108 鑑定おじさん
( リーフ )
もしかしてコレ、レオンに見えてない??
「 ゴメン!何でもない! 」
俺は咄嗟に謝り、改めて現れたプレートを見ると……そこには、まるで何かの書類のように文字がズラリと書かれていた。
【 リーフ・フォン・メルンブルク 】
資質 < 魔術騎士 >
【 スキル 】
< 魔術騎士の資質 >(先天スキル)
< 魔術の心得 >
全属性魔法の適性を持ち、魔術発動に必要な知力、魔力量、魔力操作の伸びしろが(極)になる。
< 体術の心得 >
体力値、攻撃力、守備力、スピードなど身体的要素に対しての伸びしろが(極)になる。
────と、その後は俺が現在発現済みらしきスキルが、ズラーッと続く。
こ、これはもしかして俺のステータスというやつなのでは?
出現したプレートをジーっと睨みつける様に眺めながらそう思ったが、聖職者系の資質の者でもレアな分類に入る< 鑑定 >……その結果が何故突然表示されたのか??
ハテナで頭が一杯になりながら、ズラリと並ぶ文字達を目で追いかけていくと、そこで物凄く気になる項目を見つけてピタリと目線を止めた。
資質 < おじさん >
< おじさんの資質 >(先天スキル)
< 鑑定( 改 ) >
ある一定数以上の人間との関わりの記憶を持つ場合にのみ先天発現する。
相手の情報を強制的に開示させることができ、さらに鑑定時におこる発光現象はおこらない。
< 泥んこ根性 >( 先天スキル )
ある一定以上の努力限界を超えた記憶を持っていることで先天発現する。
自身の努力に比例しステータス値が極アップする。
< 楽天家 >( 先天スキル )
ある一定以上の感情起因の記憶を持つ事で先天発現する。
何事も前向きに考えることができる。
さらに精神汚染無効、精神攻撃に対し高い耐性値をもつ。
< 浄心 >( 先天スキル )
ある一定人数以上の他者から感情を向けられそれと向き合った記憶を持つ場合にのみ先天発現する。
呪いに対し高い耐性を持つ。
< 石の男 >( 先天スキル )
ある一定回数以上困難とぶつかり解決した記憶を持つ場合にのみ先天発動する。
肉体、精神的に常人を遥かに越えた我慢強さを持つ。
んん?!
んんんんん〜────????
俺は謎の資質であった< おじさん >についての記載を見ながら、これは俺が鑑定したのか!とやっと気づいた。
< おじさん >の持っている先天スキル、< 鑑定( 改 )> が発動し、突然俺の鑑定結果が目の前に現れたと、そういうことらしい。
鑑定の改良版とでもいうべきスキル……??
汗をダラダラと垂れ流しながら、もう一度そのスキル達を注視すれば、なんとこの< 鑑定( 改 ) >は、鑑定の際必ず起こる体の発光現象なしにスキルを使うことが出来るという優れものの様。
それが使える者がいるという話は聞いたことがないので、これは現在俺のみしか使えないユニークスキルのはずだ。
「 …………っ! 」
思わずヒェッ!と悲鳴が漏れそうになって、口元を隠した。
こんなのが戦闘時使われてしまえば、相手の手の内はお見通し。
こっそりと相手の情報を見放題というまさしくチート級スキルだ。
しかも凄いのはそのスキルだけではない。
恐る恐る口元から手を外し、ゴクリと喉を鳴らしながら、他のスキルにも目を走らせた。
スキル< 泥んこ根性 >
これは努力に比例しステータスをUPする強化系スキル。
簡単にいうと努力すればするほど俺は強くなれるということだが……これは努力次第では最強の強化系スキルかもしれない。
これも初めて聞くスキルだ。
そしてそれに続く< 楽天家 >と< 浄心 >は、精神に対する耐性スキルと最強属性とも言える呪いに対しての耐性があるというものだが────実はこれもと〜っても貴重なレアなスキル!
何故なら元々肉体と違い、精神は目に見えない分鍛えるのが難しいからである。
そうなると当然精神の耐性値を手に入れるのも難しく、それを発現できるのは────。
" 日々清く正しくを自身に課す聖職者 "
" それに特化した資質の者及び厳しい訓練を努力で乗り越えてきた者 "
" 困難な状況を生きる者 "
────が稀に発現するくらいだ。
更に ” 呪い ” の耐性ともならば、人の歴史上限りなくゼロに近い人数しかいなかったはず。
それこそ俺が知る限りは、歴代最高の聖女と呼ばれ、聖職者系資質の頂点に立つあの正統派ヒロイン< ソフィア様 >くらい……?
そんな凄いスキルを俺は持っている!
思わず胸を大きく張り、フンスッと鼻を吹く。
そして最後の< 石男 >は我慢が得意であるという事で、恐らく神官長が解読できたのは、これと< 楽天家 >の二つのスキルのほんの一部分のみだった様だ。
判読できなくて良かった〜。
こんなのがバレてしまえば大騒ぎになるところだった!
思わずはぁ〜と安堵の息を吐きだし、流れる汗を拭う。
もしこれがバレていたら恐らく俺は教会の保護対象になっていたかもしれない。
その可能性を考え、拭き取ったというのに、また汗が全身からドッと吹き出した。
教会の奉仕活動はモンスターの討伐ではなく、もっぱら人同士のトラブルや、呪い一歩手前の人の救済などもある。
要は人の内面を相手取ることが多く、この< おじさん >のスキルはまさにその天職といえるものだが……同時に悪意ある人間に利用されれば非常に困るスキルなわけで、教会はそんな人間を保護せざるを得なくなる。
そうするとレオンを虐める悪役がいなくなってしまい、レオン・ジ・エンドになってしまうところであった……。
ダラダラ流れる汗を今度はシャツの袖で拭き拭きしながら、改めて謎の資質< おじさん >について考えた。
< おじさん >はまさかの聖職系資質だった!
バットステータスとかいってすみませんでした!
心の中で謝罪しおじさんという生き物についての認識を改める。
おじさんという生き物は────……。
歳を重ねたことで身につけた鑑識眼!
ちょっとやそっとではへこたれない打たれ強さ!
ちょっと殴られた程度ではノーダメージの丈夫さ!
そして……呪われるくらいの強い感情を向けられてもイマイチ分からない鈍感さ!
その全てを持っているらしい。
俺も前世でそれを持っていたからこそ、今スキルという形で具現化していると……そうゆうことだね?
俺は思わず天を向きガッツポーズ!
おじさんバンザイ、俺おじさんで良かった〜!
ホクホクと満足気に微笑みながら何気なく隣に座るレオンに眼を向けると、レオンは穏やかな笑みを浮かべながらただこちらを見ていた。




