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第57歩目 ある少女の誓い!


前回までのあらすじ


はじめて見た獣人に興奮した


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


世界観の世界編に、現状判明している種族の詳細と神族系図を追加しました。


side -???-


□□□□ ~始まりの始まり~ □□□□


逃げなきゃ.....、逃げなきゃ.....、逃げなきゃ.....!


紅蓮の炎が、空を、森を、棲み処を、そして・・・同胞までも紅く染めていく。

空が、森が、獣が、そして・・・人までが哭いている。哭き叫んでいる。


苦しい.....、苦しい.....、苦しい.....!


息が乱れて呼吸すらままならない。

でも近くで、同胞の哭き叫ぶ声と悪魔の笑い声が聞こえてくる。


一人、また一人、更にもう一人。次々と捕まっていく。

悪意ある悪魔に次々と同胞達が捕まっていく。


こわい.....、こわい.....、こわい.....!


恐怖で体が強張る。

足がぶるぶる震える。


それでもただひたすら逃げた。

悪魔に捕まらないためにもひたすら逃げ続けた。


苦しくて.....、こわいけど.....、


それでも逃げ続けることができた。

逃げることを諦めなかった。


こんな小さい手を、決して掴んで離さないその手の温かさを感じていたから・・・



□□□□ ~始まりの終わり~ □□□□


に、くい.....、にくい.....、憎い.....!悪魔がとても憎い!!


自分達はなにも悪いことはしていない。

ただ自然とともに、森の掟に従って生きていただけだ。


他の種族に、いや、悪魔にすら迷惑をかけていない。

ただ隠れてひっそり暮らしていただけだ。


く、やしい.....、くやしい.....、悔しい.....!こんなにも弱い自分がとても悔しい!!


ただ逃げることしかできない。

愛し、助け合うべき同胞達を守ってあげることもできない。


ただ泣くだけ.....

ただ恨むだけ..... 

ただ呪うだけ.....

ただ悔しがるだけ.....

                                      

・・・自分はなんて無力な存在なんだろう。


悪魔に怒った.....そして、己にも怒った。

悪魔を恨んだ.....そして、己も恨んだ。

悪魔を呪った.....そして、己も呪った。

悪魔を憎んだ.....そして、己の無力さを憎んだ。


でも、決して絶望だけはしなかった。


あたたかい温もりを感じていたから。

どんな時でも優しい笑顔がそこにはあったから。

この温もりと一緒なら絶対に助かる。助けてくれる。


この温もりだけが全てだった。希望だった。


・・・。


でも、そこには希望はなかった。

希望だと思っていたものは希望ではなかった。


「.....っ!」

「母上!?」

「あ、足をやられました。.....これでは逃げることはできません」

「・・・」

「.....あなただけでも逃げなさい」

「い、いやじゃ!に、逃げるなら母上も一緒なのじゃ!」


母を担いで逃げようと懸命に足掻いた。

最後の最後まで母と一緒に逃げることを諦めなかった。


だって.....母が唯一の温もりだったから。唯一の希望だったのだから。


森の空気が歪んだ。

悪意ある存在に森が哭き続ける。


絶望が.....、悪魔が.....、静かに静かに這い寄ってくる。

悪魔の醜悪な笑い声がすぐそこまで迫ってくる。


「.....早く逃げなさい!あなたまでも一緒に捕まってしまいます!」

「.....いやじゃ!.....いやじゃ!.....母上を置いて.....母上と別れるなんて.....いやなのじゃ!」


弱い自分は逃げることすらできなかった。

弱い自分はひたすら母に縋った。

弱い自分はひたすら母に抱きついて泣き叫んだ。


そして、わずかな希望を抱いて心の底から祈り続けた。


森の神様!

どうかお助けください!


・・・。


しかし、それが叶うことはなかった。

叶わないだけではなく、そんなちっぽけな自分の祈りをまるで嘲り笑うように森がざわめいた。


母に縋った希望は.....、神に縋った希望は.....、全て脆くも崩れ去った・・・。


そこで初めて思い知った。

希望とは縋るものではなく掴み取るものだったのだ。


だから誓った。


悪魔にも、いや、誰にも負けないぐらい強くなってやる!

希望を自ら掴み取れるぐらい強くなってやる!


.....もう二度とこんな悔しい思いはしたくない!



□□□□ ~終わりの始まり~ □□□□


「・・・」


悲しくて、悔しい眠りから目が覚めた。


悪魔に捕まって既に7年。

いつも見る夢は決まって悪魔に捕まった時の瞬間だ。


あの時から奴隷生活が始まった。

悪魔のいいようにこきつかわれ、毎日毎日命をすり減らしている。


与えられる服は粗末なもので、食事もあまり満足いくものではない。

餓死していく同胞をこの7年で何人も見てきた。

そんな有り様なのに、毎日魔物と戦わされる。

当然十分な動きもできず、魔物に殺されていく同胞は数知れない。


.....今日は一体誰が死ぬんだろう。


新たに死んでいく同胞達のことを思うと気分が重くなる。

どうにかしてあげたいが、奴隷の身分ではなにもすることができない。


悔しい.....、悔しい.....、悔しい.....!


あの時と同じで無力な自分が恨めしい。

強くなってもどうすることもできない自分が腹立たしい!


それでも絶望することはなかった。


あの時、自分に誓ったことを忘れてはいない。

母でもない、神でもない。自分自身に誓ったのだ。


誰よりも強くなる!


その誓いが、生きることを諦めなかった。

その誓いが、自分自身の希望なのだから。


・・・。


悪魔がやってきた。

いつものようにダンジョンに行くのだろう。


今日もまた、きっとこき使われる。

今日もまた、きっと同胞が死んでいく。

今日もまた、死んでいく同胞を見送りながら生きていかなければならない。


奴隷は所詮奴隷で、奴隷は所詮悪魔のおもちゃに過ぎないのだから。



□□□□ ~終わりの終わりは始まりの始まり~ □□□□


思った通り、いや、それ以上の凄惨な光景が目の前で繰り広げられている。

次々と倒れていく同胞達とわらわらと沸いてくる魔物達。


所謂、魔物部屋と呼ばれる大部屋で戦闘が行われている。


まだ誰も到達したことのない階層に来れたことが相当嬉しかったんだろう。

浮かれたバカな悪魔(主人)が、魔物部屋に勝手に突入してしまったのだ。


魔物部屋は本来複数のPTで挑む案件なことは子供でも、いや、奴隷でさえも知っている。

それを自分達だけで、しかも同胞達みんなが疲弊している状態で挑むなんて自殺行為もいいところだ。

案の定、疲れきっている同胞達では魔物の相手にもならず次々と死んでいく。


バカな悪魔(主人)が恨めしい.....。

こんなバカのせいで同胞達が次々と命を落としていっている。


そんなバカな悪魔(主人)に逆らえないひ弱な自分が恨めしい.....。

自分がもっと、今よりももっと強かったら、守るべき同胞達を死なせずに済んだのに。


今はただ、バカな悪魔(主人)を守るよう命令されて従わざるを得ない自分がただただ腹立たしい。


自分の強さはこんなバカを守るためにあるものではない。

希望を掴むため、悔しい思いを二度としないため、そして・・・。


・・・。


でも、その誓いすらも叶わなそうだ。


魔物に徐々に蹂躙されていく。

誓いを叶えることもできないまま死んでいく。


悔しい.....、悔しい.....、悔しい.....!

結局あの頃の弱いままの自分となんにも変わっていない!


「死、、に、、たく、、な、、い、、のじゃ・・・」


思わず天を仰いだ。

もう二度と神なんかに祈ることはしないと誓っていた。


でも、それでも.....


生きたかった。

生きていたかった。


だから無駄だとわかっていても、祈らずにはいられなかった。


神様!

助けてください!


・・・。


当然、そんなちっぽけな祈りが届くことはなかった。


体からだんだん力が抜けていく。

もう、すぐそこまで死が迫ってきている。



.....もっと生きていたかった・・・。



・・・。



そして、目の前が暗くなった。



次回、新章スタート!


これにて第3章が終了となります。

次話から第3.5章となります。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


~ハチミツ大好きアテナ?~


「はちみつあまいねー(*´μ`*)」

「そのまま食べてんの!?すごいな・・・」

「んー?たべないのー?」

「食べないことはないけど.....普通はパンに塗ったり、後はハチミツレモンとかにするかな」


「はちみつれもんー!?気になるー!歩つくれるー?」

「悪い。作れないな。ラズリさんなら作れそうだが」

「ぶー(´-ε -`)歩は料理できないもんねー」

「お前には言われたくない。俺はレシピさえあれば作れるからな」


「セラフィの料理もわるくはないんだけどー、ラピスはお菓子もつくれたからねー」

「作って貰っている立場で文句を言うな。てか、結局ハチミツはそのまま食べるのか」

「うんー!はちみつあまーい(*´μ`*)」

「.....なんかくまのプ○さんみたいだな」


「ぷーさんー?」

「そうそう。ハチミツが大好きなくまだな」

「ふーん。はちみつなくなっちゃったー。あー、たいへんだー」

「.....え?」


「んーと、んーと」

「お、おい.....」

「はちみつたべたいなー」

「お、お前まさか知っているのか!?」

「なにがー?しらないよー( ´∀` )」


嘘つけ!絶対知ってるだろ!?それはやつの口癖なんだぞ!?


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