(レオン)150 レオンの衝撃
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☆そろそろストーカータグが入るかもしれません……少し注意
(レオン)
今日はリーフ様とお出かけする日。
俺はドキドキする胸を押さえながら、まだ朝日が昇る前の今現在、リーフ様が眠る部屋の方角に視線を向けたまま絨毯の上に体を横たえている。
俺の体はこの四年間眠るということを必要としなくなり、それに対し何ら変化はみられない。
眠る事ができないわけではない様なので、寝ようと思えば寝れるが……それならリーフ様の気配を感じていたほうが良いかと俺の五感全てをリーフ様に『張り付けて』それを存分に味わって過ごすことにした。
視覚はリーフ様の目がまだ閉じられているため暗いが、息遣いや心臓の音、サラサラ流れる血液の音に温かな体温、匂い────その全ての感覚が『張り付けた』俺の感覚器を通して伝わってくると、じんわりとした幸せを感じることができる。
奴隷になってからは物理的な距離も近づき、俺の毎日はまた新たな幸せで満ち溢れている。
この幸せで満たされた世界に二人きりでいられたら……。
────そう願っても中々上手くはいかないらしい。
リーフ様はこれから中学院という学び場に通うことをご所望だ。
そこにはとても沢山の人間達がいるそうで、それはつまりまた新たにリーフ様の側に湧く邪魔な存在達が有象無象に出現する可能性があるということ。
それにより心をかき乱される日々になりそうだと思わずため息を漏らした後、それに続くリーフ様の言葉を思い出す。
『中学院に通う間、俺たちは寮生活をすることになるから、早めに荷物整理をしておこうね。』
────なるほど……?
それに納得した俺は、言われたとおり直ぐに私物をまとめ始めた。
①リーフ様に貰った絨毯。
ほのかに香るリーフ様の匂い付き、大事な物なので勿論持っていく。
②金色のお皿。
リーフ様の横によくいる太い方に貰った。
リーフ様に何かを捧げる時に使うため、できるだけ良いものをよこせと言ったらこれをくれた。
これも必要だ、持っていく。
③リーフ様に貰った砂ねずみの人形。
リーフ様に似ている。
その時点で無碍には出来ないし、何よりリーフ様からの贈り物。
現在はこの部屋で一番豪勢な場所にとベッドの上にソッと乗せ、毎日花をお供えしている。
勿論これも持っていく。
それに服を数着……。
そうして直ぐに荷物整理を終えた俺を見て、リーフ様は喜んでくれたのか、奴隷になった記念を買いに行こうと誘ってくれたのだ。
途端に『嬉しい』が心を満たす。
その時の気持ちを思い出しながら上機嫌で長い夜を過ごし、やっとお出かけする瞬間を迎えた俺は、ドキドキしながら街へと向かうリーフ様の後をついていった。
『リーフ様と一緒に歩く。』、それだけで俺は十分幸せ。
だから『欲しいものはないか?』という問いに対してはそのまま素直に『一緒に歩くだけで充分幸せだ』と答える。
すると、リーフ様は考え込む様子を見せた。
「そ、そっか〜!じゃあ歩いている内になにか欲しくなったら買おうね。とりあえず服屋に行ってみようか。」
「はい。」
最初は服屋に行くらしい。
勿論どこへ行こうと文句どころか喜びしかない俺は、ご機嫌でリーフ様の後をついて行く。
そして道中、フッと自分の丈が短くなってきた袖に気づいて視線を落とした。
俺の成長は周りの者たちに比べて早く、服の消費もとても早い。
特にリーフ様の背を越えた頃からは、お古ではなく全て新品を買わなくてはならず、俺は別に麻袋などで十分だと言ったが、リーフ様は首を横に振った。
「下僕の服をきちんとしなければ、主人の俺が恥をかくだろう!」
そう怒られてしまい、自分の洋服はそっちのけでせっせと俺の服を買っては着せてくれる。
これ以上大きくなれば迷惑が掛かる。
そう思ったが、大きくなる度に嬉しそうに笑うリーフ様を見ると、俺も嬉しくて嬉しくて……。
リーフ様が喜んでくれるなら、俺はこの体に生まれてよかったと、心からそう思えた。
そうしてまた1つ、俺は俺のことを受け入れる事ができる。
自然と緩む口元に、愉快を感じながら歩いていると、リーフ様は一軒の服屋に入った。
「 じゃあ、自分で好きなお洋服を選んでおいで。」
店内は様々な種類の服が並べられており、リーフ様は俺にそれだけ伝え、簡素な服をパッパッと迷うこと無く選んでいく。
そんなリーフ様をぼんやりと見つめた後、命令通りにしなければ……と俺は『好きな服』を見つけるべく、並べられている服達に視線を走らせていった。
目に映る服たちは簡素なものが多いようだが、フリル付きの服やきめ細やかな刺繍などが施されているものもそれなりに置いてある様だ。
俺は袖にフリルがついた白いシャツを一枚持ち上げ、繁々と見つめた。
『貴族』という身分の者達は、総じて豪華な洋服を好む傾向がある。
しかしリーフ様は貴族であるにも関わらず、そういった洋服は好まない様だ。
結果、簡素な洋服ばかりを着ているので、俺はこの様な洋服を着たリーフ様を見たことがない。
手に持っていたフリルつきのシャツを簡素なシャツの横に置き、今度は並んだ洋服をジッと見つめる。
シンプルな服のリーフ様は『可愛い』。
でもきっと、装飾された服を着ても『可愛い』に違いない。
今度は更に隣のエリアにある洋服の棚へと移動し、貴族が一般的に着るような胸元と袖にフリルがついたシャツを手に取って見る。
そしてまた隣に移動しては見て、移動しては見て────……と、いつもと違う感じの洋服を着たリーフ様を想像しながら店内を見て回っていると、視線の先に一着の服が目に入った。
淡いエメラルド色をした生地に、フリルとリボンをこれでもかとふんだんに使ったカラーのドレス。
動くという観点から見れば何ひとつメリットがない服だ。
普段ならそんなもの、気にも止めないのだが……リーフ様が着るという前提で服を見ていた俺にとって、それは正体不明の衝撃を感じさせるものであった。
リーフ様の瞳とおそろいの色のドレス、それをリーフ様が着る……?
無邪気に笑うリーフ様の身を飾るドレスは、きっとその美しさをより高みへと押し上げてくれるに違いない。
「…………。」
ドキドキしながら、それを着たリーフ様をふっと想像しようとした、その時────……。
「おやおや、随分可愛らしいドレスだね。着れたら凄く可愛いんじゃないかな?とりあえず買ってみるかい?」
「……えっ……?」
突然のリーフ様からの掛け声に驚き、焦りながらその妄想を瞬時に散らすと、申し訳無さと恥ずかしさとで顔に熱が集まるのを感じた。
男のリーフ様に対し俺はなんてものを想像しようとしたのか!
「き……着た姿が見たいなど……お、俺はそんな不純なこと……。
……いえ、申し訳ありません。────俺は……。」
自分でもどうかと思うくらい動揺しながら謝罪の言葉を口にしたが、なんとリーフ様から帰ってきたのは予想だにしない言葉であった。
「まぁまぁ、洋服など何を着たっていいんだ。こんなに可愛いと、着たくなるのはむしろ当然の事なんだよ。」
『可愛いと着たくなるのは当然』、そう言い切ったのだ。
俺がリーフ様のドレス姿を見たいと思うことは極一般的な事……更にはリーフ様も喜んでそれを着たいと思っていると??
先ほど消したはずの妄想が、あっという間に頭の中のセンターに躍り出る。
ドレスを身にまとい、笑顔で俺の名を呼ぶリーフ様。
その姿は────……この世のものとは思えぬほど美しかった。
……なるほど、確かにこれがおかしいものなわけがない。
「そ、そうなのですか……。男にドレスを……さらにドキドキするのは変な事ではないのですね。これは普通……そうですか……。」
ホッと安堵し、それを買おうというリーフ様に喜んで従おうと思ったが、俺はその気持ちをぐっと堪えドレスを手放した。
リーフ様の美しさを引き出すのに、リーフ様自身がそれを買うのは嫌だ。
自分の力で手に入れたものでリーフ様の身を包み込んでほしい。
そう思ったからだ。
「いえ、今は買いません。いつか自分で稼いだお金で買います。サイズも合ってませんから……。」
いつか自分の手で贈りたい。
そんな想いを伝えると、リーフ様は喜び?を必死に耐える様にグッ!と口元に力を入れる。
「そ、そっか〜……分かった!」
きっと俺の気持ちをなんとなく察してくれたに違いない。
嬉しい……。
それに喜びを噛み締めながら、そのまま買い物を続けるリーフ様の後を喜んでついていった。




