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第60歩目 生きていた喜び!


前回までのあらすじ


なぞの子狐を保護した


□□□□ ~生きぬく力~ □□□□


side -???-


なぜか暗い暗闇の中にポツンと一人でいた。


ちゃんと意識はある。でも体が動かない。動かせない。

手の感覚はあるのに動けない。足の感覚もあるのに動かせない。そして声も・・・


ただこの暗闇の空間にポツンと佇むことしかできない。


ここはどこだろう?

なぜ自分はこんなところにいるんだろう?


そもそも自分は何者なんだろう?


何も思い出せない。

ここにいる理由。そして自分が何者であるかさえも・・・


暗闇。

この謎の空間も、そして自分自身も、全てが真っ黒だ。


でも、一つだけわかったことがある。

ここには何もなくて、そして自分以外には誰もいない。


『ここなら誰にも殴られない』  ・・・殴られる?誰に?

『ここなら誰にも蹴られない』  ・・・蹴られる?誰に?

『ここなら誰にも怒られない』  ・・・怒られる?誰に?

『ここなら誰にも辱められない』 ・・・辱められる?誰に?


『ここなら・・・』

         『ここなら・・・』

                  『ここなら・・・』


何者かさえわからない自分自身に、頭の中で次々と浮かんでくる謎の言葉。

どういうことか全くわからない。


でも、それしかすることがないのでとりあえず聞き続けてみた。


『ここなら誰も死ななくて済む』 ・・・死ぬ?誰が?


───ずきッ!


.....ッ!?


痛い。なにかが痛い。

自分自身の何かが痛い気がした。



また謎の言葉が浮かぶ。


『ここなら誰の死も見送らなくて済む』 ・・・死を見送る?誰が?


───ずきッ!


.....ッ!?


また謎の痛み。

チクチクと少しずつ自分の体を蝕んでいるような感覚。



そんな自分にはお構いなしに、また謎の言葉が浮かぶ。


『ここなら誓いを守らなくても済む』 ・・・誓い?誰の?


───ズキッ!


.....ッ!!?


今までとは比べようもないほどの強い痛み。

まるで体が、そう体が忘れてはいけないことなのだと一生懸命教えてくれているかのような・・・


・・・。


いや、これはきっと忘れてはいけないことだ。

どうしてなのかはわからないが、そんな気がする


では、誓いとはなんなのか?

誰がしたのか?誰になにを誓ったのか?



さらに謎の言葉が浮かぶ。


『ここなら強くならなくても済む』 ・・・つ、よく?だれが?


───ズキッ!!


.....ッ!!!?


先ほどよりもさらに強い痛み。

体を、全てを壊されてしまうかのような激しい激痛。


・・・。


.....ダメだ。強くならなきゃ。


でもなにか、わからないなにかが体の中に芽生えた。


.....え?どういうこと?


強くならないといけないのは自分?

なら、なんのために強くなる必要があるのだろうか?



次の謎の言葉を待った。

なにか、とてもなにか大切なことを思い出せそうな気がする。


そしてそれはきた。


『ここなら生きていこうとしなくても済む』 ・・・い、、きて、、いこうと、、しなくていい?


───ビリリリッ!


・・・。


体全体に電気が走った。


先ほどまできていた痛みが全くこない。

それになにか自分の中がとてもスッキリしたような感覚になっている。


生きていこうとしなくていい?なんで?生きてはいけないの?


でも答えは決まっている。


生きたい、もっと生きたい!()はもっと生きていたい!


そして.....妾は今、全てを思い出した。


妾は伝説にまつわる大妖怪九十九尾の末裔、妖狐族のヘリオドール。

悪しき人間族に捕まって奴隷となったが、どんな過酷な環境でも決して生きることだけは諦めなかった。


だって、母でもない、神でもない、自分自身に誓ったのだ。


誰よりも強くなる!

強くなって同胞を、そして・・・


・・・。


こんなところでは死ねない!

妾は生きなければ!もっと生きて強くなりたい!


・・・。


その強い決意のおかげか、今まで動けなかった体が動けるようになった。


妾はただひたすら走った。

何にもない暗闇の中をがむしゃらに走った。


どこに向かえばいいのかなどまるでわからない。

それでも走ることをやめなかった。


生きるためには、こうすることが一番なのだとなぜか確信していた。


.....走る。

     .....走る。

          .....走る。


暗闇の中をいつまでもひたすら走る。


妾は生きる。生きてみせる。必ず生きて誓いを守る。

もう二度と悔しい思いをしたくないから。

もう二度と惨めな思いをしたくないから。

もう二度と大切な人と別れる悲しさを味わいたくないから。


.....走る。

     .....走る。

          .....走る。


どれほどの時間が経ったのかはわからない。

でもなんとなくだが、確実にそこには近付いている気がする。


あと、もう少し。

.....あと、もう少し。

..........あと、もう少し!


・・・。


そしてついに妾はたどり着いた。温かい光が指し示すその場所へと・・・


その場所はとても優しいぬくもりに包まれていた。

その場所はとても気持ちいい温かさに包まれていた。


『.....コ、ン』

「これで大丈夫みたいだな」

「ほんとー?じゃー、ぎゅーってしていいー!?」


まどろみながらも聞こえてきた男女の声。


.....あぁ。どうやら妾は死なずにすんだようなのじゃ。

.....よ、、かっ、、た。。。


生きていた安心感からか、妾はそのまま眠りについた。



次回、なぞの幼女登場!


長くなったので分けることにしました。

このお話の2時間後に、もう1話UPします。


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