107 レオンの好みは……
(リーフ)
ドノバンは一言で言うと、最初の印象そのままの『女の人大好きおじさん』だ。
修行の時は真剣だしアドバイスも指導も完璧なのに、休憩タイムに入るとエッチな話ばかりを延々と話しだす。
ちなみに俺は、この手の話が大好きなので、ノリノリで話に乗りたい。
そして、あわよくばお好みの女性達がいる楽園の様な場所に、俺も連れてって欲しい。
しかし────……。
俺は、無表情だが何となく不機嫌オーラが滲み出ているレオンをチラッと見た。
どうもレオンは、下ネタ嫌いっぽいんだよね……。
ドノバンが完全に視界から消えると、それと同時に不機嫌オーラが綺麗に消えたレオンを見て、ハァ……とため息をつく。
ドノバンがその類いの話を振ってくると、レオンはやめさせようと今の様な強硬手段にでる。
そのため俺は、出来るだけこういった下ネタまがいの言動や行動に気を付けているのだが、ドノバンは全くというほど懲りない。
そして毎度こうしてレオンに攻撃されては、そのまま剣の打ち合いに発展することもしばしば。
もう最近では、これは2人のコミュニケーションなのでは?と思い見守ることにした。
ちなみに今日は、ドノバンが逃走したバージョンだ。
恐らくこのまま、ほとぼりが冷めるまでの長〜いトイレ時間になると予想されるので、今のうちに資質【おじさん】とスキルについて、もう少し整理してみよう。
俺は両腕を組み、その場でヨッコラセとあぐらを掻いた。
努力の結晶ともいえるスキルは、自身の資質に関するものであることは間違いない。
例えば、剣士などでは『剣を使った攻撃スキル』、魔法使いなら『魔法を使うためのスキル』、調理人なら『調理に関するスキル』────などなど……大体は、その資質を生かした能力が開花するはずなので、資質の名称を聞けば、ある程度のスキル予想は立てることができるのだ。
しかし……その資質の名が抽象的なものの場合は予想が立てづらく、例えば代表的なものとしては【村人】や【一般人】。
様々な視点をもつそれらは、これだ!と直ぐに思いつくモノがない。
「実際に発現しているスキルもバラバラで一貫性がないし……。抽象的な資質の方、スキルの数は多いんじゃないかな……?」
ブツブツと自分の予想を口にし、う〜ん?と首を大きく傾げた。
これらの資質には、多種多様なスキルが報告されているが……現在までに強力なスキルを発現した事はない。
<歩く時に、ほんの少しだけスタミナが減りにくい。>、<人と話す時少しだけ好感度が上がりやすい。>などなど……分かっているスキルは、この様な生活上便利になる非戦闘スキルのみであるため、全て下級資質とされている。
それを考えると、確かに俺の資質【おじさん】もこれに類似してそうだ。
そんな【おじさん】という資質だが、どうやら既に2つのスキルは発現しているらしく、神官長が読めた部分だけ教えてくれた。
それが、<前向きになるスキル>と<我慢強くなるスキル>らしい。
う〜む……。これはちょっとおじさんっぽい気がする!
これは納得のいくスキルだと頷いたが、残念ながらこの2つのスキル以外は不明なんだとか……。
あとのスキルって何があるんだろう??
更に深く深くおじさんというモノのイメージについて掘り下げて考えていくと……。
◯朝早く目覚める
◯物忘れが激しい
◯膝と腰がすぐ悲鳴を上げる
◯疲れが取れにくい
◯ちょっとした段差でつまずく
◯近くが見えにくい (老眼)
「…………。」
なんだか、正直言って悪い感想しか先行して出てこない!
頭が痛くなってきて目元を揉み込んでいると、ハッ!といや〜な可能性に気づいた。
────もしかして【おじさん】って……バットステータス的な効果があるんじゃない??
そんな馬鹿なっ!!と焦っておじさんの良いところを考えようとしても全く出てこなくて焦る。
困り果てた俺は隣に座るレオンに聞いてみる事にした。
「ねぇねぇ、レオンってさー(世間一般的な)おじさんってどう思う?」
「(リーフ様の資質の)おじさんですか?」
「そうそう。俺あんまり良いなぁって思えなくて……。レオンにとってそれってどんなイメージがあるかな?」
客観的なおじさんのイメージを聞いてみたら、レオンは花が咲くが如しのふわっとした笑顔を俺に見せる。
「(リーフ様の資質の)おじさんはとても素敵だと思います。きっと誰もが欲しがる存在で、高潔かつ純粋さが伝わってきますね。俺はとても好ましいと、そう思っています。」
「────へっ??」
俺はレオンの思わぬ回答に、間が抜けた返事を返す。
ん?んんんん〜???ちょっ、ちょっと俺、今すごいこと聞いた気がするんだけど……。
レオンの方へチラリと視線を向けると、そこには嘘偽りは一つも感じられない真剣な眼差しがあった。
レオンはおじさんが好きなのだそうだ。
つまり年上の男性がとても好ましいと……そう言う事??
「……ほほ〜ぅ。」
ここで色々納得し────大きく頷いた。
レオンはおじさんが大好き。
だから本当はそのカテゴリーに入っているドノバンの事も、大好き。
いつものハードな絡み合いは、レオンなりにチャンスとばかりにじゃれ戯れついているつもりだった??
考えれば考える程、パズルのピースかカチリと嵌まるように理解していく。
一言で言うとアレだ。
『男の子の初恋は、近所の年上のお姉さんで〜す』────ってやつ?
要はそれが『お姉さん』から『おじさん』に変わっただけ。
何も問題はない。
むしろこれがきっかけになって、精神が少しでも修復出来れば……いいんじゃない?!
「そっかそっか〜!それはとっても良い事だと思うよ!
その尊い感情は是非大事にすべきだよ。
────しかし!!それで満足してはいけないよ。その先にあるもの、常にそれを求めるべきだ。」
好ましいと思う先────そう、愛だよ愛。大事大事。
「……その先……ですか……?」
不思議そうな顔をするレオンに俺はウンウンと頷いてみせた。
ドノバンは不誠実極まりない男とも言えるが、仕事とプライベートはきっちり分けるし身分が高いのに女性にビンタされても怒ったりしないし、実はとても優しい人であると思う。
そして何より強い!!
あの英雄様と戯れ付くにはかなり強くないと即死する可能性もあるのに、死なずにしかも相手が出来るなんてすごい!と日々感心している。
そんな強〜いドノバンの鑑定結果を一度みてみたいものだ────と考えたその瞬間……。
────ブォンッ!!!
そんな何かが起動する様な音が頭の中に響き、目の前にパソコンの画面に似た四角いプレートが突然目の前に出現した。
驚き背を仰け反らす俺を、レオンは増々不思議そうな様子で眺め「どうされましたか?リーフ様。」と聞いてくるが、とっさに言葉がでずポカンとしてしまう。
突如目の前に現れた、謎の四角いプレート。
それを見つめたまま俺はそれを恐る恐るそれを指差した。
「えっ……ええっと〜……。この四角いのが急に出てきたからびっくりしてさ。
なんだろう?これ……??」
そう答えた俺をレオンは怪訝な顔で見つめる。
「四角いのとは……?一体それは何処にあるのですか?」




