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第35歩目 はじめての死!雇用契約3日目


前回までのあらすじ


ボス猿おそるべし!

□□□□ ~アテナ死す~ □□□□


ラズリさんはどんな状況でもラズリさんだったことを確認した俺は、再び魔物と死闘を繰り広げていた。


そんな死闘の中、改めてレベル3スキルのありがたさを痛感していた

魔物の攻撃を何度も受けてはいるが、体力的には問題なさそうだ

物理耐性Lv.3と魔法耐性Lv.3がおおいに役立っているのだろう


でも痛いのは痛い。


体力的には問題なくとも、何度も攻撃を受けているという事実に精神がゴリゴリ削られていっている。


「アユムさん.....大丈夫ですか?」

「まだまだ余裕ですよ」


体力的に余裕ではあるけど、精神的に余裕ではない。

何度も攻撃を受けていると、いつかは致命傷を受けるんじゃないかと不安になる。


「危なくなったら逃げましょう」

「そうしたいのはやまやまなんですが、この状況では.....」


仮にアテナが万全でも、無事に3人が逃げ出せるような状況ではないし、そもそもアテナが.....


アテナは未だにラズリさんの腕の中で静かに横たわっている。


「ラズリさん.....アテナはどうなんです?」

「それが.....」


俺の言葉に押し黙り首を横に振るラズリさん。


「.....え?」

「.....残念ですが、もう息をしていません」

「.....う、嘘ですよね?」

「・・・」


ラズリさんは目を閉じ、首を横に振るだけだった。


.....じょ、冗談だろ!?アテナが死んだ!?


アテナが死んだ.....くそっ!俺のせいだ!

あの時、俺がすぐにでも助けにいけば、アテナが死ぬことはなかったのに!


あの可愛らしいにぱー☆がもう二度と見れない?


そう思うだけで怒りが沸いてくる。


「くそが!くそが!!くそがああああああああ!!!」

「アユムさん.....」

「絶対許さん!!みなごろしにしてやる!!!」


俺はひたすら怒りを魔物にぶつけ続けた。


体当たりしてくる豚を剣で一刀のもとに乱暴に切り伏せる。

同じく体当たりしてくるバブ○スライムはコア毎踏み潰す。

うっとうしい木の魔物の攻撃は払いのけず、全て体で受ける。

そして空いた手でこうもりに魔法を喰らわせる。


もはや俺は自分の身を守ることなく、ただひたすら魔物を屠り続けた。

そうすることが、アテナを守りきれなかった自分への罰になると勝手に思って.....


「アユムさん!そんな無茶な戦い方をしていたら、アユムさんの体が.....」


「俺の体なんてどうでもいいんです!俺のせいでアテナが!アテナが!!」


俺はまるで阿修羅のように暴れまわった。

暴れまわることでしか、この気持ちを紛らわすことができなかった


アテナを守りきれなかった悔しさに。

ニケさんとの約束を守れなかった申し訳なさに。


俺が側についていながら.....本当にごめん。アテナ。



□□□□ ~ひとつの決断~ □□□□


俺が如何に暴れたところで、事態の状況はあまり芳しくない。

俺はここでひとつの決断をする。


「.....ラズリさん。俺が時間を稼ぎます。その間にラズリさんは逃げてください」


「え!?アユムさんを置いて逃げるなんてできませんよ!」


「言いましたよね?二人は俺が必ず守るって。とは言っても、結局アテナは守れませんでしたが.....ははは」


あの時すぐに助けにいっていれば、もしかしたら.....

いや、もう後の祭りか。


「アユムさん.....」

「せめてラズリさんだけでも守らせてください」

「それならアユムさんも一緒に.....」

「俺はアテナの敵討ちがありますから。それに.....」


そうしないと俺の気が済まない。

意味のないことだとはわかっている。それでも.....


「ラズリさんはこんなとこで死んでいい人ではないですよ。美人で、優しくて、一生懸命で、本当にステキな人です。それに.....こんなとこでもし命を落とすようなことがあったら、それこそスカイさんが悲しみますよ?だから逃げてください」


スカイさんを出すのはちょっとずるい気がする。

ラズリさんは母親想いだしな。


「.....アユムさんはずるいです」

「すいません」


ずるくても、せめてラズリさんだけでも無事に生還させたい。


「.....無茶はしないでくださいね?」

「それは約束しかねます。既にきついですし」

「.....命は懸けないんですよね?」

「それは約束します。死にたくないですから」


アテナの敵討ちをするまでは死んでも死にきれない。


「.....最後に私のことは好きですか?」

「なんでそんな話になった!?」

「いいじゃないですか!答えてくださいよ!」


いやいや!

俺は魔物を屠るのに精一杯だから!


俺の阿修羅の如く反撃で、魔物の猛攻が一時和らいだ。

窮鼠猫を噛むの例え通り。

手痛い反撃を嫌ったのか、ボス猿も俺の様子を伺っているようだ。


本当にあのボス猿は猿のくせに賢いな!

アテナが生きていたら、ボス猿の爪の垢でも呑ませたいぐらいだ。


「緊急事態なんで冗談はやめましょう」

「.....冗談なんかじゃありません」

「ラズリさん?」


「.....期待ぐらいさせてください。アテナさんがこんなことになって悲しいのはわかります。それでも私は.....アユムさんには無茶をしてほしくはないんです。だからせめて期待ぐらいはさせてください」


う、う~ん?

俺が死ぬ気だと勘違いしてるのかな?

確かにアテナが殺されたことで怒りはしたが、死ぬ気は全くないんだが.....そもそも死にたくないし。


しかし、ラズリさんに納得してもらうには仕方がないか。


「す、好きです?」

「またそれですか~!最後ぐらいキメてくださいよ~!」


最後って.....だから死なないから。


「命を懸けない程度に頑張るんで、応援を呼んできてください」

「わかりました。すぐに応援を呼んできます」

「助かります。では行きますよ?」

「はい!アユムさんに女神様のご加護がありますように!」


あ、あの。その女神が死んじゃったんですが.....


ラズリさんとのなんとも言えないやりとりに、すっかり毒気を抜かれてしまった。


本当にラズリさんには敵わないな~。



ラズリさんを無事に逃がすために、魔物の群れに突っ込んだ俺は思う。


.....あれ?アテナが死んだ今、俺ってどうなるんだ?



次回、恥ずかしい歩さん


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


「私が美人で優しくてステキって本当ですか?」

「はい。それは間違いないですね」

「じゃあ、なんで彼女にしてくれないんですか?」

「俺は好きな人いますし」


「ニケさんですよね?どんな人なんですか?」

「美人で優しくてステキな人ですね」

「じゃあ、アユムさんの好きな人は私ですね」

「なんでそうなった!?」


「私も美人で優しくてステキなんですよね?」

「はい。ラズリさんはその通りです」

「ありがとうございます///ふつつか者ですが.....」

「ちょっと待てぇい!それおかしいから!」


「なにがおかしいんですか?私もニケさんも同じように美人で優しくてステキならなにも違いはないはずです」


「ありますよ?違いなら」

「なんですか?」

「・・・」


言えやしない。言えやしないよ。

ニケさんのほうがグラマーなんて!


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