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第56歩目 はじめての獣人!


前回までのあらすじ


山賊退治は思った以上に覚悟が必要だった


□□□□ ~自然の町フルール~ □□□□


山賊を退治してから、更に1ヶ月が過ぎた。

あの後は再び山賊が出ることもなく、次の町フルールに無事たどり着くことができた。


きっと俺の願いが神様に届いたに違い.....


「にへへー(*´∀`*)」

「・・・」


いや。俺の日頃の行いが良かったからに違いない。



このフルールという町は、自然の町ということだけあって自然に恵まれた町だ。

町の中に自然が溢れている。いや、自然の中に町があると言ったほうが正しいかもしれない。

見渡す限り、緑、緑、緑。自然の香りが、自然の恵みが、町の至るところに溢れている。


今まで訪れたパレスやガタツは、人々が興した如何にも町といった感じの誰もが思い浮かべる普通の町だった。

しかしこのフルールは、どこかお伽の国のような不思議な印象、神秘さがにじみ出ている。

例え、木の上に家があってもおかしくない雰囲気だ。


「こ、この、このフルールはボク達やエルフのご先祖様が興した最初の町と言われていましゅ」

「へ~。自然の香りがして、とてもいい町だと思いますよ」

「うんうんー。なんか嗅いだことのないいい匂いがするよねー( ´∀` )」


それは自然の香りじゃない。甘いこの香り.....きっとハチミツの匂いだ。


「ど、どう、童話で見たボク達の故郷に似て、な、なん、なんだか落ち着きましゅ」


ナイトさんは言葉とは裏腹に、キョロキョロと忙しなく辺りを見渡している。

まるで初めて訪れた場所のような.....あれ?もしかして?


「もしかして、初めて訪れたんですか?」

「は、はじ、初めてもなにも.....ボ、ボク、ボクはガタツから一度も出たことがないんでしゅ」


マジか.....。22年間ずっとガタツから出たことがないのか。


「と言うことは、今回の旅が初めての旅だったんですよね?」

「そ、そう、そうでしゅ」

「それにしては随分と落ち着いていましたよね?ベテランの旅人と言われても全く違和感がありません」

「こ、こん、こんなボクと一緒に旅に出てくれる優しい人が見つかった時、い、いつ、いつ旅に出ても大丈夫なように、め、めい、迷惑をかけないように、ひ、ひび、日々妄想して特訓してましたでしゅ!」


.....なんて健気で頑張り屋さんなんだ。

なんか一生懸命背伸びして大人ぶろうと頑張っている姿がとてもほっこりする。


だから俺は.....


「ナイトさん」

「な、なん、なんでしゅ?」


───ギュッ!!


頑張った我が子を誉めるかのように抱き締めてあげた。


まぁ、俺には子供なんていないんですけどね。

てか子供以前に、いまだに童貞なんですけどね。それがなにか?


ナイトさんは見た目がちっこいせいか、どうしても子供にしか思えてならない。

アテナとはまた違う意味で保護欲を駆り立てられる。


「やややややめてくださいでしゅ!

 そ、そう、そういうことはボクに呑み比べで勝ってからにしてくださいでしゅ!」


「それって今更じゃないですか?

 いつもお風呂でぎゅ~ってしてあげてますよね?しかもナイトさんからお願いしてきましたし」


ナイトさんは怒っているのか、恥ずかしがっているのか、どちらともわからないぐらい、それはもう顔を真っ赤にしている。


旅に出てからは、ナイトさんとも毎日一緒にお風呂に入っている。

当然アテナの訳のわからないマナーに従って、ナイトさんの体を洗ってあげているのは俺だ。


ナイトさんは体がちっこいおかげで、抱き締めるとすっぽり包み込むことができる。

これがなんとも心地よい。

子供を持つ親の気持ちが、童貞ながらなんとなくわかった気がする。


そしてなにも心地よいのは俺だけではなく、ナイトさんもそうらしい。

体を洗ってあげる時はいつもぎゅ~ってして欲しいとお願いされる。

娘からのお願いは何でも叶えてあげたくなっちゃう親バカの気持ちが、童貞ながらなんとなくわかった気がする。


「お、おふ、お風呂はそういう決まりだと、ア、アテ、アテナちゃんが言っていたからでしゅ!」

「洗うのはそうですが、別にぎゅ~は決まりじゃないですよ?.....でもそんなに嫌ならもうやめますね」

「.....え?も、もう、もうしてくれないんでしゅか?」

「嫌なんですよね?」

「.....ひ、ひぐっ」


ちょ!?だからそれはずるいって言ってんだろ!


「あー!また歩がセラフィを泣かしたー!」

「バカ!そんな大声で人聞きの悪いことを言うな!」


アテナの大声を皮切りに、周りからとても痛い視線が突き刺さる。

明らかに俺がナイトさんを泣かした悪い大人の構図が出来上がってしまった。


「ま、ま、またお風呂に入る時は、ぎ、ぎ、ぎゅ~ってしてくれましゅか?」

「ええ、しますよ、しますとも!」


もはやヤケクソだった。

一刻も早く衆人環視の冷たい視線から逃れたかった。


「あ、あり、ありがとうございましゅ!」


ナイトさんはそう言うと、いつものようにたはは~と微笑みながらビシッと敬礼をしてきた。ほっこりする。



ちゃんとしてればほっこりする子なんだけどな~。目がくりくりしてるし。



ナイトさんのお許しも出たことだし、なんかほっこりした俺は.....


───ギュッ!!


再び抱き締めてあげた。


「やややややめてくださいでしゅ!さ、さ、さっきも言いましたでしゅよね!?

 .....そ、そん、そんなにボクがしゅ、しゅきなら、か、かん、考えないでもないでしゅよ?」


てか、なんでダメなんだよ!?さっきOKって言ったじゃん!


それにしてもよくわからない。

お風呂場でのぎゅ~は良くて、なぜそれ以外のぎゅ~がダメなのか.....


いつかお風呂場以外でも、普通にぎゅ~しても大丈夫な仲になれたら嬉しいなぁ。



俺のぎゅ~道はまだ始まったばかりだ。



□□□□ ~ついにお目にかかれた獣人族~ □□□□


このフルールはとても神秘的な町だ。

人の手があまり加えられていない自然溢れる町というのもその神秘さを際立たせている。


そして町行く人々も他の町とは異なる。

パレスやガタツでは人間族が大多数を占めていたが、ここフルールはエルフやドワーフが大半だ。

人間族があまりいない理由としては、恐らく嫌われているエルフが多数いるからだと容易に想像できる。


ただそれは同時に、今目の前にいる種族もある程度は過ごしやすいということに繋がる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「うおおおおおおおおおおおおお( ´∀` )」

「なななななんでしゅか!?い、いき、いきなりどうしたんでしゅか!?」


きた、きた、きたああああああああああああ!


今俺の目の前には、如何にももふもふしてそうな犬耳、猫耳、うさぎ耳。ふさふさしてそうな狸尾、狐尾、狼尾。

様々な獣っ子達がそこらかしこに往来を歩いている。


これだけ見ればさすが自然の町と言えるのだが、気になるのは全ての獣人が首輪をしていることだ。

やはり獣人が奴隷扱いされているというのは本当みたいだ。


でもそれでも、初めて見る獣人だ。テンションが上がらないはずがない。


「獣人きた、きた、きたあああああああああああ!」

「きた、きた、きたああああああああああ( ´∀` )」

「だ、だか、だからなんなんでしゅか!?」


こればっかりはナイトさんにはわからない感情だろうなぁ。


実物の獣人は、アニメやラノベの挿し絵で見るよりも何倍も愛くるしかった。

奴隷である以上清潔感はあまりないが、それを差し引いてもとても愛くるしい。


それもそのはずだ。

動物好きな現代人ならきっと涙して喜ぶに違いない。それが獣人という存在だ。

今日(こんにち)ではペットをペットとしてではなく、既に家族の一員として捉えている人も多い。

そんな人からすれば、意思疏通をはかることができる獣人の存在はまさに理想の存在ではないだろうか。


かく言う俺も、アテナ同様猫が好きだ。

もちろん犬も好きだ、と言うか基本動物は好きだ。

でもアパートの都合上、動物は飼えなかった。.....ざんねん。


そんな残念な気持ちも相まって、今目の前を歩く獣人達を見た瞬間、歓喜の気持ちが爆発してしまった。


「いや~。獣人はいいですね。男も女もこう、愛くるしいというか、見ていて癒されます」

「ねぇーねぇー!ねこちゃんの獣人とか買おうよー( ´∀` )」


それもいいなぁ~。

いや、でも奴隷ってのは気が引けるな。奴隷にはあまり関わりたくない。


「じ、じ、獣人がしゅきなんでしゅか?ど、どれ、奴隷でしゅよ?」

「見た目が愛くるしくないですか?なんかこうふさふさふわふわしていて気持ち良さそうじゃないですか」

「いいよねー!ねこちゃんだったらぎゅーってしてあげるんだー( ´∀` )」


いや、それはどうだろう?

猫にもよるだろうが、そういうのはあんまり喜ばないと思うぞ?


「ゆ、ゆう、勇者様は変な人が多いと聞きましゅが、ほ、ほん、本当でしゅね」

「.....あれ?変人扱い!?」

「だ、だ、だって奴隷でしゅよ?ひ、ひと、人以下の生き物に愛情を向けるなんて普通おかしいでしゅ」

「人以下って.....」


あれ?なんか聞いた話と違うな?

確かエルフやドワーフは人間族に比べれば、獣人に優しい種族だと聞いたぞ?


実際待ち行く獣人達の主人と見られるエルフやドワーフ達は、奴隷である獣人達をちゃんと人扱いしているようには見える。


奴隷に着せている服は粗末だが、アニメやラノベ、小説などでよく出てくる奴隷の定番服である貫頭衣を着せているわけではない。

と言うか、もしかしたらいつも同じワンピースを着ているアテナやつなぎしか持っていないナイトさんのほうがよっぽど奴隷っぽく思える・・・


獣人達の体つきもやせ細っているという訳でもなく、普通に健康そうだ。

清潔感に関しては主人のほうも大差ないように思える。

一般市民ではお風呂になかなか入れないので、そういう意味では奴隷と大して変わりはないのだろう。


恐らく主人から暴力なども振舞われてはいないはずだ。

それは奴隷の顔つきを見ればすぐわかった。

どの奴隷も、奴隷なのに死んだ表情を一切していないからだ。


どの奴隷も俺の想像していた奴隷像を軽くぶち壊してくるほど、明るく生きているように見える。

本当不思議な世界だ。俺の中の異世界イメージのことごとくを否定してくる。


でもそれだけエルフやドワーフが、獣人奴隷に対して酷いことをしていない証でもある。

もしかしたら人間族はまた違った扱いをしているのかもしれないけれど。


とにかくナイトさんも、獣人に対して優しいドワーフの一員であるのは間違いないのだが・・・


今俺の目の前にいるナイトさんは、どうにもそんな感じがしない。

獣人達に対して、汚い()()でも見るかのような冷たい眼差しを向けている。


「えっと?ドワーフは獣人に優しいと聞いたんですが?」

「そ、そう、そうなんでしゅか?ボ、ボク、ボクは世情にはあまり詳しくはないんでしゅ」


も、もしかして.....


「じゅ、獣人について、どう思います?」

「ど、どれ、奴隷でしゅ。あ、あと、後は魔王の手先でしゅ」

「それは200年前の話で、今は違うみたいですよ。今のエルフとドワーフは獣人と仲良くやっているみたいです」

「そ、そう、そうなんでしゅか?」


.....やはりか。吃音症の弊害がこんなところにも出ていた。


ナイトさんは22年間ガタツから出たこともなく、また吃音症の弊害でロクに人との交流もしていない。

恐らく頭の中にある知識は、書物とかで得た生きた知識ではない可能性が高い。

そう考えると、奴隷に対してあまりいい印象を持っていないのも頷ける。


でもドワーフはあまり細かいことにはこだわらない豪胆な種族だと聞いている。

ナイトさんの知識が古くともドワーフなら或いは.....


「ええ。もし仮に仲間に獣人がいたら仲良くなれそうですか?」

「こ、こう、攻撃してこないなら、ま、ま、全く問題ないでしゅ。な、なか、仲良くできましゅでしゅ!.....あ。で、で、でも・・・」

「なんですか?」

「こ、こん、こんなボクと仲良くなってくれるかどうか心配でしゅ・・・」


そっちの心配かよ!.....でも、ナイトさんらしいと言えばナイトさんらしい。


あっさり獣人を受け入れるあたりはさすがドワーフと言うべきか。

確かにお嫁さんにしたい種族ランキングNo.1に選ばれる種族なことはある。

豪胆と言うか、豪放と言うか。きっとどの種族よりも気持ちがおおらかなんだろう。


「ど、どれ、奴隷を購入しゅるんでしゅか?」

「買うならねー、ねこちゃんがいいー!

 マンチカンとかー、メインクーンとかー、アメショーとかいいよねー( ´∀` )」


.....アテナが言ってるのは普通の猫じゃねえか!獣人奴隷にそんな種類がいてたまるか!


「こ、こう、購入しゅるなら、し、しい、仕入れるお酒の量を増やさないといけないでしゅね!」

「.....え?な、なにを言っているんですか?」

「じ、じ、獣人さんもお酒を呑みたいに決まってましゅ!そ、そう、そうと決まれば早速お酒を買ってきましゅ!」


それってナイトさんが呑みたいだけですよね!?

しかも俺はまだ奴隷を買うとも言っていないんですが!?


そんな俺の思いとは空しく、ナイトさんはまるで風のように、既にお酒を仕入れに走りだしてしまっていた。



明らかに嬉しそうに走り出しているナイトさんの背中を眺めながらも、俺は思う。


お酒のこととなるとすぐ暴走するんだからなぁ.....見た目は子供でも中身はおっさんなんだよな。



本日の戦利品

①ナイトさんの獣人に対する差別意識の撤廃


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『アテナ』 レベル:3 危険度:極小


種族:女神

年齢:ーーー

性別:♀


職業:女神

称号:智慧の女神


体力:50

魔力:50

筋力:50

耐久:50

敏捷:50


装備:殺戮の斧


女神ポイント:191240【↑50000】(一か月分)


【一言】えー!?歩の実家ってー、ねこちゃん4匹もいるのー!?ねこ天だねー( ´∀` )

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アユムの所持金:3384000ルクア【±0】

冒険者のランク:A(クリア回数:4回)


このお話の歩数:約3280000歩(一か月分)

ここまでの歩数:約17483700歩

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『アユム・マイニチ』 レベル:5912【↑583】


種族:人間

年齢:26

性別:♂


職業:凡人

称号:女神の付き人


体力:5922(+5912)【↑583】

魔力:5922(+5912)【↑583】

筋力:5917(+5912)【↑583】

耐久:5917(+5912)【↑583】

敏捷:6172(+6112)【↑583】


装備:旋風の剣(敏捷+200)


技能:言語理解/ステータス/詠唱省略


Lv.1:初級光魔法/初級闇魔法


Lv.2:浄化魔法


Lv.3:鑑定/剣術/体術/索敵/感知/隠密

   偽造/捜索/吸収/治癒魔法/共有

   初級火魔法/初級水魔法/初級風魔法

   初級土魔法/ 物理耐性/魔法耐性

   状態異常耐性


共有:アイテムボックスLv.3

   パーティー編成Lv.1

   ダンジョンマップLv.3

   検査Lv.3

   造形魔法Lv.3


固有:ウォーキングLv.5912 1046/5913

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次回、???!


次話にて第3章が終わり、いよいよ第3.5章に移ります。

よろしくお願いします。


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