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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第四章(メルンブルク家の様子、大樹の過去と結婚式について、リーフ邸襲撃事件)

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(カール)137 罪深き赤子

(カール)


私とマリナは共に政略結婚であったが、ひと目見てお互い分かりあった。

我々は神が定めし運命の番同士であると……。

私は心からマリナを愛し、そしてマリナも私を心から愛した。


まずはその容姿。

お互いが王族の高貴な色とされる金色の髪、透き通る青い瞳を持っていて、更には誰もが褒め称える美しさを持っていた事。


そしてもう一つは価値観の一致。

私も彼女も高貴な身分と教養、そして貴族としての高い志を持っていて、人はそれぞれに課された役割をこなしてこそ世が成り立つという確固たる考えを持っていた。

王族は王族の、貴族は貴族の、そして下位の者達には下位の者達の、それぞれの役割というものがあり、それに逆らう事は神に逆らう事と同義であると思っている。

それは王族や貴族に強力な資質が備わっていることからも明らかな事で、力を持たぬ下位の者達は生まれながらの優れた人種たる我々に従う事こそ、正しき世界の姿なのだ。


その事から身分は絶対的なもの。

つまりそれに否を唱える者は、神に逆らう大罪人として罰する、それこそこの国が守っていかなければならない絶対的な慣習といえるだろう。

これをおろそかにしてしまえば国は滅びる。

それに危機感を覚えこの国の未来を憂いている姿に、私達は同志であるという感動を覚えた。


共に邪教と戦っていこう。そう誓いあったのだ。


恐らく我々は、そんな神に逆らう罪人どもを裁くため人の世に生まれ落ちた神の使者に違いない。

そんな確固たる思いを抱き、我々は邪教徒を正義の名の下に裁いてきた。

それなのに────っ……!


────ギリッ……!

()()日を思い出し、そのあまりの忌々しさから親指の爪を噛む。


記念すべき三人目の子供。

我々の子供は三人にするべきとある理由から決めていて、世に生まれる最後の神の使者として、盛大に祝おうと準備をしていた。

兼ねてから進めていた『ある計画』も滞りなく進んでおり、その拠点とするべく建てた邸で、マリナは最後の神の使者を生み落とし────……そして、悲鳴を上げる。


凄まじいその声に驚き、すぐにマリナの元に駆けつけると、横には侍女に抱かれた世にもおぞましい醜い赤子が、ぎゃあぎゃあと泣きわめいていた。


茶色い髪に、凹凸が確認できない酷く醜い容姿。

私の子供でないことは確実であったが……それについて何故だと強い疑問も浮かぶ。


私とマリナは美しい。

美しい事は罪であるとはまさにその通りで、誰も彼もが私達を求め膝をつく。

神に選ばれた者として、そんな憐れな子らに『施し』を与える事は、美を持って生まれた者の義務だ。

しかし、真実の愛はマリナに捧げ、マリナも私に捧げている。

子供とは真実の愛を持った者同士にしか持つ事を許されぬ愛の結晶で、その教えに背くことは絶対にしないよう対策はお互い完璧であった。


何にせよ調べれば直ぐに分かる事だと、私は直ぐに『生元鑑定』ができる者を呼びつけ、その醜い赤子について調べさせたが……何度鑑定しても何人もの鑑定士に鑑定させても結果は全て同じ。

()()は紛れもなく私とマリナと子供であった。



< 生元鑑定 >

生まれ持った血筋を鑑定することで血縁関係を調べることが出来る特殊スキル。

主に生まれた子供の両親を調べるのに使う。



これでは、成人を迎えるまで籍を抜くことができない。

それを理解したマリナは発狂する。


『これは私の子供ではない!』

『何かの間違いよ!』

『こんなモノいらない!!』


そう大声で怒鳴りつけ、手当たり次第に物を投げては『それ』を害そうとするが、専属執事のカルパスが速やかに『それ』を連れて、その場から出ていってしまった。

私はそのままその赤子を追いかけ、完全に消し炭にしてやりたいと願ったが、それはできない。

なぜなら『準成人を迎える12歳までの子供は、どんな子であろうとも尊き神の遣いである。』という神の教えがあるからだ。


いかなる理由があろうとも、神の使者である我々がそれを破ってはならない。

私もマリナもそれを正しく理解してたからこそ、これから長く耐え難い苦しみに深い絶望を抱いた。

私とマリナの理想をこれでもかと詰め込んだ夢のお城は、あの醜い赤子によって穢れてしまったため、私達は、直ぐに『それ』を残しレガーノを離れ王都に向かわざるを得なくなる。

特にマリナにとっては思い入れの強いお城であったため、酷く塞ぎ込んだが、『我々は悪に決して負けはしない』そんな気高き想いにより懸命に立ち上がり、お互い誓いあった。


『あれ』が神の遣いでなくなった時、裁きの鉄槌を下そう。

それが達成された時こそ我々は元の『正しい』家族に戻れる!────と。


そうして王都で計画の立て直しをしようと決意し、直ぐにレガーノを去ろうとしたその時、一つ問題が起きた。

執事長のカルパスが、『それ』と共にここに残ると言い出したのだ。


カルパスはやや情に流されやすいところはあったが、非常に頭が切れる有能な男で、私が直々に申し入れをしてスカウトしてきた人材であった。

その働きは素晴らしく、まさにメルンブルク家に仕えるのに最もふさわしい人物である。

そう私もマリナも絶大な期待を寄せ、このままこれからも我がメルンブルの手となり足となり存分に役に立ってもらうはずであったのに……。


そんなことはさせてなるものかと、ありとあらゆる手段を行使したが────全てひらりひらりと躱されめしまい、とうとうカルパスの実の娘であるイザベルと共に、我々の元から去っていってしまったのだ。

そしてその後も様々な妨害を続けたが、それも上手く躱されてしまい、今の今まで膠着状態が続いている。


味方ならば心強いが、敵に回れば非常に厄介な男だ。


あまりの忌々しさに自然と顔が歪みそうになったが、シャルロッテの可憐な笑い声に、ハッと我に返る。


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