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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第三章(3年後の話。資質鑑定からレオンを奴隷にするまで)

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119 初めてのお祭り

(リーフ)


◇◇◇

「少し休憩しようか。」


一通り気になる出店を回って歩き、時間は既に14時を過ぎた頃────俺とレオンは中央広場の一角にある憩い広場に腰を下ろしていた。

そこは緑豊かな広い公園みたいなところで、休みの日には街の人達がよくピクニックとかをしている場所だ。


久しぶりの人混みに疲れた〜!


爽やかな風が吹く中、大きく伸びをした後、その場にゴロンと転がった。

流石に公共の場ということで、レオンには『椅子』になってもらうことなく隣に座って貰ったが、お仕事が出来ないということで、レオンの機嫌はやや悪い。


────ジトッ〜……。

不満を訴える視線を受けながら、俺はお祭りであった出来事を一つ一つ思い出しブツブツと独り言を呟いた。


「やっぱり一番美味しかったのは、トロロン・ピックの串焼きかな〜。

でも、ニールのところのチーズ蒸しパンも凄く美味しかったし、モルトのところの花くじクッキーも……う〜ん、甲乙つけがたいね。

あっ、でも花くじクッキーの大外れを引いちゃったのはびっくりだったね。」


モルト家の出した出店で大盛況だった花くじクッキー。

実はこれ、俺が発案したもので、単純にお客様にくじを引いてもらい、当たった花味クッキーを渡すというものであった。

花の匂いがするクッキーは、元からモルトの家で販売していて、貴族を中心に爆発的なヒットを出し続けているが、平民には多少近寄りがたいイメージがあり人気はイマイチ。

確かに、基本は貴族が開くお茶会に出すものだし、なんとなくとっつきにくい感じがあるのは分かる。


「じゃあ、くじ引きにするのはどうかな?」


「くじ引き??」


悩んでいたモルトにそう提案すると、モルトの頭の上にハテナマークが飛んだ。

あまり馴染みのない商法だった様なので、俺は丁寧にそれを説明する。


「セット売りとは別に、子供のお小遣い程度でも引けるくじを作るんだよ。

くじ引きにすると、興味津々な子供が多分一番に来る。────で、当たった番号のクッキーを子供達が食べれば、親御さんも手が出しやすい。

それにいろんな種類のクッキーもあるし、普段なら口にしない味のクッキーの宣伝にもなるんじゃないかな?」


「な、なるほど……!」


モルトは俺の案を聞き、パァァァと表情を明るくすると、早速それを実行に移したらしい。

そしてそれは見事に大成功!

子供や若い層を中心に凄い人だかりが出来ていて、それにつられて他の層も夢中になってクッキーを食べていた。


「おいし〜!これ、ラベンダーの香りだわ。」


「こっちはキンモクセイの香り!いい匂い〜。」


口々に褒める声が聞こえてくるので、どうやら敷居が高いと遠巻きにされていた商品を、バッチリ宣伝できたようだ。


良かった良かった〜。


その様子をニコニコ見守っていると、俺に気づいたモルトとご両親、そしてお姉さんが慌てて俺に挨拶に来てくれた。


「リーフ様!この度はどうもありがとうございます!」


「おかげさまで、早速注文を希望する声も頂きました。つきましては是非、ぜひ売上の一部を納めたいのですが……。」


モルトとモルトそっくりの外見をしたモルトパパが嬉しそうに報告してきたが、俺はブンブンと手を横に振る。


「別に大したアイディアじゃないからいらないよ。俺も楽しませて貰えるし……それに、楽しそうな子供たちを見ていると、俺も楽しいから。」


チラッと周りを見渡すと、キャッキャと喜ぶ子供達の姿があった。

それを見ると、駄菓子屋のくじで喜んでいた孤児院の子供達を思い出して、なんだか嬉しく思う。


「────しかし……。」


「そ、そういう訳には……。」


モルトパパとモルトママが、オロオロしてしまったので、「じゃあ一回くじを引かせて〜。」と頼むと、勿論!とすぐに出店に案内された。


「どうぞ!こちらでございます。」


モルトに通された場所には、長めのテーブルが置かれていて、その前にガラガラ回すタイプのくじ引きが置かれている。

これを回すと小さな球が出てきて、その色で商品が決まる。


「よ〜し!」


いいクッキーが当たる様、精神を集中しようとしたのだが────……。


「あっリーフ様だ〜!」 


「こんにちは〜。」


街の人たちがワイワイと声を掛けてきたため、集中力は消え去った。

とりあえず手を振って返事を返すと、皆は俺が何を当てるのか注目し始めたため────ニタリと笑って見せる。


実はこの花くじクッキー、もう一つ俺が提案した策が練り込まれている。

それは────……。


注目される中、俺はガラガラの取っ手を握りしめ、勢いよく回した。

すると出てきたのはなんと────虹色の玉!!

その瞬間……モルトとご両親、お姉さんの顔色が、真っ青へ。


「に、虹色〜……特賞……。ラフレシアクッキ〜……。」


モルトが力なくベルをチリンチリンと鳴らしてそう告げると、周りにいた人達が一斉に俺から離れる。

もう1つの策とは────……そう、まさに俺が引き当ててしまったものにある。


くじ引きの醍醐味は、大当たりとそれに相対する大外れがあること。

大当たりは全種類のクッキーの詰め合わせ、そして大外れは……このラフレシアクッキーなのだ。


ゴクリと唾を飲み込むと、モルトのお姉さんが震えながら、厳重な箱に入ったそれを、赤いクッションの上に乗せて持ってきた。

そして、モルトのご両親が気遣う視線もそこそこに、俺は意を決してパカッとその箱を開けたその瞬間────……。


────むわあぁぁ〜〜……!!


物凄い悪臭が辺りを漂い、周りが軽いパニック状態へ。

俺も、その腐ったゴミ溜めの様な匂いに、鼻と口を押さえ息を止めて震えた。


こ、こんな凄い匂い、嗅いだことがない!!モルト家の実力は本物だっ……!


あぅあぅと息を短く吸いながら、レオンは大丈夫かと見上げれば、普通。

────めちゃくちゃ普通!


英雄様は嗅覚も狂っている!


ジワッと涙が滲み霞がかってしまった眼を見開くと……モルトはマスクを10枚くらい重ねて着用しているにも関わらず倒れそうだし、それを持ってきたお姉さんに至ってはガスマスクみたいなやつを装着している。

更にその後ろで、ご両親は俺にマスクを渡そうとして途中で力尽きているし、周りの人達は遠ざかりつつゲホゲホ咳き込んでいる姿がボンヤリと目に映った。


「…………。」


周囲を見渡した後、そのクッキーに恐る恐る手を伸ばすと、モルトとお姉さんは、まさか……っ!と眼を見開いた。


俺は決して食べ物を無駄にはしない。

それは前世から変わることのない俺のポリシー。


念仏のようにそう唱えながら、俺は息を止めそのクッキーに────齧りついた!


…………。

…………むわわぁぁ〜ん。


頬張った瞬間に、口いっぱいに広がるトイレの味!


「うぷっ……!」


たまらずうめき声を上げれば、周りからは悲鳴に近い声が上り、モルトは直ぐに臭い消し草を手に持ち待機してくれた。


き、き、きつい……っ!

くさいっ!!

トイレをペロペロしてる味!!


心の中でヒーヒー悲鳴をあげている中、レオンだけが普通に話しかけてくる。


「口に合いませんか?」


「────っ?!!────……〜っ!!」


言葉なく涙目でぷるぷるしていると、レオンはぴょいっとクッキーを俺の手から取り上げ、そのまま自身の口の中に放り込んだ。


青ざめる俺と、周囲の人たち!

全員の注目が集まる中、レオンの口からはバリバリという大きな咀嚼音が聞こえ続ける。


その豪快な食べっぷりに、ひぇっ!と短い悲鳴を上げれば、モルトやお姉さん、周囲の人達も全身をブルブルっと体を震わせたが、当のレオン本人は涼しい顔のままだ。

そして、その後は普通に噛み砕き、普通〜にゴクリと飲み込み、いつも通りの無表情になった。


「だ、大丈夫かい?」


恐る恐る尋ねたが、レオンは、何が??と言いたげに首を軽く傾けただけ。

まさか謎スキルに嗅覚と味覚にバッドステータスでもついているのでは?


そんな新たな可能性に怯えながら、俺はモルトから差し出された臭い消し草を有り難く受け取り、レオンと共にそれをむしゃむしゃと食べながら次のお店へと向かった。


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