。

しかも、これから自分を殺すであろう相手に丁寧な挨拶までするとは、流石は公爵家の執事様、まさに執事の鏡ですね。」


公爵令息専属執事<カルパス>


こいつの資質は【影従士】という、諜報に秀でた中級資質だったはず。

中級資質と言われれば、本来は警戒が必要であるが────そうは言っても、その能力はピンキリだ。

特に強力ではないが、何かに特別に秀でているとか……ただ単に珍しいだけという、役に立たないハズレ資質もこの世界には多く存在している。

【影従士】は、まさにそんな資質の一つであった。


私の言った言葉に対し気を悪くする様子もなく、執事はまるでお手本の様な礼をしニコリと笑う。


「お褒め頂きありがとうございます。この度はせっかくのご訪問ですが……リーフ様はご就寝ですので、ご退場願いますね?」


────パチンっ。


カルパスが指を弾くと、その足元にある影から大量の< 夜人蝶 >が飛び出して来た。



< 夜人蝶 >

体長10cmほどの蝶形Fランクモンスター。

夜行性でその鱗粉に毒を持つ。

蝶の羽が人の顔に見えるのが特徴。



「!!!毒を持つ蝶です!!皆さん、例のものを装着してください。」


私は直ぐに懐から指輪を取り出し指に装着すると、他の仲間達も全員同じ指輪を指に嵌める。



< 耐状リング >

一定期間状態異常攻撃に耐性を持つことができる。



「ふっふっふ、あなたの事は調査済みです。

非力な資質を持つ者は、総じてデバフ特化になりますからね。

これであなたの攻撃は全て封じましたよ?」


カルパスは、そんな絶体絶命の状況にも関わらず、表情一つ変えずにただ穏やかに笑っていた。

それにイラッとした気持ちが湧き上がる。


「……ムカつきますね、その余裕そうな顔。まぁ、内心焦っているのでしょうけど。

────ふ〜む……よく見れば、貴方、多少歳はいっていますが綺麗な顔をしていますね。

顔だけは圧縮して、残しといてあげましょう。」


周りの仲間達は、ニヤニヤしながら各々武器を構える。


こちらは戦闘系資質持ちの傭兵が数十人。

攻撃手段を持たず、更にはデバフが封じられた非戦闘系資質の者など相手にもなるはずがないと、余裕の笑みを浮かべた。


「おい、誰から行く?」


「へへっ、あのお澄まし顔、ぐちゃぐちゃにしてぇな。」


仲間達は、下卑た笑いを浮かべながら談笑まで始めていたので、私はしっかりと釘を刺す。


「顔だけは傷つけないで下さいね?後はお好きにどうぞ。」


そう言い聞かせると、待ち切れない様子だった一人の仲間の男が勢いよく飛び出した。


「ひゃっほ────!!!一番のりぃぃぃ────!!!」


そう叫びながら彼は、両手に持つハンマーを執事の顔めがけて思い切り振り下ろす。


バシィィ────ン!!!


すると、轟音と共に激しい爆風が巻き起こり、視界はゼロに。

こちらに飛んでくる沢山の細かい砂ホコリを避けるため片腕で顔を覆い、原因を作った仲間の背を睨みつけた。


「ちょっと……っ!顔は傷つけるなっていったじゃないですか!

────まったく……『待て』も出来ないなんて犬以下です!

あ〜……綺麗な顔がぐちゃぐちゃじゃないですかっ!」


徐々にはっきりしてくる視界の中、ブツブツと恨み節をぶつけていると、視界が晴れてきたのと同時にある違和感に気づく。

       

仲間の男の体が()()()()()……?


「……はっ??」


見間違えかと思い、ゴシゴシと目を擦るが……その光景に変わりはなかった。


「????」


疑問を持ちながら注視している私の前で、宙に浮かぶその男の両手がブランと力なく垂れると、握っていたハンマーが重力に逆らうことなく落下する。


────ゴトッ……!


大きな落下音が聞こえてハンマーが地面につくと、それが合図だったかのように、仲間の体はグラリと横にずれて、そのまま地面に崩れ落ちた。


「────なっ……っ!!」


そうして仲間が地に伏せた瞬間、姿を現したのは、腕を振り上げた状態で立っているカルパスで……その光景に私は息を飲む。


一体何が起きたのか?

その場の誰もが分からず呆然としていると、カルパスはパンパンと汚いものでも触ったかのように手を払った。


「やれやれ、たった一発腹部を殴った程度で気絶するとは……。明らかに鍛錬不足ですね。

こんな、ゴミクズのような実力で私に挑むおつもりかな?

戦闘資質を持っていても努力なしではただのゴミ……名匠が打った伝説の剣も、ゴミには使えません。

まぁ、それを理解できる方はここにはいないでしょうが。」


────カッ!!


心底見下した様な言い方に腹が立ち、カルパスを睨みつける。

勿論それは私だけではなく、仲間たち全員が同じ気持ちだったようで────前衛担当の4人がカルパスに向かって飛び出し、一斉攻撃を繰り出した。


「非戦闘系資質の弱者が、調子に乗るからこうなるんですよ。」


ハッと鼻で笑うと、直ぐに見れるであろうカルパスの無様な姿を思い浮かべた────が……?

カルパスは気がつけばその場におらず、攻撃した仲間たちは、空を斬った武器をキョトンと見つめてから慌てて周囲を探す。


「ど、どこに行きやがった!!?」


「クソっ!!幻覚かなんかか?!」


焦る仲間たちがそう叫んだ瞬間、また気がつけばカルパスが突然現れた。


仲間の一人の背後に。


「────へ??」


間抜けな声を発しながら、背後にいるカルパスの方を振り向いた仲間の男。

そんな仲間と目が合うと、カルパスはニコッと笑みを浮かべ、目にも留まらぬスピードで顎を蹴りあげた。


「────ぎっ……っ!!」


悲鳴もあげられず、蹴られた仲間は白目を向いてその場に崩れ落ちる。

すると、それに気づいた別の仲間達がまた一斉に攻撃を繰り出す────……が、カルパスはまた消え、今度は攻撃してきた仲間の一人の頭を鷲掴みにし、そのまま自身の膝にそいつの顔を叩きつけ顔を潰した。


「ゲェッ!!!」


「……ヒッ!!」


そして顔を潰された仲間が倒れると、その隣にいた別の仲間は後ろへ一旦下がろうとしたのだが……カルパスは軽くソイツの足を払いバランスを崩す。


「あ……っ!!」


なんとか踏ん張ろうとしたのだが、そんな仲間を嘲笑うかの様に、カルパスは容赦ない拳を顔に叩き込み、その身を地面に沈めた。


「…………。」


シーン……。


特攻した四人のうち三人が一瞬で倒され、立っているのはたった一人。

その仲間は明らかに狼狽え、後退りをするも……あっという間に距離を詰められ、顎にストレートをくらって沈黙してしまった。


まさに瞬きする暇もない、一瞬の出来事!


「……っ?!!」


残された私と、残りの仲間達は一瞬で笑いを引っ込め、一気に警戒モードに突入した。


「……一体何のスキルを使ったのですか?

【影従士】如きが、戦闘職の資質をもった前衛職を一撃で倒せるほどの実力があるはずがない。

まさか、まだ未発見のユニークスキル……!」


「いいえ?ただ純粋に殴りつけただけですよ。

真の強さとは己の肉体、精神力によって引き出されますので……それをもたない弱者がいくら強力なスキルを使ったとしても何の役にもたちません。

まさに『昼間のキラリマッシュ』ですね。」



< 昼間のキラリマッシュ >

キラキラ光る笠をもつキラリマッシュは夜には重宝されるが、昼間は全く役に立たないことから、持っていても役に立たないものを比喩することわざ。



「────は?」


────この私が弱者?


その言葉を聞いた瞬間────私の心にドス黒い怒りが生まれる。


『弱いモノはこの世界のいらぬもの。』

『だから好きに扱っていい。』


それがこの世の『正しき』である!


カルパスは私の『正しき』世界を害そうとする『間違った』存在で、いわば『悪』の存在そのものだ。

今すぐにでも断罪しなければならない存在であると強く確信し、私は殺意を隠さぬ目でカルパスを睨み付けた。


「何のスキルを使ったのか知りませんが、油断していた仲間たちを倒したからっていい気にならないことです。

こちらはたった今、戦闘態勢に入りましたからもうあんなまぐれは二度と起きませんよ。」


「ですからスキルは使って攻撃などしていないと先ほど申し上げているのに……。

情報を得るための耳か、その情報を理解する脳に重大な欠陥があるのでしょうね。

その能力がもしあったなら、今頃は穏やかな世界で幸せに暮らせていたでしょうに……残念でしたね?」


ブチブチブチ────!!!

大きな音をたてて、自身の額の血管が切れるのを感じた。


私の世界を馬鹿にされた!!!否定された!!!

こんなクソみたいなゴミ資質野郎に私の『正しき』世界は侮辱されたのだ!!!



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