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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第三章(3年後の話。資質鑑定からレオンを奴隷にするまで)

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(ケイン)128 借金取りの戸惑い

誤字のご指摘ありがとうございますm(__)m

本当に助かります!

(ケイン)


『賢人ドラゴンに近寄らず』


この国のことわざで、賢い人程やばいもんには近づかねぇって意味で、俺はそれをモットーにずっとこの仕事をやって来た。


俺の名前は<ケイン>。


しがねぇ借金取りをやっているが、勿論好き好んでこの仕事についたわけじゃねぇ。

俺は12歳の時にクソッタレな両親に借金のカタに売られ、【借金奴隷】として、今の直属の上司に買われたのだ。

幸いにも俺の資質は、契約魔法に関してはスペシャリストだった為、奴隷にしては中々の高待遇で働かせて貰い、直ぐにその身分から開放された。


【借金奴隷】は、その借金分を国に変換すれば、奴隷の身分から開放される事ができる。

正当な給料を支払われる義務と、そこから借金の返済に一定額を当てていく法律……この2つが適応されている【借金奴隷】には、もう一度人としての権利を取り戻すための救済措置的な法律が存在しているのだ。

そのため、俺の様にさっさと返し終われば、また元の『平民』の身分に戻れるというわけだ。


俺は、『平民』に戻った今も、性に合っているから同じ場所で働かせて貰っているが、本来その後どうしたいかは個人の自由。

もう両親との『尊い絆』とやらも消え失せているという事で、そこからは『親』という重荷なしで、自由に自分で人生を決めて生きていく事ができるのだ。


『それからが、やっと自分の人生のスタート』

自分も含めてそんな奴らがそれなりにいるということを……俺は知っている。


俺が未だに働いている────【フォレスト金融商会】は、決して無茶苦茶な利子を取るような金貸しではなく、真っ当な利子しかつけてはいない。

それにも関わらず、何も考えずに金を借りては返せなくなってしまう奴らは、必ず一定数はいて、そういう奴らから金を徴収するのが俺達借金取りのお仕事というわけだ。


自身の快楽のため、アホみたいに金を借りて奴隷になる奴らは自業自得。

問答無用で奴隷にして、一番高く買ってくれる糞みてぇな場所に容赦なく売っぱらうのだが、結局そういう奴らは自由になったその日にまた借金をしちまう。

もはや奴隷になりたいから借金しているとしか思えねぇクレイジーっぷりだ。


ちなみに俺の行方不明だった親も、また借金漬けで見つかった。


『ずっと心配で探していた。』

『今でもお前が一番大事だ。』


そんな事を言いながら、当然の様に俺が助けてくれると思っている目を見て……俺は思わず吹き出しちまったよ。


欲に負けて一線越えちまった奴らってぇのは、そんな薄ら寒〜い大嘘を、その場を切り抜けるがためだけに歌うように口にする。

そしてそれを信じて慈悲を掛けてくれた奴らを喰い物に、また自身の欲を満たす────これの繰り返し。

死ぬまでその人生は変わらねぇんだと、この仕事をやって思い知った。


ハラハラと涙まで見せる両親に対し、きっとまだ何も知らなかったガキのままの俺なら助けようとしたかもな?とは思う。

そんな自分を喰い物にしようとしているだけのクソみたいな情でも……何も持っていないガキの頃は、宝物の様に見えちまうもんだから。


しかし、残念ながら俺はもう親をただ信じて待っている子供じゃない。

こういったクズな奴らの本性を見続けてきた大人になっていた為、容赦なくその場で奴隷にし、一番過酷な鉱山に売りつけてやった。


あの借金の額じゃあ、二度とお日様は見ることはないだろうよ。


両親だろうがなんだろうが、そういう奴らに対し俺は一切の罪悪感は持ってない。

しかし────……。


俺の脳裏には、泣きながら奴隷になっていったガキ共の顔が過ぎ去った。


そうじゃねぇ奴らに対してはそれなりに罪悪感というものはあって、一番それを感じるのは、俺みてぇに親の借金のカタに売られちまうガキに対してだ。


特に準成人になる12歳の子供が最多で、理由としては『子供』から抜けたばかりの彼らには借金の返済義務はあるが、まだ職につく前なのでお金を稼ぐ宛がない。

そうなれば、【借金奴隷】になって働くしかなくなるわけだ。


これが、13歳、14歳と大きくなるにつれて、子供自身に社会的信用が成り立ってしまえば、返済は分割でということもでき、借金元の親はその間ずっと逃げ回らなければならない。

見つかれば自分にも借金の返済義務が発生してしまう、そんなリスクがある上、子供に反撃される場合もある。

だからこそ、その心配がない12歳の子供に借金を押し付けて、子供が【借金奴隷】として売られるまで、姿を一時的に眩ます親が多いのだ。

 

そもそも親と子供は一心同体なんていう法律があるから……と思うが、そのお陰で犯罪率がガクンと減ったのも事実。

真っ当な親なら、子供に連帯責任なんかで罪を被せたくなどないからな。

だが、結局はどんなに良いとされる法律でも、それを盾に悪いことを思いつく奴らは必ずいるのだ。

この借金の押し付けもそれ。


ふぅ〜と大きく息を吐きながら、俺は仕事場にある自室に到着後、ドカッ!とソファーへと深く座り込む。

そして、金貨がジャラジャラ入った袋をテーブルの上に乱暴に放り投げた。

その衝撃で金貨が一枚飛び出て、チャリ──ン……と音をたて床に落ちると、胸糞の悪い記憶が更に鮮明に蘇る。


俺は、今まで何度もそんな可哀想な子供達を奴隷に堕としていった。

大抵の子供は親に捨てられたことを理解し放心し、その後は大泣き。

人ではなくなることになる恐怖や悔しさ、両親への恨みを抱えながらも……まだ何処か自分を売ったクソな両親の事を信じている目をしている。


そんな子供達を奴隷にするのは、そりゃー嫌な気分しか残らねぇ。

だからこそ、一応ちゃんと売る相手は慎重に調べて売ってやってる。


それでも可哀想だとお優しい善人様達は言うだろうが、意外にそうでもなく……売られた子供達は幸せに暮らしてたりする。

なぜかと言うと、結局借金して姿を眩ます様な親なんざマトモに子供を育ててなんかいねぇからだ。


虐待まがいのことを隠れてされてる子供も多くいて、そんな場所からすれば奴隷として働いた方が普通の飯が食える上、殴られる恐怖に怯えながら眠る事もない……まるで天国だと言う子供もいるくらいだ。


奴隷になってやっと解放されるなんざ、本当にひでぇ話だと思うだろ?

俺もその経験者だからその酷さはよく分かっている。


そして今日もそんな可哀想な子供を迎えにいく────はずだったのに……。

そこにいたのは『可哀想な子供』ではなく、世にも恐ろしい『化け物』であった。


俺はそいつの事を思い出しぶるりと震え上がると、落ち着くために震える手で葉巻に火をつけた。

そして、その煙を思い切り吸いこみ、上に向かって全て吐き出したが……一向に震えは治まってはくれなかった。


()()は絶対に関わってはダメなものだ。


最初にそいつを見た時、ゾッと背筋が凍りつく感覚を味わった。

俺は神様なんざ信じちゃいねぇから、黒髪ごときでビビったりはしなかったが……一番ヤバいと思ったのはアイツの目だ。

深い深い海の底、何処までも何処まで落ちていくのと同じ恐怖を一瞬で植え付けられる目だった。


ビビっちまった自分を誤魔化す為、怒鳴りながら椅子を蹴飛ばしたが、そんな事では誤魔化せぬ本物の恐怖が自分を飲み込んでいく、そんな感じか?

こんな仕事をしてりゃー色々とヤベェ奴と出会う事は多いが、アレは次元が違う。


あの時、本気で俺達を殺そうとしていた。

しかもまるで呼吸をするのと同じくらいに自然体で。

その時のヤツの目には、その事に対する感情など微塵もなく、多分『邪魔だから消す』、それしかなかった様に思える。


「…………。」


そのまま何度か煙を吸って吐いて……やっと震えが止まった後、すっかり短くなった葉巻を灰置きに押し付けると、事の顛末を説明しに上司のところへ向かった。


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