第59話:ブラッド様のお別れパーティです
貴族学院から戻ると、お互いの両親とお兄様、イリーネお姉様が待っていてくれた。
「「「「「ブラッド(様)、アントアーネ(ちゃん)、卒業おめでとう」」」」」
「皆様、お出迎えして下さったのですか?ありがとうございます。無事卒業できましたわ」
皆に貰ったばかりの卒業証書を見せた。
「アントアーネ、よく無事に貴族学院を卒業したわね。それもこれも、ブラッド様のお陰ね。本当にありがとうございました。さあ、お腹が空いているでしょう。お昼にしましょう。2人の卒業祝い…と言いたいところだけれど、夕方からはブラッド様のお別れパーティを開く予定だから、お昼は軽めにしておきましょう。
今回は王太子殿下と王太子妃殿下、さらに公爵家の方たちもいらっしゃるみたいだから、気合を入れて準備をしないとね」
「王太子殿下夫妻もいらっしゃるのですか?それは大変ですわ。お母様、昼食なんて食べている暇はありませんわ。すぐに会場の準備に取り掛からないと」
まさかこんなしがない伯爵家に、王太子殿下夫妻がいらしてくださるだなんて。無礼があったら大変だ。すぐに準備に取り掛からないと。そう思ったのだが…
「アントアーネちゃん、そんなに焦らなくても大丈夫よ。あなた達が卒業式に行っている間に、私たちがある程度セッティングをしたし。今も使用人たちが、準備を進めているわ。とにかく今回のパーティは、めいっぱい楽しみましょうね」
なぜかおば様が、ニヤリと笑ったのだ。
「もう、リマったら。とにかく、あなたは何も心配する必要はないのよ。昼食を食べたら、着替えて会場を確認してちょうだい。せっかくだから今夜、あなた達が婚約する事と、アントアーネがリューズ王国に行く事を発表しましょう」
「お母様、何をおっしゃっているのですか?そんな事をしたら、ブラッディ伯爵令息が、何をしでかすか」
私が国を無事出国するまでは、公にするべきではない。いいや…あの男の事だから、もしかしたらリューズ王国に乗り込んで来たりして…考えただけで、頭が痛くなる。
「アントアーネ、もうあの男の事を考えるのは止めよう。俺が必ず君を守るから。どうか俺たちを信じてほしい」
ブラッド様が私の肩に手を置いて、優しく語り掛けて来たのだ。
「ブラッド様がそうおっしゃるのでしたら…」
そんな風に言われたら、私も従うしかない。でも、本当に大丈夫なのかしら?一抹の不安がよぎる。
それでもなんとか気を取り直して、昼食を頂いた後は、私も会場のセッティングのお手伝いをする。とはいえ、私はただ口を出すだけで、実際に動くのは使用人だ。今日は急遽今回の為に雇った使用人も、複数名来てくれている。
沢山の人をお迎えするのだ。我が家の使用人だけでは、とても手が足りないのだ。
「お嬢様、そろそろ支度をしましょう」
「もうそんな時間?わかったわ」
私専属の使用人たちが、いつもの様に磨き上げてくれて、ドレスを着させてくれた。今日もブラッド様の瞳を意識した、青いドレスだ。
着替えを済ませると、ブラッド様たちの元へと急ぐ。
「アントアーネ、今日の君はまた、格段に美しいよ。さあ、そろそろお客様たちがいらっしゃる時間だ。一緒に迎えよう」
ブラッド様とそれぞれの両親、お兄様とイリーネお姉様と一緒に、お客様たちを迎え入れていく。ブラッド様が言っていた通り、クラスメートを始め、沢山の貴族たちが来てくれた。
そして、本当に王太子殿下と、王太子妃殿下、さらに公爵家の人間たちも来てくれたのだ。こんな高貴な身分の人たちとお会いするだなんて、きっと一生ないだろう。あり得ない程緊張してしまう。
「アントアーネ、随分と緊張している様だね。でも王太子殿下も王太子妃殿下も、とても気さくな人だから、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「ブラッド様は、両殿下をご存じなのですか?」
「ああ、何度かあった事があるよ。今日のパーティを、とても楽しみにしていてくれたみたいでね」
「まあ、そうだったのですね。ですが、どうすれば両殿下に喜んでもらえるのでしょう…」
我が家は所詮伯爵家だ。一体どうすればいいのか、さっぱりわからない。
「その点は、俺が何とかするから。アントアーネは、俺の傍にいてくれるだけでいいよ」
「分かりましたわ、私はブラッド様を、信じますわ」
きっとブラッド様なら、何とかしてくれる。そんな気がしたのだ。
「ブラッド様…あの…お手洗いに行って参りますね」
さっきジュースを飲んだせいか、急にお手洗いに行きたくなってしまったのだ。
「すぐに戻ってきますから」
こんな時にお手洗いにいきたいだなんて。本当に空気が読めない体だ。あら?ここのお手洗いは、故障中ですって?あら、こっちも。おかしいわね。どんどん奥の方に向かい、やっと使用できるところを見つけた。
こんな時に、3つのお手洗いが故障だなんて、一体どうなっているのかしら?ホールに戻ったら、すぐに使用人に伝えないと。
急いで用をたし、戻ろうとした時だった。
「アントアーネお嬢様ですね。一緒に来てもらいましょう」
数名の使用人が、私を囲ったのだ。そして私に襲い掛かって来た。
「何なの、あなた達!いや、離して!!」
そのまま口を覆われ、一瞬で意識が遠のいてしまったのだった。
次回、ラドル視点です。
よろしくお願いします。




