(アントン)163 アントンの戦闘開始
(アントン)
◇◇◇◇
────ユラ……。
俺の体から立ち上る白い闘気に、侵入者の傭兵達は目を見開き、震え始めた。
これは生まれつき俺の体内を巡っているもので、日常生活の時は見えない様に体の中に抑え込んでいる。
<闘戦士の資質>(先天スキル)
< 白の闘志 >
生まれつき『闘気』という特殊な潜在オーラを持ち、身体能力に大幅な伸びしろと(極)UPの恩恵を得る。
「じょ、冗談じゃねえ!!楽な仕事だって聞いてたのに元Sランク相手なんざ聞いてねえよ!!とっととずらかるぞ!!」
「そ、そんなこと言ったって後ろにはドノバンの野郎がいるだろうが!!どっちみち逃げ道がねえよ!!」
怒号飛び交うおしゃべりタイムに、俺はくわ〜とあくびをすると、なにやら通信魔道具をつかって作戦を立てたようで、急に全員で武器を構えてこちらを睨みつける。
おおかた、『元第二騎士団団長よりは前線を退いて長い俺のほうが隙をつけるはず!』……とでも思ったんだろう。
その後は全員で一斉に攻撃し、何人かは屋敷の敷地内へ侵入、そして非戦闘員の誰かを人質にしてずらかろうって所だろうが……。
残念ながら、中に入っても非戦闘員はいないんだがな。
一人、また一人と反応が弱くなっていく侵入者達の魔力反応も同時にキャッチし、ゾワッと背筋を凍らせていると、一人の傭兵の男が後ろの腰ポーチから何かを取り出し、地面に叩きつけた。
するとブワッと周囲に広がったのは、赤色の煙……これは魔道具<赤煙玉>の様だ。
< 赤煙玉 >
ビー玉位の大きさで地面に叩きつけることで作動する魔道具。
魔力、気配察知を遮断する赤色の煙が出て敵の目くらましをする。
完全に赤い煙に包まれた瞬間、動き始めた傭兵達に向かい、俺は一応の親切心で言った。
「悪いこと言わねえから、ここにいた方がい────……。」
────ぞ?と言い終わる前に、傭兵達は全力疾走で屋敷の方へ走っていってしまう。
「…………。」
こちらとしても手間が省けていいが……ここで死んだ方が楽に死ねただろうにな。
憐れみの気持ちを持ちながら、ヒシヒシと感じる嫌な予感に後ろを引かれる。
しかし、行かないわけには行かないので、とりあえず地獄へと自ら向かった傭兵達を追っていった。
すると、入ってすぐにジェーンのスキル発動を察知しながら、まるで『ようこそ!』とばかりに勝手に開いていく道を歩き、やがて真っ赤な花が咲き乱れるエリアにたどり着く。
地面に咲く赤い花たちは、まるで俺のことを好みじゃないのと毛嫌いするようにササーッといなくなり、代りに今しがたここへ現れた傭兵たちには、興味津々とばかりに近づこうとしているのが見えた。
「あ……あ……。」
「な……なんだなんだよ……こ、コレは……っ。」
傭兵たちは、近づく赤い花達に気づかず、ただ前に広がる景色を凝視して固まっている。
気持ちは理解したため、ため息をつきながら傭兵達が凝視しているモノへ、俺も視線を向けた。
手足をじわじわと溶かされ、苦痛に叫ぶ姿。
そしてそんな仲間の傭兵達を見ながら、ニコニコと幸せそうに笑う男、クラン。
あまりにもチグハグな光景に、目を何度か擦ってしまいそうだ。
「…………。」
さて、どうするか……。
そんな光景を見つめながら冷静に考えていると、傭兵たちが一人、また一人と俺の方に向かって走って戻ってくる。
そしてそのうちの一人が剣を抜き、その体から魔力を一気に開放した。
「こっ、こんなところにいられるかぁ────!!!どけぇぇぇぇぇ────!!!!」
叫びながら剣を引くと、その剣身は白く光りだし────更にそれを横に振ると、空気を圧縮した刃の様な衝撃波が俺の方へ飛んでくる。
<剣士の資質>(ノーマルスキル)
< 気圧斬り >
風を圧縮させて相手を切り裂く攻撃系スキル。
自身の攻撃、スピードの値によってその威力は上がる。
(発現条件)
一定以上のスピード、攻撃力を持つ事。
一定回数以上剣の素振りをする事。
「 やれやれ……。 」
ため息をつきながら襲い来る衝撃波を、抜いた包丁で簡単にスパンっと斬ってやると、そのまま包丁を大きく後ろに引いた。
そしてスキルを発動すると、包丁は眩しい程の白い光に包まれる。
「自業自得だ、恨まねえでくれよ。」
ニヤッと笑いながら、先程攻撃してきた傭兵と同様に包丁を横に振り切ると、風の衝撃波が出現し傭兵達を襲った。
<闘戦士の資質>(ノーマルスキル)
< 気圧斬り(強) >
風を圧縮させて相手を切り裂く攻撃系スキル。
自身の攻撃、スピードの値によってその威力は上がる。
(発現条件)
一定以上のスピード、攻撃力を持つ事。
一定回数以上剣の素振りをする事。
剣を武器にする者なら、大体は使えるこのスキル。
一応、一番威力が低いため使ったのだが……それが直撃する前に、スキルを打ってきた男は風圧に負けて一瞬で弾けとんでしまう。
更にその周辺にいた残りの傭兵たちも各々吹き飛び、地面に叩きつけられ、全員が気絶してしまった。
「…………。」
あまりにアッサリと倒せてしまい、驚きながら傭兵たちを見回す。
すると全員が沈黙したその場で、弾けてしまった傭兵の男を生かしていた赤い水が、その場に咲いている花たちに、まるでシャワーの様に一気に降り注いだ。
<傭兵の男 VS アントン>
アントンの完全勝利




