第70話:リューズ王国に着きました
船に乗り込むと、急いで甲板までやって来た。ゆっくりと進みだす船。
「皆様、お見送りありがとうございます。それでは行って参ります」
手を振ってくれる方たちに、大きく手を振り返しながら叫ぶ。皆思い思いに叫んでくれた。
大っ嫌いで、一刻も早くこんな国を出たいと思っていたあの頃。でも今は、なんだかこの国が名残惜しい。そう思わせてくれたのは、きっと…
「アントアーネ、外は寒いよ。一旦部屋に入ろう」
「ええ、そうしましょう。ブラッド様、大好きです。私の傍にいてくださり、ありがとうございました」
ギュッと腕にしがみつき、ブラッド様に気持ちをぶつける。
「どうしたのだい?今日のアントアーネは、いつも以上に可愛い事を言ってくれるね。俺の方こそ、傍にいさせてくれてありがとう。こうやって一緒に船に乗っているだなんて、まだ夢のような気がしてならないよ。
さあ、こっちにおいで。10年前は色々と探索して、酷い船酔いをおこしたのだろう?もしまた船酔いを起こすと大変だ。極力のんびりと過ごしてくれ。それからこれ、船酔い予防に良いとされるお茶だよ。念のため飲んでおくといい」
「あの時は初めての船で、興奮しただけですわ。それに帰りは大人しくしていたので、酔う事はなかったのです。ですから大丈夫ですわ」
プイっとあちらの方向を向く。私は知っている、このお茶はびっくりするほど苦いのだ。10年前も帰りの船で飲まされたが、あまりの苦さにもう二度と飲むものかと誓ったくらいに。
「アントアーネは困った子だね。でも、飲んでおかないと。ほら、こっちを向いて」
無理やりブラッド様の方を向かされたと思うと、唇が重なる。そして、ものすごく苦い液体が口伝いに流れ込んできたのだ。
「ブラッド様、酷いですわ。こんなものを無理やり飲ますだなんて!」
急いで水を飲み、抗議の声をあげた。
「こうでもしないと、君は飲まないだろう。それにしても、本当に苦いね。俺もこの苦さを味わったのだから、おあいこだよ」
何がおあいこよ!でも…私の為にこんな苦いお茶を口に含んでくださったのだから、感謝をしないのいけないのだが、どうも素直になれない。
その後、お茶のお陰か酔うことなく、船の旅を楽しむことが出来た。
2日後
「ブラッド様、リューズ王国が見えてきましたわ。懐かしいですわ、10年前と港は変わっていないのですね」
「そうだね、港だけでなく、街全体も10年前とほとんど変わっていないよ」
そう教えてくれたブラッド様。船の上からリューズ王国の街を見ていると、10年前の事が鮮明に蘇ってくるのだ。あの時過ごした時間は、私にとってかけがえのない宝物。
「一度部屋に戻って、下船の準備をしよう。こっちにおいで」
ブラッド様に連れられ、一旦部屋に戻ると、そのまま船を降りる準備を始める。そしていよいよ、リューズ王国の港に足を踏み入れる瞬間がやって来たのだ。
来る前までは、ものすごく不安だった。でも、なぜだろう。リューズ王国に着いた瞬間、そんな不安が一気に吹き飛んだのだ。
今日から私は、この国で生きる。大丈夫よ、自国であれほどまでに辛い経験をしたのですもの。もうちょっとやそっとの嫌味や嫌がらせなら、余裕で耐えられるわ。そう考えると、怖いものなしだ。
意気揚々と港に降り立つと。
「「「「ブラッド(様)、アントアーネ様、おかえりなさい」」」」
なんとたくさんの貴族が、私たちの出迎えに来てくれたのだ。あまりの多さに、目を丸くする。
その中には、見覚えのある人たちも




