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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第三章

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99 3年後

(リーフ)


────3年後。


カラ〜ンコロ〜ン♬


鐘の音が学院中に鳴り響けば、これで午前中の一般共通科目の授業はお終い。


「終わった〜! 」


鐘の音を聞き、俺は教室内の椅子に座ったままググーっと大きく伸びをした。


小学院生活も最終学年で、もう残すはわずか。

周りの同級生達もほぼ希望する進路は決まっており、授業も最終仕上げに入っているため、何とな〜くゆるい雰囲気が漂っている。


「今日もアントンのお弁当楽しみだな〜。」


これからお昼の時間ということもあり、そんなゆるい雰囲気は更にゆるゆる、ほんわかしているのを感じながら、本日のお弁当に想いを馳せた。


これからランチの時間を経て午後の授業となるわけだが、午前の共通科目とは違い、午後の授業は選択式で基本参加は自由。

そのため帰宅していく生徒達もチラホラ見られる。

つまり、自身の興味ある科目を選んで受講できる仕様となっているため、それぞれの個性がバッチリと出るのだ。


将来の家業がすでに決まっていて、家の手伝いがある子は帰宅。

商人や商いの家の子は計算や経営についての座学の授業。

農業や開発に関しての知識を広めたい子は農工関係の授業。

将来護衛や兵士を目指す子は剣術や魔法術の授業────などなど、前世で例えると小学校と言うよりは大学に近いのかもしれない。


それぞれバラバラの話題で盛り上がる子供達を見つめながら、良き良きと偉そうに頷いた。


つまり、小学院は全体的に学ぶと言うより、特化したモノを効率的に学ばせ、最短で社会人になってもらおう!という教育方針の様だ。

前世の記憶持ちの俺としては、非常に効率が良い勉強ができ、なんと今や成績は主席に次ぐ次席。


めちゃくちゃ嬉しい!……と言っても、子供相手なんだけど。


ハハッ……と乾いた笑いを漏らしながら、机の上に置かれた魔法についての本を見下ろした。


今の俺の一番の苦手科目は、ズバリ魔法。

前世にはなかった理論は一から覚えるしかないので、これには本当に苦労した。


ペラペラとページを捲り、記憶力との激しい戦いの日々を思い出して思わず苦々しい顔つきになる。


苦手の克服を目指し、午後の授業は優先的に魔法術の授業をとって死ぬ気で頑張ったこの三年間。


本当に自分を褒めてあげたい!


俺は、優しくその本を撫でた後、バックの中に入れた。


この後も魔法の授業があるので、必要な教科書をキチンと持ってお昼ご飯を食べるつもりだが、周りを見渡すと魔法の教科書を持って帰る子はほぼいない。


何故なら、魔法の授業を受ける子はほぼいないから!


教室の机に殆ど残されている魔法の本達を見て、腕を組んで考え込んだ。

そもそも剣や体術と違い、魔法はどんなに努力したからといって、『属性』という先天的な才を持ってないと使えない。

これは生まれつき備わっているもので、後天的に手に入らないモノ。

つまり、特殊な属性以外は無ければ魔力があってもこの先魔法を発動することは出来ないのだ。


さらにそれに加えて、使うときに必要なのが、いわゆるガソリン的存在の『魔力量』。


それが一定以上なければ、生活に使う程度の微力な魔法しか使えず、攻撃に使うレベルには至らない。


知れば知るほど魔法とは、知力!暗記!計算!知識!生まれつきの才能!

そしてそして〜……それを生かす魔力量! ────と、エベレスト並の難易度だなぁと思い知らされる。

そのせいで、この小学院でもかなりの人数の生徒達が在学しているにも関わらず、魔法を使える者は一握りというわけだ。


そんな中、俺が持っていると思われる【魔術騎士】の資質は、上級資質と呼ぶのに相応しく、<火、風、土、雷、水、光、闇>の全属性適正持ちのスーパー戦闘資質なのだ。


ちなみにレオンの資質【英雄】も同じく、全属性の適正があるザ・チート戦闘資質であり、そのためレオンも俺に付き合う形で同じく魔法術の授業を受講している。

しかし、その他すべての12歳前の子供たちの資質は不明で、入学時に魔法が使えるか否か分からない子達のほうが圧倒的に多い。


その為、魔法に関してだけは入学してすぐ<魔力の適性検査>を受け、魔法を使うための『属性』を持っているか否かを調べる検査を行う。

そしてその後は、『魔法に興味があるかないかで授業を受けるか選んで下さいね〜。』と、かなりゆるい感じでこちらに選択権を投げてくるのだ。

結果、その魔法の才能をたとえ持っていたとしても、学ばない事を選択する子達だっている。


まぁ、闘うことが嫌いな子供に無理強いはできないからね〜。


うんうんと頷きながら、ランチに向かうために残りの教科書、筆記用具類をカバンにしまい立ち上がろうとしたその前に────前方に座る2人の人物が話しかけてきた。


「お疲れ様です、リーフ様。本日もいつものところでよろしいでしょうか?」


「お疲れ様っす〜!今日母がチーズの小麦焼きを沢山焼いてくれたんで、皆で食べましょう。」


モルトの挨拶にニールが続くが、すぐにモルトはニールの腹に突きを入れると「言葉遣い!!」と注意し、睨み合いがジリジリと始まる。


この2人、最初の頃は思うところがあったのか俺とレオンに対し多少のぎこちなさを感じたが、今や仲良し幼馴染と断言できるほどの仲良しさんになってくれた。

ちなみにこの2人も魔法の適性がある資質を持っていて俺同様、午後は魔法術の授業を選択している。


物語通りでいくなら、モルトの資質は【造花師】という下級資質。

花を咲かせたり開発したりと、とにかくにかく花と名のつくものに非常に特化した資質で魔力の適正は、土と水。


対してニールの資質は【獣蓄師】という下級資質。

主に『獣』の名がつく生き物に関して特化している資質で魔力の適正は、土と風だ。


2人の資質はそりゃあもう家業との相性抜群であり、それぞれの家業は安泰だと大変喜ばれたが……残念ながら物語の中では、高学院にてリーフとともに失脚してしまったため、宝の持ち腐れとなってしまった。


物語と同じように、せっかくだからと現在必死に魔法の授業を頑張っている2人。

その努力が今度こそ将来の役に立てばいいと願う。


俺はガタッと音を立てて席を立ち上がると、迎えに来てくれた2人に笑いかけた。


「うん!いつものところで食べよう。ニールママさんの料理はいつも美味しいからたのしみだね。

さぁ、レオン、行くよ〜。」


俺はすぐ後ろに立つレオンを見上げながら声を掛けた。

────そう、見上げながら……。


「…………。」


ニッコリ笑いながら自分の成長について考え、密かに凹んでしまった。


俺の身長、物語のリーフ成分みたいなものが滲み出て少しは大きくなるかも!────なんて少しだけ期待していたが見事に裏切られ、俺の現在の体格は前世同様……。


身長、体重、ザ・平均!!

その全てが成長曲線の平均値をひた走っている。


そしてモルトは俺より少しだけ小さく、ニールは俺より少しだけ大きいかも?と1mm単位くらいで競い合っている中、レオンはそんな俺たちを遥か上から見下ろしてくるくらいに大きく育ってしまったのだ。


レオンの頭からつま先まで不躾に見ながら、くっ!と悔しさに唇を噛みしめる。


頭1個半……いや下手をしたら2個くらい違うかもしれないというほどの高身長、そして明らかに違う筋肉の付き方……。

俺たち同級生達がやっと薄くとも筋肉が付き始めたね〜くらいなのに、既にレオンは完璧とも言えるパーフェクトボディーを手に入れていた。


ごつい感じはなく、必要なところに引き締まってついている感じの……例えるなら、少女漫画にでてくる細マッチョ王子様のようなキラキラ男。

以前は明らかな栄養失調であったレオンの体はそれが改善されてから、つくし……いや竹の様にニョキニョキと伸び始め、3年であっという間に誰もを置き去りにして追い抜いていったのだ。


だから教室内にいても違和感が半端ない。

お猿さんの集団にゴリラが一匹混じっている感じ。

そのせいで、貴族の子供たちを迎えに来る護衛さんよりも下手をしたらレオンのほうが強そうに見えるほどだ。


そんなレオンに対し羨望と嫉妬を感じはするものの、その後は大きく育ったな〜と喜びの気持ちが湧き上がった。


やっぱり子供のあんなガリガリの姿は見ていて辛かったから、レオンの成長は本当に嬉しい!

本当に本当に嬉しい!────のだが……。


それ以外に一つ非常に困った事がある。それは────……。


「はい。リーフ様。」


そう言って、レオンはふっと控えめに笑った。


これなのだ。今現在俺を悩ます1番のものは……。


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