一か八か
そうして、ちょくちょく話ていた点検用のスライムとすれ違いながら数十分ほど歩いた所で、少し環境に慣れて先頭をライトを照らしながら歩いていた時雨は突然立ち止まった。
「.....ん?」
「どうした時雨」
「...あれ、ここ、行き止まりですね」
才亮がそう聞くと、時雨は進行方向の壁に手を当ててながら彼らの方を向いた。
「ん....っ!時雨!逃げるぞ!!」
「うわっ?!...え、なんで....」
才亮は玄道が照らした壁の上方を見て、時雨の首根っこを掴んで来た道を逆走した。
「いいから!耳塞げ!!」
「うぇ?!...はい」
ーーーーーズザァァァァーー!!!!
スライム配管内で、戦闘機の通過音に似た逃れようのない叫び声が鳴り響く。
「わぁぁぁぁっ!なんですか!なんなんですか?!あれーっ!!!」
瞑っていた目をすぐに開くと、目の前にはサンドワームのような丸呑み食い気の蛇がうねりながら、こちらに向かってきた。
「ボス!何か策は?!」
「目当てのやつだが、とにかく逃げるぞ!!」
「はぃぃぃ!!」
首根っこを掴んでいた時雨を前へ進行方向に投げて、とにかくガンガン逃げる事に集中した。
「これじゃねぇ、いや、これでもねぇっ....あったぁぁっ!!」
防護服の関係でろくな道具を持って来れなかった彼は、防護服の腕部分を解除して懐内の道具から唯一使えそうな道具を取り出し投げた。
『グガぁぁぁ....』
赤い閃光が配管内に煌めくとそれをモロに食らった蛇型召喚獣は一瞬怯みを見せた。
「ん...止まった?」
「あー、ピット器官までは麻痺らねぇやつだった...」
走りつつ見返す時雨であったが、蛇特攻の道具には十分でなかった。
『ギュガァぁぁぁぁ!!!』
「ヤァぁぁぁ、怒っちゃいましたよ!」
「面目ねぇ..」
バチキレた蛇型召喚獣は、さらに速度を上げてこちらに向かってきた。
その後、10分ほど他の道具も蛇型召喚獣に投げてはみるが、特殊な発信機を付けれた以外は効果は見えずに、怒りは衰えるところを知らずに蛇型召喚獣は加速し続けて彼らのケツに迫りつつあった。
「...スライムはなぜアレを吸収しない?」
「奴の表面は削れてる...が、すぐに再生してるせいだな」
玄道が才亮にそう聞くと、チラチラと蛇型召喚獣を観察していた彼は再生持ちであると断定した。
「勝手口はまだ先か...」
「あと10分か...それまで逃げ切るしか....っ!」
防護服の関係で思うように反撃できない彼らは打開しあぐねていると、才亮は何かに気づいたようだった。
「才亮さんっ!何か策があるんですか!」
「あぁ....」
切羽詰まっている空気の中から光を感じ取った時雨にそう聞かれながら、才亮はうる覚えの記憶を頼りに頭を回す。
スピードは落とせない。
落とした時点で、すぐに奴の腹の中に入ってしまう。
スライム配管を削って外に出るにも地中のため余った空間がなく、土を掘るにしても時間が足りない。
扉に着くまで、10分は要する....
.....10分...
....っ!!
「玄道っ!一瞬で良い!鱗で配管せき止めろ!!」
「了解した。」
玄道は脊髄反射で了承し、拳を突き合わせ、腕先から防護服を突き破ってウロコノムシの鱗を展開した。
『....グギィ?!』
突如目の前に現れた緑鱗の薄壁に勢いそのままに突っ込んだ蛇型召喚獣は体をのけぞらせて反動を分散させる。
「...っ....ぐっ」
防護服を突き破り、足元に緑鱗を纏い踏ん張る玄道はその衝撃をモロに受け、足元の鱗は既に溶け始めている。
「っ...玄道さっ...」
「時雨っ!ここを深淵で削れ!」
明らかに無茶している玄道に思わず声を上げそうになるが、才亮が彼女を呼び彼がいる数歩前の地点を指差す。
「っ...りょう、かいっ!!クゥさん!」
「..スン...プサァ」
保護服の中でも耐え難い匂いに耐えながら、阿吽の呼吸で才亮が指差した地点を深淵で削り取った。
「...一か八か」
「玄道さん!こっちです!」
「...っ...あぁ!!」
他部位の防護服が衝撃ではち切れる中、玄道は彼女の掛け声と共に鱗のバリケードを据え置きして出来た数秒で彼女の方へと走り、深淵で削られた穴の中へと滑り込んだ。




