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おっさんは田舎に引っ込んでなぜか宇宙に行った  作者: 雪だるま


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レポート28:「相談をしてみる」

「相談をしてみる」



蛍光灯の明かりが周囲をはっきりと照らす。

既に外は闇に覆われていて、テレビをのんびり見る時間帯になっている。


「それで、二手に分かれるってこと?」


カカリアはテレビを見ながらせんべいをかじりつつそう聞いてくる。


「ああ、佐藤さんに報告して追加の人員を探さないといけないしな」

「まあ、確かに人は足りないよね~」

「今回に限っては見えない人が見えるようになる過程を調べないといけないから、仕方がないことなのよね」

「はい。もう私たちはあの石を確認できてしまっていますから」


俺たちは自宅に戻ってこれからのことを話していた。

ちなみに小鳥の宿の方は夜になって酒場以外は静かになっているのでこちらに戻っても何も問題ないということだ。


「じゃ、僕は向こうで情報収集だね」

「そうね。人の雇用は裕也しかできないし。私も向こうで一緒に情報収取ね。椿と交代ってことも考えたけど、向こうの町に入った記録もないし、問題が起こるかもしれないから、裕也のサポートをお願い」

「わかりました」

「それはいいけどさ。俺がいないことに関しては大丈夫か?」

「別行動って言ってれば大丈夫だよ」

「そうね。ちょっと出ているとでもいえばいいわ」


冒険者だしそんなものでいいのか?と不安もあったが、この2人は俺よりも強いし判断力もあるから、そうそう危険なことになるとは思えないからいいかと納得をする。


「しかし新しい人の雇用の相談に乗ってもらうことだが、大丈夫なのか? というか許可って下りるのか?」

「それに関しては私からは何とも、情報の捜査や隠蔽に関しては問題ありませんが、雇用してすぐにやめるなんてことは予想できませんから」

「そうだよなー」


いま佐藤さんが苦悩していたことがよくわかる。

たった数日でこちらも雇用する側になってしまうとは思わなかったが、確かにこれは問題だ。

優秀であっても続くかはわからない。


「まあ、そういう見極め方も含めて佐藤さんに相談しましょう」

「そうだな。あ、そういえば佐藤さんに連絡とってないな。今から連絡するのは……流石に失礼だな」


既に時刻は午後9時を回ろうとしている。

忙しい会社ならともかく、俺に気を使って好待遇出迎えてくれている佐藤さんにこんな時間に連絡を取るのはダメだと思う。

佐藤さんはこっちに根を下ろしているっていうし、明日だな。


「緊急であれば大丈夫ですが、今回のことはそこまで急でもないですからね。明日の朝に連絡でどうでしょう?」

「それがいいと思うわ。それまでに私たちも報告書をまとめておきましょう。それを渡すついでに話をしたらいいわ」

「だね。それが一番。っと見たいアニメが始まるからパソコンみよっと」


そういってカカリアが席を立って自分の部屋に戻る。

カカリアたちの部屋にはそれぞれ個人使用のパソコンが置いてある。

買ったわけでなく支給品だが、そこは超技術の世界なので、地球の技術レベルに合わせてダウングレードしてくれている代物だ。

リミッターみたいなものを使ってソフトを動かしているので、要求PC性能が上がればそれに合わせて性能を上げてくれるという便利なものだ。

まあ、あれだ旧ウィンドウ〇バージョンを動かせると思えばいい。

おかげで元から俺の部屋にあるパソコンはただの箱となってしまった。

データを移すために残しているぐらいか。

ちなみにこの支給品は最終的に型落ちになるので、というか元から型落ちらしくこっちが引き取ってくれていいとのこと。

廃品レベルで俺たちは助かるという格差。

ファンタジーの世界で俺たちの方が技術が便利だなーと思っていたら、上が出てくる悲しい現実。

人間謙虚に生きるべきだなと実に思う。

そんなことを考えているうちに見ていた番組が終わりCMに入る。


「じゃ、そろそろ休むか」

「そうですね。おやすみなさい」

「そうねー。朝一で報告書まとめるし、今日はもう休むわ。カカリアはアニメとか元気よね~」


ということで、俺たちは各々各部屋に戻って趣味を始めたり寝たり、軽く仕事をしたりとして夜を過ごした。

そして、俺もメールとかが来てないのを確認したあと布団にもぐりこんですぐに眠気が来たのだが……。


「……そういえば、この家の掃除進んでないよな」


人形騒ぎで下手に触れないということになり止まっている部屋の掃除、いつになったら再開できるのかと思いつつ意識が落ちた。

いや、お化けがいるような感じだし怒られるかな?

と、最後までバカなことを考えていた。



「……爽やかに目覚めるから、幽霊とかはいないか」


俺は朝日を浴びて自然に目が覚め、昨日のたわごとを否定した。

この家に住んでから畑仕事も含めて寝起きはいいし、爽やかだ。

そんなことを考えつつ、軽く顔を洗って着替えて軽く畑仕事だ。

とはいえ、そこまで大規模な畑ではなく、ちょっとした雑草を抜いて手入れするだけだ。

まだ本格的に畑を作っているわけでもないからな。

すると、家の方から椿がやってくる。


「おはようございます」

「ああ、おはよう」

「朝早いんですね」

「いや、今日はちょっと早めに目が覚めただけ。というか椿はいつもこんな時間に手入れしてくれてたのか?」


今の時間は畑の手入れをするには小一時間ほど早い。

椿たちには畑の手入れ方法を教えてはいるが、ここ二日ほどは俺たちは異世界で寝起きしてたから、この数日は椿だけで畑の手入れをしてたことになる。

つまり、無理をしてないかと思って聞いてみたんだけど……。


「まだ慣れてない仕事ですし、私が一人でしたので早めに起きてやるようにしています」

「なるほどな。まあ、無理はしないようにな。近くに園山さんもいるんだから」

「はい。たか子さんともお話をさせていただきました」

「え? 話してたのか?」

「私たちの様子をみにきたようです。田舎だから不慣れなことがあれば聞いてくれって」

「あの人本当に面倒見がいいな」

「気持ちの良い方ですね」

「だな」


そんなことを話しつつ俺たちが畑仕事をしていると、遅れてセージとカカリアもやってくる。

この2人は時間通りにやってくる。


「おはよう。家にいないと思えば先に出てたのね」

「おはよー。というか、2人とも早起きすぎない?」

「おはよう。ちょっと目が覚めてな」

「おはようございます。私は、最近は一人だったので早めに起きてますから」


そんな挨拶をした後4人でさっさと畑仕事を終えたあとは別々の仕事に分かれる。

俺と椿は佐藤さんに連絡をとるために残り、セージとカカリアは報告書を俺たちに渡したあとは惑星調査へと向かう。



「……ということで、新しい人員の補充を考えているんですがどうでしょうか?」

『ふむふむ。なるほど……』


俺はさっそく表向きの就業時間になってから連絡を取ると佐藤さんはすぐ出てくれ俺の話を聞いてくれた。

さて、人員の補充の許可は出るのか、それとも今日中に答えは出ないかな?

色々検討することもあるだろうしなと思っていると……。


『そうですね。簡潔にいいますと人員の補充は認めます』

「……えーと、そんなに簡単に決定していいのでしょうか?」

『簡単ではありませんよ。ちゃんと椿さんたちからの経過報告書も届いていますし、要件を満たしているからこそ許可を出しているんです。今のままでは調査が進まないというのは事実です』


確かにその通りではあるが、こんなに即断即決みたいな感じでいいのだろうかと不安にはなる。

まあ、許可が出たことは嬉しいことだから素直に喜ぶべきか。

とはいえ……。


「はい。ですが、どういった人を勧誘していいのかがさっぱりなんです。佐藤さんの方からこういう勧誘とか人員の補充はやってもらえるのでしょうか?」


そう、問題は許可が出たとはいえ人材がいるのかという話だ。

俺が人に声をかけて回るのはそれはそれで問題があるような気がしてならない。

だから俺を雇用した実績がある佐藤さんに何かそういう補助はないかと聞いてみると……。


『うーん。人材に限っては本当に難しいんです。佐藤貴金属の職員を回すことはできますが、それはあくまでも本当にどうしようもないときに限ります。見えない石のことを私以外にも確認するための中立人員でもありますから。かといって、私が探すとなると、その場合野田さんが受け持っている以外の惑星調査に回したくなります』

「あー、確かに」


惑星調査員は今のところ人員不足だ。

佐藤さんが勧誘した人物ならば俺以外の惑星の調査に向かわせる方が効率がいいだろう。


「では、何かアドバイスとか雇う条件に関してなど、椿たちが把握している以外のことなどはありますか?」

『いえ、報告書に書かれている内容で大丈夫です。やめるにしても記憶操作などは簡単ですからね。大事なのはやめないということですが……。それが一番難しいんですよね』

「ですよねぇ」


仕事を続ける、やめるとかは本当にわからない。

俺が仕事を辞めて田舎に引っ込んでいるのがその証拠だ。


『かといって勧誘も簡単かというとそうでもないんですよね。まず信じてもらえるかも難しいですし、そのあと欲にまみれないとも限らないですから。そういう意味での人物を見極める力もいります。まあ、そこらへんはある程度経歴や友人の関係性を調べればわかりますが』


勝手に経歴とか友人関係を調べるのはどうかと思っていたが、被害が大きくなることを考えると絶対に必要だなと思ってしまう。

会社のトップはこういうことを考えているんだなと思うと胃が痛い限りだ。


「なかなか、簡単ではなさそうですね」

『そうですね。ですが、探さないと見つからないのも事実です。これから調査している惑星で拠点を作ることも考えているようですし、現地で雇う人も出てくるでしょう。その練習と思ってやってみてください』

「……わかりました。まずは探してみることにします」

『はい。頑張ってください。まあ、本当に無理であればこちらからも手助けはいたしますのであまり深く悩まず試してみてくださいね」

「はい」


そういうことで、俺は雇用の許可をもらえたが実際誰を雇えばいいのかという問題に突き当たることになる。




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