表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第四章(メルンブルク家の様子、大樹の過去と結婚式について、リーフ邸襲撃事件)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

167/881

(ジェーン)157 VS傭兵達

(ジェーン)


私は現在公爵家メルンブルク家の次男、リーフ様に仕える専属侍女である。

元の生まれは、凄く資産が潤っているわけでもないが貧乏でもない……そんな平凡な男爵家で、年の離れた兄二人と仲睦まじい両親の元、何不自由無く育てて貰った。


待望の女の子。

しかも兄たちより一回りも離れていた私は、両親にも兄たちにもベタベタのドロドロに愛されて日々を過す。


『ジェーンは我が家のお姫様だ!』


『世界一可愛い女の子はジェーンだよ。』


『皆が君の虜になる!』


そんな口癖の様に毎日囁かれる言葉に、『そうか!私って世界一可愛いんだ!』と思っていた。


────準成人を迎えるまでは……。


この国の殆どの貴族たち同様、私も家の近くにある中学院に通うことになったのだが、そこには今までとは180度変わった世界が存在していた。


洗練された美しさをもつご令息、ご令嬢!

上から下まで完璧といえるコーディネート!

生まれながらの気品オーラ!!

そんな人達がうじゃうじゃいる中で、私は悟る。


あれ?私ってめちゃくちゃ平凡じゃん……と。


自分が、可愛いとはとても言えない平凡な容姿である事、その事に気づいた時は、本当にショックで……。

しかも、その当時憧れていた男性が、物凄い美人と結婚した事も重なって、私は三日三晩泣きはらした。


そもそも両親も兄も凡庸な顔立ちで、それにそっくりな自分が可愛い顔なわけないじゃないか!


そんな卑屈な事を考えてしまうと、大好きな両親や兄まで侮辱してしまった事に気づき、また泣く。

泣き腫らす私をオロオロと心配する両親と兄達に、それにこれ以上迷惑かけたくなくて、今度は自分が美しさの中心に立つのではなく、そんな人達をサポートする人になろう!と誓った。


それからは、今までサボりがちであった勉学を死ぬ気で頑張って頑張って────なんとその努力が実り、あの美しさで不動のナンバーワン!な公爵家メルンブルク家の侍女として、雇ってもらえることになったのだ。


わ〜い!嬉しい!


喜びを胸に私がそこで見たものは、それはそれは美神の如くの完璧な容姿と優雅で洗練された仕草、そして一つ一つにセンスを感じる完璧な外面と────……ヘドロが聖水に思える様な、腐った内面であった。


それを思い出すと、今でも頭は痛み始め頭を抱えてしまう。


毎日毎日『施し』と言う名の乱れた交流会。

お互い競い合う様に雪だるま式に増えていく愛人達。

他者は使い捨ての道具でしょ?と真剣に語るクソ理論。

そしてそんな両親の元で育っていくコピーか?と言いたくなるような子供達……。


それを見て、私は二度目の悟り『人間中身が一番大事』を確立した。


美に対する憧れは遥か彼方まで吹き飛んでしまい、退職しようと決意した頃。

奥様のマリナ様が、この家の3人目となる次男リーフ様をご出産した。


またあの両親のコピーが誕生したのか……。


うんざりしながら部屋の外で控えていると、何やら様子がおかしい事に気づく。

中で聞こえるマリナ様とカール様の怒号、そしてドタドタと騒がしい足音がしたと思ったら、突然ドアが開いた。

すると、そこから飛び出してきたのは、生まれたての赤子を抱いた執事長カルパス様の姿だ。


あ〜……うんうん。なるほどね!


私を含め、部屋の前に待機していた侍女たちは、その手に抱かれている赤子を見て全ての事情を把握した。  

 

「これは私の子供ではない!何かの間違いよ!」

「こんなモノいらない!!」


怒り狂って錯乱するマリナ様から守るため、リーフ様はひとまず別室に移されたのだが、マリナ様に落ち着く様子は見られない。


「侍女達は全員集合して!!マリナ様を落ち着かせなさい!」


すると、直ぐに部屋の中から侍女長の命令が聞こえたため、私達は総出で向かわねばならなくなったが────生まれた赤子の世話をするため誰かが残らなければならず、全員が関わりたくなくて沈黙した。


公爵家の最大のトラブルに、あえて近づきたくない。

そうひしひしと感じる空気の中、私は「はいは〜い!」と手を上げて、喜んで立候補した。

明らかにホッとする侍女達が、そそくさと部屋の中へと入って行ったので、私は赤子が避難しているであろう隣の部屋へと向かう。

そして、到着した部屋の中をヒョイ!と覗けばカルパス様はおらず、その場にいるのはベビーベッドに寝かされている赤子だけだった。


「あ〜、う〜。」


「おぉ〜ご機嫌ですね〜。」


外はド修羅場中だというのに、赤子のリーフ様はウニウニと手足を動かし、ご機嫌な声を上げている。


可愛いな〜!


ヒョイッと抱き上げ揺らしてあげると、そのままウトウトし始めるリーフ様に自然と表情も緩んだ。


こんなに可愛いのに、なんで『いらない』なんて言うんだろう?


ドアの外からとぎれとぎれに聞こえる暴言の数々に、不快な気持ちはマックスだ。

とりあえず、今更何を言ったって生まれてきた命に責任を持つしかないじゃーん!


「よしよ〜し。悪いパパとママでちゅねー!」


そのまま小刻みに体を揺らし続けていると、とうとう完全に寝てしまったリーフ様を静かにベッドへと降ろす。

そして、外から聞こえ続けている怒号の嵐に大きなため息をついた。


きっとあの様子では、リーフ様は……。


あのヘドロの神互換なカール様とマリナ様の様子から、この憐れな赤子の未来を想像することは容易い。


私は眠ってしまったリーフ様のホッペを、プニプニと突きながら、その外見をマジマジと観察した。


茶色い髪に、あの二人に似ているところが1つもない容姿……。

鼻の頭にはそばかすらしきものまである。

『平凡』

まさにそんな特徴を持つリーフ様に、自身の半生を重ねる。


平凡な容姿の私。

でもそんな私を可愛い、可愛いと死ぬほど愛してくれた両親に兄……。

外見など関係なく、私という人間を愛してくれて。

必要としてくれて。

受け入れて。

居場所をくれた。

それって────本当に幸せな事だったんだ。


私はそうして三度目の『悟り』を得る。


そして思った。

私は私が貰ってきた沢山のものを、今度は他の誰かに与えていくべきだと。

与えてもらった幸せで、今度は誰かを幸せにすること、それが私の『正しき』世界のルールだから。


「じゃあ、これから私が幸せを返す相手はこの子にしよう!────うん、そう決〜めた!」


決意も固まりご機嫌で笑っていると、突如寝ていたはずのリーフ様がカッと目を開けた。


「────??!!」


その勢いに驚いてしまったが、『起きちゃったかな〜?』と話しかけようとしたその時……なんと、ムクリとリーフ様が立ち上がったではないか!


「……え?えええええ────!!!???」


口をあんぐりと開けて呆然としていると、どこからともなく『チャンチャララララン♬』という聞いたことない独特の音楽が部屋で流れ始める。

するとそれと同時に、そこら中に音符のような記号がフワフワと浮かび上がった。


「えっ……えっ……んんん〜!!?」


アタフタと周囲を見回す中、今度はその変な音楽に合わせて、リーフ様が踊りだす。

ダンス?なのかもしれないが、手を伸ばしたり足を伸ばしたりする動きから、ストレッチの類の様にも見えた。


「…………???」


頭の中がハテナマークで埋まり正常な判断能力がもはや迷子となった頃、踊り終わった様子のリーフ様は満足そうに笑い、一言。


「あ〜楽しかった!」


そこで私の意識は薄れ、目を覚ませば目の前にはスヤスヤと眠ったままのリーフ様の姿があった。


あれ?私、夢見てた??


ゴシゴシと目をこすり、もう一度リーフ様を見下ろすと、先ほど眠った時から全く動いてないのが、シワ1つ無いシーツによって分かった。


「……疲れてたのかな?」


摩訶不思議な気分のまま、リーフ様の頬をまた突いていると、その後様子を見に戻ってきたカルパス様に今後の予定を聞く。

するとリーフ様をあの顔だけクソ両親と引き離すため、このまま引き取って育てるというので、まさにグッドタイミングと思った私は片手をピッ!と元気よく挙げた。


「私も一緒に行きたいで〜す!」


喜んでそれについて行く希望を出し、今に至る。


「今思えば、あれが人生の転機でしたね〜。」


昔の事を思い出しながらリーフ様の成長にフフッと笑った後、私は机の上に置かれたチェス盤の駒を1つ進めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ