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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第三章

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104 マリオンの資質と職業について

( リーフ )


大きな鐘の音に驚き、その発生源の方へ視線を移すと、イシュル神像の上に設置されている鐘が鳴っているのが見える。


更に、鐘につながっている紐が二本、イシュル神像の左右に伸びていて、神官見習いさんらしき人達がそれを交互に引っ張っているのも同様に見えた。



「 ふー!ふー! 」


「 ゼィ……ゼィ……。 」



二人の顔は赤らみ、額には滝の様な汗が流れていて、紐を引っ張る度に荒い息を吐く姿を見ても、鐘を鳴らすには相当な力が必要なことが分かる。



そういえば、前に鐘がひとりでに鳴って、モルトとニールが驚いていたっけ……。



確かにこれを見れば、驚くのは納得だと、思わず頷いてしまったが……じゃあ、なんで鳴ったんだろう??


モヤモヤ〜と疑問が浮かんできたが、その直後に教会の奥に続く大きな扉が開き、中から2人の男性が姿を現した事で、意識はそちらへ向いた。



最初に入って来たのは、白い聖衣に金色の装飾品を控えめにつけた、四十代後半くらいの男性神官長。


続いて入って来たのは、手に長めのロウソクを持ちスタンダード聖衣に身を包んだ二十代くらいの男性神官見習いの人で、二人はゆっくりと歩きイシュル神像の前でピタリと止まる。



後ろにいた神官見習いの人は、像の周囲に置かれている数本のロウソクに火を灯すと、鐘を鳴らしていた2人の神官見習いさんもそれに合流し、前に立つ神官長の後ろにスッと控えた。


すると、談笑していた子たちはすぐに背筋を伸ばして神官長の方を向き、席に座っていた子たちも立ち上がり同じ方向へ視線を向ける。


俺もそれに従い、モルトとニールに続いて慌てて席を立つと、神官長はそんな俺達を見回し、ニッコリと笑った。



「 これから大人になるための一歩を迎えし神の遣い達よ。


それに立ち合うことが出来た今日この日に感謝します。


それではこれより資質鑑定を開始します。



────名を呼ばれた順に前へ。 」



神官長の言葉の後、神官見習いの人が紙のスクロールをバッ!と広げて、生徒の名前を大声で告げる。


すると、名前を呼ばれた生徒は神官長の前に立ち、お祈りのポーズをとって目をつぶった。



「 さぁ、神よ、どうかこの者の才能をお教え下さい。 」



神官長は、一度祈りを捧げた後、その子の前に両手をかざし目を閉じる。


すると────……。



────ポワッ!



突然神官長の体が白く光りだし、やがてそれが治まると……直ぐにその子の資質が告げられた。



「 あ、あれが< 鑑定 >か……。 」



その白い光は鑑定が無事に発動したという証らしく、神官長の体が光る度に、同様に前に立つ生徒たちの資質が次々と告げられていく。


それに喜んで歓喜する子、ガックリと肩を落とす子……と、三者三様の反応を見せる中、とうとうモルトとニールの番になった。



ドキドキ緊張した様子をみせながら資質鑑定を受けた二人の結果は、物語通りの< 造花師 >と< 獣畜師 >!


2人はその結果にガッツポーズをし、こちらに戻ってきた時もその喜びのままお互い手を叩き合って溢れる喜びを表現している。



それぞれの家業を考えると、二人の資質は天職だ。



将来その家業を継ぐため努力を続けてきた二人の喜びは良くわかるし、俺も自分のことのように嬉しい。


手を叩き合う二人に混じり、俺も二人の手を叩いていると────神官見習いの人が次に鑑定を受ける子の名前を言った。



「 ────次っ、マリオン・オブ・スタンティン様! 」



その名が呼ばれると、会場の空気はガラリと変わる。



何故かというと、基本高位の貴族のほうが強力な資質を持っていることが多く、更に< 伯爵 >という高い身分を持つマリオン。


一体どんな資質を持っているのか?と生徒たちの間に緊張が走ったからだ。


ざわつく中、マリオンは堂々たる動きで神官長の前まで行き、祈りのポーズで鑑定結果を待つ。


神官長はそんなマリオンに手をかざし、今までより一層魔力を込めて鑑定を開始した。


すると今まで同様、神官長の体から光が発し、それがやがて治ると────……。


────くわっ!


神官長は、大きく目を見開き声高々に結果を伝えた。




「 マリオン様の資質は < 魔操技士 >!


オールマイティ型中級資質です。


なんと素晴らしい事でしょう!


おめでとうございます! 」




その瞬間、マリオンのとりまきグループを中心に拍手と歓声が上がり、その場は一気に祝福モードになる。



滅多に出ない中級資質に加え、マリオンの資質< 魔操技士 >は魔力操作に長け、家業である魔導具制作に非常に適した資質なのは言わずともがな。


それ以外でも使い方によってはかなりの応用が効く【 オールマイティ型資質 】と呼ばれているものであったからだ。



この世界の職業は、大きく分けて3つに分けられている。



① 前衛職 


戦闘職の一種で主に近接系攻撃に適した者がなる前線で戦える職業



② 後衛職 


これも戦闘職の一種で主に後衛で闘うデバフやバフ、回復、遠距離型攻撃に適した者がなる職業



③ 生産職 


戦闘職以外の全ての職業の事




魔操技士は、なんとこの3つの職業全てにおいて強力なスキルを覚える可能性を秘めた資質であり、それを【 オールマイティ型資質 】と呼ぶ。


この【 オールマイティ型資質 】は、戦場でも攻撃からサポートまで幅広く使える能力を持っていて、使い勝手の悪い上級資質よりよっぽど重宝される傾向があった。


更には戦いの場で必ず使われる魔導具、それを制作、操作できるとあればまさに無敵モード。


この歓声と拍手も納得というわけだ。



モルトとニールは、貼り付けた笑顔で拍手をし、俺はそれに便乗し拍手をすると、マリオンは満足そうな笑みを浮かべながらコチラへとやって来た。



「 これはこれはリーフ様。ご機嫌麗しゅうございます。


私の鑑定が今終わりまして、予想以上の結果に安心いたしました。


そちらのお二人の資質は、私の全く存じない資質でしたが、さぞやリーフ様のお側に仕えるのにふさわしい────……。


優秀で!


素晴らしい!


貴族たる者が持つのにふさわしい!!……資質なんでしょうねぇ? 」



マリオンのグルングルンとトルネードの様に回ってから落とされる、非常に遠回しな物言いに、モルトとニールはニッコリとした笑顔で応戦する。


そのせいで、空気はピーン……と張り詰めてしまった。



もっと簡潔に言えば良いのになぁ……。



バチバチと見えない火花を散らせて戦う三人を見て汗を掻いてしまうが、実はこの物凄〜く分かりづらい言い回しは、貴族にとっては必須とも言える能力の様なのだ。



沢山の平民達の生活を背負って生活する貴族達。


そんな彼らがお仕事の際、自身の感情のまま直接的な物言いをすれば、下手をしたら攻め込まれる大義名分を与えてしまうことだってある。


だが、きちんと自分の意見も主張しなければ、自分の守るべき領に非常に不利な状況になることも……。


そうならないための話術、交渉力、そして精神力などなどを、こうして幼いうちからお互い言い合う事で遊びながら鍛えていると、そういうことらしい。



つまりマリオンは、モルトとニールにじゃれついている。



チクチク!


ニコニコ〜……!



マリオンとモルト、ニールのじゃれ合いを見守りながら、俺は自分の役割を悟った。


俺がすべきはニャーニャーとじゃれ合う猫ちゃん達を見守りつつ、じゃれ合いが激しくなってきたら一旦離す、その一点のみだ!



「 こら、マリオン!またそんな意地悪ばったり言って……。


モルトとニールは、これから君の受け持つ領を支える素晴らし〜いパートナーになるんだ。


これはつまり!一生涯を共にする同志……いや、親友と言ってもいいだろう!


ほら、仲良し〜仲良し〜♬ 」



そう言いながらマリオン、モルト、ニールを順々に指差していったのだが……三人はいつものお澄まし顔や貼り付けた笑顔から一転。


まるでゴキブリを食べてしまったかのような物凄い形相を見せた後、慌てていつもの顔に戻す。



「 そ、それでは失礼します!! 」



そしてマリオンは、怒鳴るようにそう言って去り、モルトとニールは笑顔のままチィッ!!と舌打ちしていた。


よく分からないが、嵐は過ぎた。


そう思って安心した、その時────……。



「 次!リーフ・フォン・メルンブルク様! 」



俺の名を呼ぶ声が聞こえ、視線を前に向ける。



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