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武田フィーバー

いつも通りの時間に通勤してきた時雨は即応科棟前で掃除をしていた玄道に挨拶し、内務室の扉を開いて皆へ挨拶をした。


「ーー・・おはようございまーす!」


「おはようさん。」


が、いつもの出来る女感ムンムンの汐留のコーヒーの匂いがなく、内務室に居たのは大量の資料を読み込んでいる才亮ただ一人であった。


「あれ...汐留さんは...」


コーヒーを飲んでいる姿に見惚れているのを、汐留は欲しがっていると思って習慣的に紅茶を淹れてくれていたため、今日はそれがないのかと少しがっかりしていた。


「汐留は朝方から横須賀に応援に行ってる。武田はフィーバータイム中だ」


「そうですか....って、フィーバータイムって何ですか?」


才亮は資料から目線を切る事なく淡々と伝えたが、彼女は最後の単語に引っかかっていた。


「あー....武田は群馬でオニダルマ、ジブラシット、ヒナミズキと連日戦って、フロー状態になってる。」


「わぁお...どれも近接系ばっかですね....」


時雨がまだ数ヶ月も経ってないと失念していた彼は改めて説明すると、彼から出た召喚獣たちの名はどれも強力かつ属性持ちの召喚獣ばかりで感嘆と呆気に取られていた。


「....うーん、今更ですけど流石に武田さん一人で対応しきれるんでしょうか」


クロトラの時、完全に相手の動きも、召喚主の少女が近づく気配も把握していた彼の実力を疑っているわけではないが、連日勤務をフォローするために応援が必要か才亮に問うた。


「あーなったら、あいつ一人でやらせた方が良い。一応、警察が事後処理とか補助してるだろう」


才亮は楽しんでやっている武田をそこまで心配しておらず、いつもの事だと水を飲みながらそういった。


「うーん...武田さんって、寄生型なんですか?」


「違う。まぁ俺が知る範囲にはなるが」


基本武田は一階か給湯室くらいしか行かないため、そういえばと彼の召喚獣について聞くタイミングがなく、モラル的には良くないのを承知の上才亮に聞くと、資料から目線を外してきっかりと否定した。


「え、じゃあ....やっぱり、武田さんは素なんですか?」


寄生型召喚獣イッタンモンメンと契約している才亮から見て、自分の同じ型ではないといった事から、寄生型の線は消え自力で渡り合っているのが有力となった。


「....議論の余地はあるな」


付き合いは多少あれども、彼の強さが自力であるかそうでないかははっきりしていなかったため、彼は資料を机に置いて顎に手を当てた。


「...どうなんでしょう...私たちも召喚獣由来の食べ物やスライム配管を通して水を摂取してますけど、食べた日と食べてない日では体力が多少は付きやすくて疲れにくいって言うのは感じますが....」


「継続的に召喚獣由来の食べ物を食べて、その召喚獣の因子を継承する可能性...か、その辺は何度も否定されてる」


「私も大学時代結構その辺の研究を読み漁ってましたけど、全部の研究結果を総合するなら、ただ現状はその可能性は低いというだけで、ないとは断定できてないんですよね。」


寝起きのクゥさん眠い目を細めながら、難しそうな話をしている彼女と才亮との顔を交互に見ていた。


「市販のもの以外にまで範囲を広げるのであれば、確率的に言えば無いとは限らんのは事実だな。食べた召喚獣の性質自体が捕食者に能力や属性を継承するという可能性はある。」


「何か、それらに準ずる植物型かあるいは菌類型の召喚獣をたまたま食して、無茶な鍛錬に耐えきれるような肉体が形成されやすくなった...とかですかね。」


「いい線言ってるかもな、あいつYAMA育ちだし山菜とかキノコを雑煮にして食ってとか言ってたしな」


「あー...なんか納得します。したら...武田さんが育った山自体が御神体として祀られていたのなら...」


師匠らと同じ匂いがしたためその辺は解釈一致しており、考察進めた彼女であった。


「「.....」」


(武田さんが...)

(タケが....)


ーーーかかかっ!一斉にかかってごい"っ"!!

ーーードラドラァっ!

ーーーフンヌっ!!


しかし、彼女も才亮も神格とまではいかなくとも神性を持った武田の風貌はいつも見るような猪突猛進の特急列車の彼からは想像出来ず、同じような感想を心の内に呟いた。


((いやいや、無い無い。))


一方、その頃、クールダウンも兼ねて入っていた水風呂から出た武田は癖の強いくしゃみをしながら、タオルを股に跳ね返した。


「ーー・・ぶらっぼぉうっ!ズズっ...山間は冷えるのぉ」



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