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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第三章

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124 レオンの元へ

( リーフ )


ゆ〜らゆら……。


まるで揺かごに揺られている様に漂っていた意識が、空腹に引きずられる様に突然現実世界へと戻ってくると────突然、はっ!!と目を覚ました。


すると最初に目に入るのは見慣れた天満で、体中に感じるのは、ふかふかのベットの感触だ。



────えっ!!?!



びっくりして飛び起きると、ここが正真正銘俺の部屋であり、更にベッドに寝かされているという事実に気がつく。



「 ────はっ……??


……へっ??あれ!?ここ、オレの部屋だ! 」



「 あっ、リーフ様起きましたか〜? 」



パニックを起こしている俺の前で、侍女のジェーンがマイペースに部屋のお掃除をしながら、俺の質問に答えた。


思わずそれをぼーっと見ていたが、直ぐに「  あっ!!! 」と叫び、急いで窓の方へと視線を向ける。


すると空は日が沈みかけていて、辺りは暗くなり始めていた。



「 ジェッ、ジェーン!今何時くらいか分かるかい?! 」



俺が鬼気迫る勢いで言うと、彼女はヒェッと短い悲鳴をあげた後答える。



「 6時を過ぎた頃くらいです〜。 」



「 6時!!!? 」



そんな時間まで俺、寝ちゃってたの!?



ガガーン!と大きなショックを受けて固まっていると、ジェーンは俺が状況が分からずにびっくりしていると思ったらしく、ニッコニッコと笑顔で説明を始めた。



「 リーフ様ってばお祭りで寝ちゃったみたいで、レオン君が抱っこしてここまで送ってくれたんですよー。


しかもな〜んと!


女の子の憧れ!お姫様抱っこでです〜。


結局全然起きなかったので、とりあえずベットに転がしておきましたー! 」



────ピッ!と、おでこに手を当て敬礼のポーズをとるジェーン。



えっ?俺お姫様抱っこされてあの街中歩いてきたの?



…………。




……いやいや、今は凹んでいる場合じゃない!



俺は、ダッと走って自身の机の引き出しを開けると、今まで貯めた全財産が入った袋を取り出した。


ジェーンが俺の突然の行動に驚き、「 リーフ様??! 」「 どうしたんです??」 と慌ててたずねてきたが、それに答える余裕はない。


持っていたお金袋を、しっかりと腰ベルトにくくりつけると、身体強化を唱えた状態で、窓からバッ!!と飛び出す。



「 リ、リーフ様────!!?? 」



後ろでジェーンの悲鳴が聞こえたが、俺は後ろを振り返る事なく全力で駆け出していった。



そうして、全力疾走を維持しつつ街を突っ切っていると、街ではまだまだお祭りは続いている様で、見えるのは沢山の笑顔、笑顔、笑顔────……。


そして、楽しそうに笑い合う姿は ” 幸せ ” の象徴そのものだと思った。



しかし、そんな楽しく歌い踊る人達には目もくれず、俺は建物の屋根伝いにひたすらレオンの家を目指し、風のように走り抜けていく。



レオンの家は、北側にある俺の屋敷から一直線、南側の森の入り口付近にあるため、少し時間が掛かる。



「 ────っクッソ〜!間に合え! 」



全力疾走に加えて、焦りからドキドキと心拍数は上がり、息は乱れて汗もドッと掻いてしまっているが、そんな事は気にも止めずに、物語で起こる出来事について考えた。



借金取りがくる正確な時間は分からない。


しかし物語のレオンハルトは、リーフに木刀で散々殴られた後に家に向かったと書いてあったので、恐らくは夕方辺りだと睨んでいる。


理由としては、リーフとその家族達は家族揃っての夕食をとても大事にしていたので、毎日その時間にはレオンハルトを開放していたからだ。



だから俺はレオンとお祭りを楽しみ、夕方前に解散。


その後はレオンの家の前でこっそり張っておこうと思っていた。


なのに────!



さっきまでぐっすり寝ていた自分を思い出し、ギリッ……と唇を噛む。



グーグー寝ていたもんだから、計画は丸つぶれだ!


俺の大ばか野郎〜〜!!!



後悔に次ぐ後悔に思わず心の中で叫びながら、俺は屋根と屋根の間を思い切りジャンプした。


すると────……。



────ドンっ!!!



ジャストタイミングで花爆弾が打ち上げられ、空に白い煙が立ち上っていく。



そして高く高く昇って行った先で、ポポ────ンッ!!!と爆発すれば、薄暗くなってきた空一杯にキラキラ光り輝く花達が姿を見せた。



その瞬間、地上では歓声と拍手の嵐が巻き起こる。



随分と大きな花爆弾だったようで、昼間に見た物より規模がだいぶ大きかった。


薄暗くなっている空から降ってくる大量のキラキラ光る魔力の花達は、とても幻想的で美しい。


しかし────……。



今の俺にはそれが綺麗な物には全く見えなかった。



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