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強まる雨足。





現在保管している全競走馬へのパッチテストの結果、オールクリーンであった。

そして、時刻は15時を前にして撤退作業を完了し、才亮らは関東庁へと向かう彼女を見送ろうとした。


「てか....なんで、お前がわざわざ」


政治的な意図をクリアするために彼女が適任ではあるが、彼は引っ掛かっているつっかえを聞かずにいられなかった。


「えぇ、まぁー飼ってるお馬さんを見にきたかったのん」


自動タクシーが到着して扉を開いている中、彼女は一度立ち止まって口を開くがまたもやはぐらかす。


「.....そうか」


彼女の澄み切った暖かな瞳を見通すが、何も見えずつっかえを塩漬けにした才亮は待たせているプラプトルを呼ぼうとする。


「...あ、そうそう。」


重そうな荷物を軽々と積み終えた彼女は、ゆっくりと彼へと近づき大きな瞳で彼を捉える。


「?」


「厩舎の一室だけ少しだけ綺麗だったの、そこに居たレイホースちゃんも慣れてない感じでね。外にいた青い帽子の青年。あの子も私と一切目を合わさなかったよー」


「....ダコウと同じやつか?」


やろう...土壇場で言いやがって...と思いつつも、片方では冷徹に頭が回る。


「ん、はて....なんのことかのん?」


「(それは自分で調べろって所か...)....いや、ご苦労だった。」


その辺は、いち召喚獣医師の仕事の範囲ではないと言った様子で少々癪であったが、彼女が話した第一情報は全容を鮮明にした。


「ふふっ...じゃーお礼は後ほど。」


「っ....ツゥ」


自動タクシーへ乗ってにこやかに手を振る彼女を見送る中、最後に彼女がわざわざドーピング検査程度で来た動機がわかってしまい。また厄介なやつに貸しを作ってしまったと、一歩出遅れた事に曇行きが怪しい空の下で反省した。


その後、競馬場近くのデパートで昼飯を食っていた時雨を連れ戻し、今一度東村山競馬場へと向かった。


「...何かお忘れ物でしょうか?」


見送った筈の金髪の召喚獣管理官とその部下が再度訪れた事に、中間管理職のスーツの男は脂汗をかきながら彼らを迎えた。


「....いや、少し見回っても良いか?」


「っ...っとぉ...何か問題でもございましたでしょうか?」


おそらく彼自体は関係ないだろうが、脂汗が額ににじむ。


「構わないか?」


「わ、わかりました。何かありましたら、連絡を頂けると助かります。」


いちいち答える必要はないため、質問に質問で返して管理官権限を通した。

そして、件の厩舎で休んでいる馬型召喚獣らを眺めていても、時雨からしたら専門家の西条が認知できる以上のものが新たに発見されるようには思えなかった。


「....やっぱり、特に問題ないですよ。検査だってただの定例検査ですし」


「いや、西条は嘘をついている。」


「...え、は...はい?それって..なんの意味が...」


世の中には利得にならない嘘をつくどっかのピエロみたいな事をする人間がいるものだが、今回の彼女に関してはその限りでなかった。


「いや検査以外の話だ。厩舎の外の飼料をいじってる奴、さりげなく見てみろ」


「....っ...あ...あの人ずっと居ますね。」


厩舎外にて検査開始前から彼らが再度訪れた際にも、ジーパンみたいな作業着を着た青年は飼料管理や掃除、拭き掃除など厩舎に張り付くように同じような仕事ばかりをしていた。


「....時雨。お前は一応待機してろ。怪しいやつがいたら捕まえていい」


「え...ぁ、はい。」


もう一人組織ぐるみか青年と同じ役割を持った誰かが控えている可能性があったため、彼は彼女を厩舎近くに待機させて青年の方へと向かった。


「...なぁ、少し時間いいか?」


「っ...っう!!」


飼料を積み上げては崩していた青年へ声を掛けると、持っていたスコップを才亮に投げつけて駆け出した。


「図星かよ...っ」


わかりやすい反応に手間が省けたと厩舎の中へと入った彼を追う。


「....ん...(隠し通路か)」


ーーーーギギギギギギっ...ピィーーー!!!


厩舎の排水溝が開いていたため、そちらへ意識が向かうがその瞬間厩舎の扉が全て開き口笛のような金切り音鳴り響く。


『ブルヒぃぃ!!』

『ウヒルゥゥゥ!!』

『タルゥゥウ!!!』


その音に呼応して厩舎で休んでいた馬型召喚獣らは一斉に興奮して厩舎の外へと駆け出し、うち三分の一が通路に立っていた才亮へと突進してきた。


「っ...!...やろう...そこかっ!!」


ジャンプし突進してくる馬々を避けて飛び越え、真っ赤なツノの生えた馬型召喚獣の側部にしがみついていた青年を見つけ、天井のライトへとイッタンモンメンを伸ばして捉えようとする。


「っ...ツゥ!!」


「っ...本田タイプか」


馬に乗った途端空気が変わり自らの手足のようにして、イッタンモンメンの追従を見事に交わし、才亮はニヤリと口角を上げた。


「わぁっ...あー!あの人逃げちゃいましたよ!!」


厩舎外で青年の仲間を探していた時雨は、厩舎から飛び出てきた馬々を交わした中でその青年が颯爽と横切るっかのを確認し叫ぶ。


「....いや、もう捕まえた。」


勝ち確を宣言した才亮は視線を小さくなっていく青年へと向けて、右腕に巻かれたイッタンモンメンを立てると、彼の糸は既に青年を捉えており急速に彼の元へと引き戻した。


「っ....かぁっ...はぁ...っ...」


「少し時間いいか?」


荒々しく引き回し刑のように引き戻された青年は、再度悪人面猛々しい彼の質問へ帰った。


「っ...ぅ....俺は何も話さない。」


「お前は見張りか?」


「っ..」


決意表明は勇ましいが、彼の質問への反応は素直であった。


「誰かに頼まれて、そいつはお前の親しい人、同僚か」


「......」


完全に顔を下に向けて黙秘するが僅かに頬筋が強張ったのを、金髪の管理官は見逃さない。


「そいつは、ここにはいないよな。最近この競馬場から出て馬がいたな。名前は...確か」


「っ...あいつは走るつもりだ。どんな犠牲を払おうと...」


西条から得た情報で青年が何を守っているのか、その輪郭を刺激すると、既に全部ばれていると勘違いした青年は諦観と後悔に満ちた表情でそれを話す。


「そいつは今どこにいる?」


青年の中の後悔の念を感じ取った彼は、湿った地面へ膝をついて縛られている彼の目線へと合わせる。


「っ....立川競馬場。ケイスケを止めて下さい....」


止められなかった後悔で涙する青年は金髪の管理官の顔を見上げ、掠れ声で現在進行形で進行している事案へと続く場所を呟いた。


そして、彼らは直様プラプトルに乗って立川競馬場へと向かい、まだ情報が十分ではない中、小雨が降り始め視界が濡れる。


「ーーー・・っ....才亮さんっ!応援呼ばなくて大丈夫ですか!?」


「...あぁ。どの道、今回は警察も間に合わない。」


「えぅ!なんでですか?!」


「運営者は10分後のレースの払い戻し手数料を払いたくないために、知らなかったで通すつもりだ。」


あと10分後に始まるレースにて、出場するケイスケが乗るおそらく何かしらの細工を受けた馬型召喚獣を確保するには、競馬場の運営者へと連絡をつける必要があるが、10分後に始まるレースの払い戻し手数料を支払いたくないがために、連絡不備やらの理由で聞き入れる可能性は低かった。


「っ...しかし...」


雨の日は飛行移動用召喚獣テラツバメも乗り気ではないため、即応科メンバーも今から立川競馬場へと向かわすには時間が足りず、武田が復活するまで夜に備えて玄道と汐留は待機させたい意図は彼女にも伝わっていたが、新人である自分では対応できるか不透明であった。


「おい、他に情報はないのか?」


「っ...ケイスケの競走馬は緑毛で茶葉ようなものを背中と足腰に纏ってる、牝馬です。体力はありますがスプリント力が長く続きません。」


「男の能力は?」


「バフですが、少し体調が良くなるとか程度でそこまでわかりやすいモノじゃ....」


「っ....」


「スゥ....」


一緒に連れてきたジーパン青年へ切り替えてケイスケと彼が連れた競走馬の情報を聞くにつれて、才亮と時雨の顔は曇る。


「...これまでの成績は?」


「30戦30敗で最高で下から三番目とかでした。」


「っ...」


それを聞いた金髪の管理官の締まる視線は前へと切られ、空に積もる雨雲は密度を増し雨足は強まる。




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