(アントン)164 アントンとクランの会話
(アントン)
「ふふっ、アントンさん、この方たちをわざと逃してここに連れてきてくれたんですか?ありがとうございます。
────う〜ん……やっぱり毒耐性持ち用に、もっと強い毒を作ろうかと思っているんですけど、そうすると弱い方は即死してしまうんですよね。
あとは、色々な毒の複合種の子たちも生まれるといいな〜。」
「ハハッ……そうだな……。」
穏やかそうに話す様子は、とてもじゃないがこの場にふさわしいモノと思えない。
汗をタラッ…… と垂らしながら、そこらじゅうに咲いている赤い花へと視線を向けた。
地面に咲く赤い花たちは、クランいわくプリンセスという名らしいが、そいつらは自身の花びらをまるで手足の様に動かし、倒れている傭兵達をえっほえっほと運んでいく。
花……??
遠い目をしながらその花には見えない動きを見守りつつ、その後その花達以外にふっと視線を向けた。
すると、先ほどの攻撃により派手に散った赤が、ぐっしょりとその花弁を濡らしている姿が見えて、困った様に頭を掻く。
「花、悪かったでさぁ。血で汚しちまって……。」
「いいえ?むしろいいご飯になるので大丈夫ですよ。
それよりも……────あぁ、今日は大量ですね!嬉しいです。
生きている人間を苗床にすると、それはそれは素晴らしい毒花が咲くんですよ〜。
特にその人が悪人であればあるだけ花たちにとってはご馳走みたいです。
なんででしょうね?花たちの反応からするに、この人達はそうとう悪さをしてきた方達のようですので、最後はプリンセス達の子供を産む良きお母さんになって、罪を償ってもらいましょう。」
プリンセスが産むんじゃないのか……。
そんなツッコミは、ぐっと喉の奥で止めておく。
クランは普段は、どちらかと言えば無口の青年なのだが、こうして花の事になると非常に滑舌で残忍な性格になるのを知っていたからだ。
「う……うぅ……。」
「た……たす……け……。」
運ばれていく傭兵達は意識はあるようで、恐怖に顔色を真っ青にしているが、それを見送る俺の顔色も、少なくともいつもよりは悪いと分かっている。
しかし、それを笑顔で見つめるクランは本当に幸せそうだ。
多分これは、このクランという青年が持っていた元々の気質なのだろうと思う。
『もしも』の未来の話で、クランがここに庭師として現れなかったら?
そう考えると背筋が凍る。
自身を受け入れてくれない世界に対し、人は酷く攻撃的になる事を傭兵をやってきた経験上よく知っている。
何があったのかは知らないが、クランの運命は『そこ』で別れたのだろうなと思う。
勿論俺も────ここに雇ってもらえなかったらそうなっていたのかもしれない。
俺はふっと短く笑いながらも以前クランに見せてもらった『愛の巣』という非常に気分が悪くなる部屋を思い出し、うぷっと吐きそうになった。
「……俺はあんたを仲間としては好きだが、仲良くなれる気がしねぇでさぁ。」
「アントンさん、知ってます?悪人でなくても筋肉量が多い方は、それはそれは立派なお花が咲くんですよ。なぜでしょうね?」
無邪気に笑うクランに、俺はゾゾォォォォ────と背筋が凍りつき、そのまましっかりと口を閉じた。




